電話を切った弥一はすぐさまかすみのほうに振り返ると、 「今の通話聞こえてた?」 かすみは申し訳なさそうに眉を下げ、 「すみません、所々聞こえてきていました。」 弥一はかすみにツカツカと歩み寄ると、 「例えばどの辺が?」 「え、あ。えと、電話のお相手が御子柴さんのお父さんだった、とか。あとは、御子柴さんが大事な用事があって帰って来られないのを残念がっていたのとかー」 "セーフ!!!" 一番聞かれたくない部分は聞かれてなかったみたいだと心底安心する弥一に、かすみが唐突に、 「御子柴さん、今日はお会いできて嬉しかったです。それから、罪悪感から御子柴さんを避けるような真似をしてしまっていたことは、本当に申し訳ありませんでした。」 そう言ってまた、彼女は頭を下げる。 弥一はまたしても謝られたことと、なぜか急に別れの前のやり取りみたいになっているこの状況に、 「もう謝らないでってば、お願いだから!それと、あれ?俺たちこれからかすみさんの行きたかった喫茶店に行くんじゃなかったっけ?」 かすみは驚いて頭を上げると、 「あれ?でも先程の電話で、御子柴さんはこれから大事な用事があるって仰ってませんでした?確かに、そう聞こえたと思ったのですが?」 「うん、言ったよ。だから、これから喫茶店に行くんだよね?」 かすみはしばし静止すると、 「あの、まさか御子柴さんのいう大事な用事って、私と喫茶店に行くことですか?」 信じられない、という表情のかすみに、弥一は当然というように、 「そうだよ?え、何で?」 久々に帰ってきたご両親の誘いを断ってまで、自分と一緒になんてことない喫茶店に行くことを大事な用事と捉えている弥一に、かすみは、 「喫茶店ならいつでも行けます。けど、御子柴さんのご両親って、海外に行ってらしててなかなかお会いできないんですよね?それなら、ご両親を優先されたほうがいいんじゃないですか?」 そう言われた弥一は、何も言い返さずにただかすみの顔をじっと見つめる。 そして、その視線にかすみがたじろいだのを見て取ると、 「両親には明日会いに行くつもりだよ。それと、確かに喫茶店にはいつでも行けるかもしれない。けど、かすみさんとは今日を逃したらいつ行けるって言うの?」 たった一週間ほど離れただけだっ
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