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一猫ボッチ

Penulis: Lumos
last update Tanggal publikasi: 2026-03-19 23:37:25

DAY31

寝室の入り口に立って、彼女が冷蔵庫から物を取り出すのを見てた。

動作はすごく慣れたものだ。冷蔵庫のドアを開けて、腰をかがめて、手を伸ばす――取ったのは彼女の好きなヨーグルトと、昨日の残りの酢豚。彼女はお椀を二つ抱えて、膝で冷蔵庫のドアを押さえ、それから向きを変えて、電子レンジに向かう。

途中で、お椀が傾いて、酢豚の汁が何滴かこぼれた。床にポタッと。

彼女は止まって、その数滴の汁を見下ろし、また手に持ったお椀を見て、ちょっと戸惑ったような表情をした。

それからお椀をテーブルに置いて、台所に拭き布を取りに行った。

しゃがみ込んで、床を拭く。拭き終わったら、拭き布を台所に戻し、戻ってきてお椀を運び続ける。

電子レンジを開けて、中に入れて、ドアを閉める。彼女はそのパネルを数秒見つめた――文字が書いてあって、彼女はそれが読める。指を一本伸ばして、「快速加熱」って書いてあるボタンをツンと押した。

電子レンジが回り始めた。

彼女はそこに立って見てる。お椀が中でゆっくり回るのを、ガラスのドアに少しずつ曇りが広がるのを。

入り口でそれを見てる僕の心は、何とも言えない気持ちだった。

1ヶ月前、彼女はまだあの隅っこに縮こまって、僕に「シャーッ」って威嚇してた「猫」だった。

今は電子レンジが使える。

冷蔵庫から食べ物を出せるし、自分で温められるし、自分で食べられる。お風呂も――毎回、隣で付き添いは必要だけど、洗う動作は自分でやるようになった。携帯も使えるし、アルバムも見られるし、僕に電話もできる。

電話が一番最初に覚えたことだった。

あの日、台所で料理してたら、急に携帯が鳴った。手に取って見ると、着信表示:小語。

何かあったのかと思って、慌てて出ながらリビングに走った。

リビングに着いて見ると、彼女はソファに座って、携帯を耳に当てて、僕を見てた。

「にゃあ。」携帯から彼女の声がした。

僕はそこに固まった。

彼女がもう一度鳴いた。「にゃあ。」

それから電話を切って、顔を上げて僕を見て、目を三日月みたいに細めて、すごく得意げだった。

その日、彼女は17回も電話をかけてきた。僕が家中を歩き回ると、彼女はリビングで僕が歩き回るのを見てて、数歩ごとに番号を押す。僕が出なければ、ずっとかけてくる。出れば、「にゃあ」って一声鳴いて、切る。

後で気づいたんだ。彼女は遊んでたんだなって。

「電話する」っていうゲームで。

携帯は使えるようになった。

でも、言葉は話せない。

一言も。

僕の名前の「U」以外は。

それと「にゃあ」だけ。

この二つだけだ。

医者によると、これは選択的なものらしい。「彼女の脳が、言語と何らかのトラウマを結びつけてしまったのかもしれません。話せないんじゃなくて、話したくないんです。あるいは、話す必要がないと思っているか。」

話す必要がない。

だって、彼女が欲しいものは全部、彼女の目つきと鳴き声で分かるから。

お腹が空いたときは、あの短い「ニャ」。眠いときは、あの伸びる「ニャー」。抱っこしてほしいときは、あの甘えた「にゃあ」。機嫌が悪いときは、あのむっつりした「ンッニャ」。

