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第27話

Author: 森の小鹿
あの時、美紀と仁哉が結婚する直前だった。栗原家は、美紀と充に関する良くない噂を耳にして、結婚に難色を示し始めたんだ。

この縁談をなんとかまとめるため、充は仕方なく、奈緒と付き合っていると公表して、すぐに結婚に踏み切った。

この5年間、翠は横目で見てきたけど、充の奈緒への態度は、悪くはないけど、決して良いとは言えなかったから。

もし愛情があるなら、妊娠中ずっと仕事を続けさせるなんてしない。出産や産後の大事な時期に、そばにもいてあげないなんてこと、あるはずがない。

愛してもいないなら、どうしてさっさと離婚しないんだろう?

それに奈緒が産んだのは跡継ぎにもならない女の子だ。だから、彼女が子供を連れてどこに行こうと、青木家の跡継ぎ問題には何の関係もないはず。

翠は訳がわからず戸惑っていた。でも充は、不機嫌な顔で書斎を出て、そのまま家から出て行ってしまった。

翠は、去っていく彼の背中を見ながら、焦りと怒りでどうにかなりそうだった。

もう5年よ。離婚の話は先延ばしにされっぱなし。奈緒が跡継ぎの男の子を産んでくれれば、まだ我慢もできた。なのに、生まれたのは女の子……このままじゃ、可愛
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    一方、奈緒は会場を出るとアクセルを踏み込み、二人の新居である水鏡ヶ丘の家へと車を走らせた。そして、ドアを開けると、昔からいる使用人の井上恵(いのうえ めぐみ)と、奈緒が雇ったベビーシッターの黒崎香織(くろさき かおり)が、一緒になって赤ちゃんをあやしていた。二人は、奈緒の顔が真っ青なのを見て、ぎょっとした。「奥様、どうかなさいましたか?」そう言われ奈緒は、なんとか笑顔を作って答えた。「なんでもないの。お腹が空いちゃって。温かいうどんかなんかを作ってくれる?」そして、香織から赤ちゃんを受け取ると、奈緒の荒れ果てた心は、そのあどけない寝顔を見てようやく落ち着きを取り戻した。

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