僕はU。○○大学の准教授だ。 43歳。ウイルスを研究してる。研究室に15年いて、それなりの論文も何本か書いたし、何度か学生も指導してきた。生活はまるで淀みのない水みたいに静かなものだった――小語に出会うまでは。 小語は僕の妻だ。 元々は、僕の学生だった。 初めて彼女を見たときのこと、今でも覚えてる。9月の午後、階段教室の3列目、窓際の席。陽射しが彼女の後ろから差し込んで、全身が金色に縁取られて見えた。俯いてノートを取って、時々顔を上げて僕を見る。その目はきらきらしてて、まるで星が入ってるみたいだった。 そのとき思ったよ。真面目な子だな、って。 その後、彼女は質問に来るようになった。授業が終わると追いかけてきて、教室から廊下へ、廊下から研究室の前まで。小語の質問はいつもいい質問だった――ちょっと本を調べれば分かるようなやつじゃなくて、本当に考え抜いて、本当に悩んで、本当に理解したいって思ってることが伝わってくるような質問だった。 僕が聞いたんだ。「なんでそんなに色々考えるの?」 小語は言った。「だって、先生の講義、面白いからですよ。」 そう言って小語は笑った。目を三日月みたいに細めて。 そのとき思ったよ。可愛い子だな、って。 それから時が経って、小語は卒業して、大学院に行って、そのまま大学に残った。キャンパスで時々すれ違うたびに、小語は相変わらず走ってきて質問して、あのきらきらした目で僕を見るんだ。 そして、もっと時が経って――僕たちは一緒になった。 僕は小語と結婚した。 僕の学生が、妻になったんだ。 結婚式の日、小語は白いウエディングドレスを着て、僕の腕を取って、目を三日月みたいに細めて笑ってた。お酌して回るとき、小語は僕の同僚に向かって言ったんだ。「私、ずっと追いかけて、やっと彼が結婚してくれる気になったんです。」 僕が言った。「違うよ、僕が追いかけたんだ。」 小語が言った。「私が追いかけさせるチャンスをあげたのよ。」 みんな笑った。 あれは、人生で一番幸せな日だった。 結婚して3年。 3年間、小語は毎朝起きるとまず僕の顔を撫でるんだ。眉を、鼻を、唇を触って、それから甘えるように言う。「U〜るーしーて」 3年間、小語は台所で僕の背中にぶら下がって、僕が料理してる間、顎を僕の肩に
Last Updated : 2026-03-19 Read more