御堂グループ本社、大会議室。会議の進行役を務める峻は、部下の報告に耳を傾けながら、ふと冷めた目を入口へ向けた。柊吾が携帯を握りしめ、焦った顔でこちらに視線を送っている。何か重大な知らせを受け取ったばかりで、会議に割り込むべきか迷っている様子だった。峻の黒い瞳が、かすかに光った。柊吾の性格は分かっている。仕事上の急ぎであれば、わざわざ会議を中断しに来たりはしない。彼自身で片がつくからだ。柊吾の手に負えないこととなれば、それは仕事ではない。峻の私事だ。峻の眉がすっと寄った。自分に優先すべき私事などあるだろうか。それでも柊吾が叱られるのを覚悟で会議室に駆け込んできた。それほど重要だと判断したということは――――見つけたのか。あいつを。その考えが頭をよぎった瞬間、峻の体にびくりと衝撃が走った。会議が終わってから対応すればいい。最初はそう思った。だが一分後――どうしても落ち着いていられなくなった峻は、ついに立ち上がった。報告を遮り、大股で入口へと歩き出す。幹部たちが顔を見合わせ、呆気にとられた目で峻の背中を見送った。峻は自他ともに認める仕事の鬼だ。会議を途中で抜けるなど、前例がない。一体何が起きたというのか。峻と柊吾は前後して会議室を出た。廊下に出たところで峻は足を止め、低い声で訊いた。「見つけたのか。あいつはどこにいる」胸の中で心臓が早鐘を打っているのが、自分にも聞こえた。最近の自分がどうかしているのは分かっている。だが今はただ、あいつがどこにいるのかだけを知りたかった。なぜ家に帰ってこないのかを。ところが柊吾は、きょとんとした顔を返してきた。「あいつ……って、誰のことですか。涼風さんのご両親でしたら、ずっと涼崎にお住まいですけど」峻の目から、すっと光が消えた。眉間の皺がさらに深くなる。「……ご両親、だと?」「はい。涼風憲一(すずかぜ けんいち)さんと涼風沙代(すずかぜ さよ)さんです。ずっと涼崎にいらっしゃいますよ」柊吾が不思議そうに答える。峻は無言で柊吾を見据えた。声を荒げたわけでも、怒りを顔に出したわけでもない。なのに峻の全身からにじみ出る冷気が、柊吾を氷水に突き落としたようだった。思わずぶるりと身震いする。それでも柊吾には、何が地雷だったのか皆目見当がつかなかった。
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