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第三十三話⑪ ※※※

「……って所ね。解った?」 「うん。ありがとう、ママ」 お祖父ちゃん家の一室で上半身を起こした状態で私はママから説明と説教を受けていた。因みに華菜ちゃんと愛奈にはしこたま怒られた。ふみぃ~…。 少し休みなさいと行って出て行くママを見送る。 それにしても…ママから今までの一連の流れを聞いても、正直あんまり実感がない。 実は裏世界に行って、城を逃げ出した辺りから記憶がないんだよね…。毒の所為で猫化が進んでいた所為だと思うけど。 ただ…。 顔を横の布団へと向ける。 透馬が大の字で寝ている。 私が意識と元の姿を取り戻した直後、透馬が倒れたのを見て私は慌てて駆けよろうとした。だけど自分も病み上がりだって事をすっかり忘れてて、急激に動いた所為で頭がふらついてぶっ倒れちゃったんだよね、うん。 そんな私と透馬を、皆でお祖父ちゃんの家の布団まで運んでくれて寝かせてくれたみたい。 私の方が先に目が覚めて、ママからこれまで一体何があったのか、透馬がどれだけ頑張ってくれたのかを教えて貰った。 何でママが知ってるんだろうと疑問のまま問いかけたら、なんとママは私達をずっとつけていたらしいの。 裏世界にも付いて来てたんだって。でもママってラスボスじゃない?裏世界にだってママはいるはずで。じゃあ、どうやって?と首を傾げていたら、問答無用で裏世界の自分をこっちに放り投げたって言ってた。ママ、強いね…。娘は遠い目をしたくなるね…。 裏世界にいる間は、あちらの世界のママとして動かなければならなかったってのもあったけど一番の理由はいつ自分の血をあげても良い様にしておく為らしかった。だから透馬にもなるべくあちらのママとして認識させる為途中戦闘もした。一人でずっと魔物と戦い続けてたって。カッコ良かったってママは笑ってた。うんうん。総評して言えば、何してるのママは、ってとこだけど…結果オーライで良しとしよう。 私も透馬も誰も死なない道を目指して進んでいたから、元よりママの命を使うつもりはなかった。ママの立ち位置はラスボス。下手に動いたら本当に私達が戦ってどちらかが命を落としていたかもしれない。結果として、誰一人として命を落としていない訳だし。これほど幸せな結末はあるだろうか? そう思うと嬉しさで笑みが浮かぶ。 「うぅ~…」 そんな私とは逆に悪い夢でも見てるのか透馬が唸りなが
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第三十三話⑫ ※※※

私の中の毒がなくなり、透馬と恋人同士になった時点で乙女ゲーム『無限ーエイトー』のルートは終わりを迎えた。 要はエンディングを迎えたってことである。 …とは言え、私は猫になっていた時の記憶はないし、透馬が頑張ってくれたって事しか解らないんだけどさ。 「…姉さん。美鈴姉さんってばっ」 「ふみ?」 顔の前で手を振られて私は我に返る。 「話の途中で止めないでよ。続きは?海里さんが来てどうなったの?」 「あぁ、それはねー」 旭がネクタイを緩めつつ、話の続きを求めてきたから、私はあの当時の…数年前の事を思い出す。あの後。 海里くんが私と透馬の所へ乗り込んできた後、皆がいると海里くんに言われ、皆が集まっているであろう居間へ二人で向かったら、そこには鴇お兄ちゃんがいた。鴇お兄ちゃんの背後には葵お兄ちゃんも棗お兄ちゃんもいた。 私と透馬は顔を見合わせて、でも直ぐに互いに頷き合った。 透馬は真っ直ぐ鴇お兄ちゃんの前に行き、 「妹さんを俺に下さいっ」 土下座した。 「断る」 「消えろ」 「消し炭になれ」 ん?……デジャヴ? 何か昔もこんな光景があったような…? かなり昔にあったような…? でも、お兄ちゃん達に認めて貰えないの嫌だな…。 じっ…。 棗お兄ちゃん、認めてくれないかな…じーっ…。 「…うぐ…、鈴、そんな目で僕を見ないで」 見るなって言われた。 …じゃあ、葵お兄ちゃん。…じー…。 「……鈴ちゃん。…いや、でも…ここは曲げたら駄目なシーンでっ…」 あ、顔逸らされた。 じゃあじゃあ、鴇お兄ちゃんだっ!じーっ……。 鴇お兄ちゃんをじっと、じーっと見つめる。 すると鴇お兄ちゃんは、私の視線を受け止め、大きく息を吐いた。 「……美鈴。いいのか?これで」 「え?」 「出会いが出会いだっただろう?本当に、後悔しないか?」 「そうだよ、鈴っ。鈴だって忘れた訳じゃないよね?この人が鈴を一番最初に怖がらせたんだよっ?」 何を言われるかと思えば、そんな昔の事、お兄ちゃん達覚えててくれたんだね。 お兄ちゃん達の優しさに心がほっこりする。逆に透馬は鴇お兄ちゃんの足下でぎゃんぎゃん言葉の刃で刺されてるけど。 私はそんな透馬の横に行き、隣で正座する。 「透馬があの時私の所に来た理由は、鴇お兄ちゃん達を想っての事。透馬はずっとずーっ
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外伝小話 透馬編 とあるアルバイト店員の話

