「実花ちゃん……何を描いてるんだい?」たまらず、森山が声をかけた。「新しい設計図を描き直してるの」実花の落ち着いた声が返ってくる。「千佳さんの方案が頓挫したのはもう明らかだわ。彼女のデザイン自体は悪くないけれど、このチームの適性には全く合っていないのよ」実花は左手を動かしたまま、メンバーたちに視線を向けた。「お昼休みに私が外に出ていたのはね、この新しいアイデアが実現可能かどうか、材料と構造をテストするためだったの」その言葉に、メンバーたちの目に一筋の光が灯った。「見て」実花がペンを止めると、そこには見事な新しい構造図が完成していた。「私たちのアプローチはこうよ。ここにいる全員、絵を描くことに関してはプロフェッショナルでしょ。画風やジャンルはバラバラでも、それを逆手に取って組み合わせるの。アクリル板を七層に重ねて、一人一層ずつ、自分の得意なスタイルで絵を描き込むのよ」「ちょっと待って。一人が一層を描くなら、十人いるんだから十層になるんじゃない?なんで七層なんだ?」別のメンバーが疑問を口にした。「なぜなら、一人がこの七層分の絵の『立体的な重なり方や交差する角度』を精密に設計する役割に回る必要があるから。そして、一番手前になる最後の一層には、二、三人分の作業量が必要になるからよ」実花は図面の中心をペンで指し示した。「基本的なアプローチは、千佳さんの『視覚的な錯覚』という考え方を応用しているわ。でも、ただの絵じゃない。それぞれの層に描くのは、完成された一枚の絵ではなく、『計算されたパズルのピース』よ。全員が描いたバラバラのモチーフが、3Dの立体構造と光と影によって重なり合った瞬間――正面から見た時にだけ、一枚の巨大な絵として浮かび上がる仕掛けにするの」「なるほど!それなら俺たちにもできる。全員の得意分野が活かせて、それぞれの持ち味も出せるじゃないか!」メンバーたちから歓声が上がった。しかし、その中で希が首を傾げる。「でも実花ちゃん……ウチらのテーマは『虚無』だよ?七枚の絵が合わさって一枚の絵になることと、『虚無』って、どう繋がるの?」「いい質問ね」実花はふっと神秘的な笑みを浮かべた。「その答えは――こうよ」彼女がその後に語った『虚無』というテーマに対する解釈と表現方法は、メンバーたちの心を強く鷲掴みにした。絶望に沈んでいた
더 보기