文字は読める。冷蔵庫に貼った付箋も、テレビの字幕も、携帯のメッセージも――全部読める。

でも、話さない。

電子レンジが「チン」って鳴った。

彼女はドアを開けて、お椀を取り出す。熱いから、両手を代わりばんこに持ち替えて、最後は服を敷いてテーブルまで運んだ。座って、スプーンを取り、食べ始める。

一口食べて、顔を上げて僕を見る。

一口食べて、また僕を見る。

「U。」彼女が急に口を開いた。

僕は行って、隣に座った。

彼女は酢豚を一口すくって、僕の口元に持ってきた。

口を開けて、食べた。

彼女は笑った。目を三日月みたいに細めて、それからまた自分のを食べ続ける。

僕は彼女の横顔を見ながら、どう切り出そうか考えてた。

三日間。

僕は三日間、家を空ける。

学校のあの学会は三ヶ月前に決まってたやつで、国際シンポジウム、僕は主催者の一人だ。断れない。もう一回延期してあるんだ。これ以上延期したら……

深く息を吸った。

「小語。」

彼女が顔を上げて僕を見た。

「僕……三日間、出かけないといけないんだ。」

彼女は首をかしげて、続きを待ってる。

「三日。」指を三本立てた。「太陽が三回昇って、三回沈んだら、帰ってくる。」

彼女は僕の三本の指をじっと見つめて、黙ってた。

「その間、お母さんが来てくれるから。」

彼女の表情が変わった。

すごくはっきり変わるっていうんじゃない。ほんの一瞬、目の奥の光が少し暗くなった。

「お母さん。」繰り返した。「僕のお母さん。前に会ったことあるだろ?覚えてる?彼女、小語のこと大好きなんだ。」

彼女はうつむいて、また食べ続けた。

すごくゆっくり食べてる。一口一口、ずっと噛んでる。

隣で見てる僕は、何て言ったらいいか分からなかった。

食べ終わると、彼女はソファにテレビを見に行った。今日はドキュメンタリー、ペンギン。前はペンギンが一番好きだったのに。

でも今日は見入ってなかった。

そこに座って、画面を見てるけど、目は虚ろだった。リモコンを握ったまま、ずっとチャンネルを変えない。

皿を片付け終わって、彼女の隣に座った。

彼女は僕の方に寄ってきて、肩にもたれた。

「たった三日だよ。」言った。「すぐ終わる。」

彼女は反応しなかった。

「カメラを付けたんだ。」天井の隅にあるあの小さなものを指さした。「あれ見えるか?あれで僕が小語を見られるし、小語も僕を見られるんだ。」

彼女は指さす方を見て、そのカメラを長いこと見つめてた。

「携帯で話もできるよ。」携帯を取り出して、見せた。「ほら、こうやって押すだけで、僕に電話できる。できるだろ?」

彼女はうなずいた。

「ちゃんと出るから。」言った。「いつでも、小語がかけてきたら、必ず出るから。」

彼女はやっぱり黙ってた。

でも、手を伸ばして、僕の服の裾を掴んだ。

その夜、僕は荷造りを始めた。

彼女は後ろをついてきた。寝室からリビングへ、リビングからトイレへ。僕が歯ブラシを取ると、彼女はそれを見る。着替えを取ると、彼女はそれを見る。充電器を取ると、彼女はそれを見る。

何かをスーツケースに入れるたびに、彼女はその物を見て、それから僕を見る。

その後、急に彼女が走り出した。

もう見たくないんだなと思って、続けて荷造りした。

しばらくして、彼女が走って戻ってきた。手に何か抱えてる――ペンギンのぬいぐるみだった。

それは前に彼女が買ったやつで、ずっと枕元に置いてあったやつだ。彼女が記憶を失ってからは、このペンギンには特に反応しなかった。たまに手に取って見るくらいで。

今、彼女はそのペンギンを、僕のスーツケースに詰め込んだ。

「ん?」彼女を見た。

彼女はペンギンを指さし、それから僕を指さした。

「持ってけって?」

彼女はうなずいた。

それからまたペンギンを指さし、自分を指さした。

「これが僕を見てる代わりに?」

彼女はうなずいて、また首を振った。

それからペンギンをスーツケースから取り出して、抱きしめて、また僕を指さした。

一瞬止まった。

「……小語が、僕について来いって?」

彼女はうなずいた。

自分を指さし、ペンギンを指さし、スーツケースを指さす。

ペンギンを身代わりに。

僕に持っていけって。

しゃがみ込んで、目線を合わせた。

「家にいたくないのか?」

彼女は首を振った。

「……一緒に行きたいのか?」

彼女はうなずいた。

口を開けて、何て言えばいいか分からなかった。

学会は家族同伴不可だ。ホテルはシングル、会場はクローズド、三日間全部予定が詰まってる。彼女を連れて行ったら、面倒なんて見られない。

「小語、それは無理だよ……」

彼女はうつむいて、僕を見ない。

手にはまだペンギンを抱えたまま。

その姿を見て、心がぎゅっと掴まれたみたいだった。

「三日間。」しゃがんだまま、また言った。「太陽が三回昇って、三回沈んだら、帰ってくる。」

彼女は顔を上げなかった。

「毎日電話するよ、いいか?朝一回、夜一回。携帯で僕に会えるんだ。」

彼女はやっぱり顔を上げなかった。

「僕は……お母さんに来てもらうから。彼女は小語の好きな食べ物も、好きな番組も知ってる。いじめたりしないから。」

彼女の肩が少し動いた。

それから顔を上げて、僕を見た。

目は赤くなってたけど、泣いてなかった。

指を一本伸ばして、僕の胸をつんと突いた。

「U。」

「うん。」

「にゃあ。」

その「ニャ」はすごく小さくて、すごく暗かった。

意味は分からなかった。

でも、突いた後、彼女はペンギンをスーツケースから取り出して、それを抱えて、寝室に戻って行った。

その夜、彼女はいつものように僕の背中にぶら下がらなかった。

ベッドの反対側で、背中を向けて寝てた。ペンギンを抱えて。

僕はそこに横になって、彼女の背中を見てた。長いこと、ずっと眠れなかった。

夜中、彼女が寝返りを打った。

寝たんだなと思って、動かなかった。

それから彼女がこっちに寄ってきて、僕のそばまで来て、頭を僕の肩に押し付けた。

手を伸ばして、僕の服の裾を掴んだ。

呼吸がだんだん規則的になった。

横向いて、月明かりに照らされた彼女の顔を見た。

寝てるけど、眉間にしわが寄ってた。

そっと手を伸ばして、そのしわを伸ばしてやった。

「三日間。」声に出さずに言った。「すぐ終わる。」

彼女が聞こえたみたいに、また眉間にしわが寄った。

ため息が出た。

窓の外の月はすごく明るかった。

明日、太陽はいつも通りに昇る。

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