「先生。まだ悩んでらっしゃるんですか?」 「んー……」 おれがこの天川透馬大先生に弟子入りして一か月。 先生が作品を作る度に、こうして悩んでる姿をもう何度見ただろうか? おれから見れば、一体何が違うのかさっぱり解らない。 だっておれから見たら完成品で…。先生のこだわりポイントなんだろうけど…。けど、先生そうやって悩んでいながら、翌日になると大抵テンション高く出勤してきて、更にクオリティの高いものを作り上げるんっすよね。 一先ず先生にお茶を置いて、おれは先生の工房を出た。 工房と一つになっている店に出て、店番をする。 「こら、バイト。来た早々椅子に座るな。店番は立ってしろ」 「えー、だってお客いないっすよー。座って先生の作品をガン視してたいっす」 「はぁ?んなの許す訳ねぇだろ。先輩の俺ですらまだ見きれてねぇってのにっ」 「そんなの要領が悪いだけじゃないっすかー」 「あぁん?仕事増やしてやろうか?後輩」 おっと、やべ。 先輩の目が吊り上がったわ。 逃げるが勝ちってね。 「店外掃除行って来まーすっ」 「あっ、こらっ。…くそっ、調子の良い奴」 箒とバケツを持って店の外へ逃げる。 「よしっ。やるぜっ」 箒で店の端から端まで綺麗にする。 「……こんにちわ?」 店の前で掃除してると、滅茶苦茶綺麗な女の人に話かけられた。 「すげー…金のほわほわ」 「ふみみ?」 いっけね、思わず固まってしまった。 店の外で掃除してるおれに話かけるって事はお客さんだよなっ。 「えっと、お客さん?」 「貴方は新しい店員さん?」 「おうっ」 「そっかぁ」 にこにこと微笑む目の前の女性はちょっと綺麗過ぎて目が…。 若干目を細めて、神々しさから目を守りつつ、その人の姿を確認する。 …おれが新しい店員だって解るって事は、てっきり常連さんなのかと思って確認したら…つけてるのは指輪だけ。薬指…左手…結婚指輪? もしかして、結婚指輪だけは先生の指輪にしようって言う…先生の作品じゃなく先生の顔目当てのミーハー? だとしたら…先生に合わせてなんかやるもんか。おれが接客してさっさと帰って貰おう。 先生は今お悩み中だしなっ。面倒な事はおれ達が引き受けるのが常ってもんだろ。 「今日は何をお探しに?」 「今日は、透馬にお弁当を届けに」 「えっ!?」
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外伝第五章 第三十三話① 猪の想いは曲がれない?彼との恋は体力勝負!

