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第135話

Author: 手足あせだく
ベンチに座る実花の隣で、和真がゆっくりと顔を寄せてくる。

至近距離まで迫る彼の気配に、実花の体は無意識のうちに微かに強張った。

一方の和真は、すぐ目の前にある妻の横顔にすっかり見惚れていた。毛穴一つ見当たらない陶器のように滑らかな肌。伏せられた長い睫毛が、白い頬に美しい影を落としている。

実花は……こんなにも、綺麗だったか。

和真は、自分の心臓がトクンと大きく跳ねるのを感じた。

「実花……」

無意識のうちに、彼の唇からその名が甘く零れ落ちる。

一方の実花は、体こそ強張らせていたものの、その視線は和真を通り越し、見事に咲き誇る真っ赤な薔薇の花へと向けられていた。

やった……!ついに、ついにあの離婚協議書に判が捺された原本を手に入れたわ!

彼女の頭の中は、先ほどバッグに忍ばせた書類のことで頭がいっぱいだった。込み上げてくる歓喜と興奮をどうしても抑えきれず、唇の端が自然と緩み、こぼれるような満面の笑みが広がっていく。

もはや、口元を隠すことすら不可能なくらい、彼女は心の底から絶好調だった。

「素晴らしい!その表情です!」

カメラマンが興奮気味にシャッターを切りまくる。
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