どんなことだって、たった一人の娘、黎のためなら我慢できる。自分が綺麗じゃなくても、着飾れなくてもいい。たとえ、どんなにみすぼらしくて、しんどくて、情けなくても……かわいい黎が健やかに育ってくれるなら、そんなの全然たいしたことじゃない。こうして奈緒は、手慣れた手つきで搾乳機のスイッチを入れると、無意識に作業を続けた。最初は耐えられなかった、胸がカチカチに張る痛み。でも、今ではすっかり慣れてしまった。自分はもう母親なんだ。かけがえのない宝物がいるんだ……奈緒はそう思いながら、黎の愛くるしい顔を思い浮かべると、自然と目元が緩んだ。一方、充は黎を寝かしつけてから、そっと部屋のドアを開けた。薄暗い明かりの下、奈緒は淡いピンクのルームウェアを着ていた。以前はきっちり切りそろえられていたショートヘアも少し伸びて、前髪がちょうど眉にかかるくらいになっている。母性という光がそうさせるのだろうか。もともとクールで鋭い印象だった奈緒の眼差しが、今は柔らかな光の中で、信じられないほど穏やかに見えた。まるで薄いベールを纏ったように、以前の鋭さが消えている。そして、今まで見たことのないような、心を揺さぶる女性らしい美しさがにじみ出ていた。奈緒はうつむいて何かに思いを馳せている。その眼差しは、真剣で、そして優しい。それは充が今まで一度も見たことのなかった、心からの安らぎと満足感に満ちた表情だった。その瞬間、充の心臓は、何か見えないものにそっと打たれたようで、今まで感じたことのないときめきが、胸の奥からじわじわと広がっていくようだった。「終わった?何か手伝おうか?」充はそう言いながら、奈緒の方へ歩み寄った。その魅力的な声は、驚くほど優しかった。一方、それを聞いて奈緒はハッと我に返ると、慌てて服で胸元を隠した。「充、なんで入ってくる時、ノックしてくれなかったの?」すると、充は甘やかすように笑い、彼女の前にしゃがみこんだ。「奈緒、俺たちの仲じゃないか?今更何を恥ずかしがるんだ?」そう言って、充は奈緒の隣に腰を下ろすと、細長いガラスのケースを取り出した。「人に頼んで、最高級の高麗人参エキスを手に入れたんだ。鉄分や栄養を補給しないとだろ。これ、お金があってもなかなか手に入らないものでさ。結構大変だったんだからな」そう言われ、奈緒は
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