美由は胸を震わせ、わけがわからないという顔で答える。「わざとって……何のこと?」博史は小さく息を吐き、細めて美由の澄んだ目を見つめた。欲望から、声には苛立ちが滲む。「とぼけるな。一晩中、そんな格好で俺の前をうろちょろしやがって。もしお前にそういう気があるなら、はっきり言え。応えてやらないことも無い」美由は分かったような、分からないような微妙なところだったが、それでも頬はカッと熱くなり、心臓がどうにかなりそうなほど激しく鳴った。それでも、自分が博史の言葉を勘違いしているのかもしれないと思い、「何のことか、よくわからない」とつぶやいた。すると、博史がしびれを切らしたように、美由に体を押し付けた。「これで、わかっただろ?」博史の体が、押し付けられたその瞬間――美由は驚いて目を見開いた。瞳がかすかに震える。驚きと緊張で、どうしたらいいかわからない。ただ、はっと息をのむしかなかった。美由は、博史のいらだちの原因をはっきりと悟った。熱い体。硬い胸板。荒い呼吸。どうして、こんな大事なことを忘れていたんだろう?博史は昔から、自分がネグリジェを着ている姿を見ると我慢できなくなってしまうのだった。だから自分のパジャマは、ほとんどが地味なシャツと長ズボンだった。ネグリジェを着ることは、博史にとっては「誘っている」というサインと同じ意味だったのだ。「そういうことなんだろ?」博史は熱っぽい目つきで美由を見つめた。声はほとんど聞こえないほどかすれている。体を押し付けている博史が、生唾をごくりと飲んだ。5年も男性から遠ざかっていた美由とて、何も分からないわけではなかった。体は熱くなり、心もざわつく。しかし、博史とはもう未来がないのだから、これ以上かき乱してはだめなのだ。理性で必死に自分を抑える。いい大人なのだから、自分の行動には責任を持たないといけない。それに博史には、遥がいるではないか。人の恋路を邪魔するような女にだけは、なりたくなかった。美由は手首を振りほどくと、ありったけの力で博史の胸を突き放した。博史が一歩後ろへ下がる。「勘違いさせてごめん。わざとじゃないの」美由は慌てて謝ると、急いで床から服を拾い上げた。そしてそれを抱きしめたまま、自分の部屋へ駆け込んだ。ドアを閉めるやいなや、すぐに鍵をかける。ドア
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