※ 外伝第二章 御曹司ルートの第三十二話から続くお話です。ルート割れしておりますのでお気をつけてお読みください。「…さんっ…鳥さんっ!…白鳥さんっ!」 耳元で声がして、何か体が揺さぶられてる…? ってか、ゆっさゆっさ思い切り揺さぶられて、ちょっ、気持ち悪ぃ…。 やめっ、揺らすな。 「白鳥さんっ!白鳥さぁぁぁんっ!!」 「だああああっ!!やかましい上に気持ち悪いからやめぇいっ!!」 叫びながら目を抉じ開けて勢いよく置き上がると目の前にある顔に全力頭突き。 ゴンッ!! とすんばらしい音が聞こえた。 折角目開いたのに、痛みで再び閉じる事になるとは…。 「白鳥さんっ!無事だったんじゃねぇかっ!」 「~っつー…。相変わらず石頭ですね、猪塚先輩。なんでそんなケロッとしてるんです?それと言葉遣い。戻ってますよ」 「あっ…。色々とごめんなさい」 「いえ、いいんですけどね」 デコを擦りつつ私はやっと開けたけど、痛みで涙に滲んだ視界で周囲を確かめた。 「…ここは?」 「解らねぇ。気付いたらここにいた」 猪塚先輩もどうやら動揺してるみたいだね。言葉遣いがおかしい。 「猪塚先輩。落ち着いて。で詳しく説明して」 「『ご、ごめんなさい。えっと…』」 「イタリア語で構いませんよ。今は私しかいませんし」 「いや。それは止めた方が良いです。外に、イタリア語を話す人がいました」 「そうなんですか?」 「はい。油断はしない方が良さそうです」 厳しい目を外に向ける猪塚先輩の姿越しに私もそちらへ視線を向ける。 すると、どうやらここは檻で、鉄格子の向うには誰か警備員のような格好をした男性が立っているのが分かる。 「成程…。窓はあるのかな?」 「ありませんね。僕が見た限りは、ですが」 私も周囲を見るけれど、確かに…ないね。 ピチョンッ。 「ん…?」 私の頬に滴が落ちて来た。雨漏り? 天井を見上げようとして、気付いた。 どうやら雨漏りではなく、猪塚先輩の髪から滴ったみたいだ。 「猪塚先輩。どうして、濡れて…」 「あぁ、それは、あのヘリから落ちて行く白鳥さんを見て、助けなければとパラシュートを持って飛び降りて、あの訳が解らないクローンから白鳥さんを奪い返したまでは良かったん
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第三十三話② ※※※

―――ゴゴゴゴゴッ。また何処かが動いた音がして。 音の鳴っている頭上を見ると天井が開いている。 そして、上から何かが降ってきた。 「ふみーっ!?」 「白鳥っ、俺の後ろに隠れろっ!」 言いながら私の手を引っ張ってくれた猪塚先輩に感謝しながら私達は閉じられた壁にぺたりと背中をくっつける形で避難した。―――ヒュルルルル~、ドサッ。落ちて来たそれは、凸の形をしたブロックだった。 え?これだけ? おそるおそる猪塚先輩が近づいてそれに触れた。 どうやら触れたら危険なものではなさそうだ。 私もそーっと近寄ってそれに触れてみた。これなんだろう?素材が解らないけど…結構重いね。 「私持ちあげられるかな?」 「多分無理だと思いますよ。落下した音、結構重そうでしたから。持ち上げたいのなら僕が持ちあげます」 猪塚先輩がその凸ブロックを持ちあげた。するとそのブロックからテロリン♪と音が鳴って電光掲示板よろしくぺかぺか光りだした。 そして、正面の行き止まりの壁も同じく光りだした。 「……どう言う仕組み?」 「俺に解る訳ないだろ」 ちょいちょい猪塚先輩の言葉遣いがワイルドになってる。 でもこうも驚く事が多いと素に戻っても仕方ないよね。 私は気にしない事にして、一先ず持ったまま近づいてみようと猪塚先輩に提案して、奥の行き止まりの壁へと近寄った。 因みにこの壁って何処まで続いてるの? すっかり開けた空を見上げると、遠くに天井がある事に気付いた。 二、三階分の高さかな?結構な高さだなぁ。 で、この電光掲示板ばりの縁どりされた壁はどこまで? 天井まで続いてるんだね。 「白鳥さん。これ、どうする?」 「うん。…端っこに置いてみる?一応邪魔にならない位置に?」 「分かった」 壁の一番左端にぴったりとはまる様に置くと、再びゴゴゴッと音がして地面が揺れて、地面に凹凸が出来た。しかもさっきまでの光もなくなっている。 「ふみ?」 「白鳥さん、大丈夫ですか?」 駆け寄って来てくれた私と猪塚先輩は並んで今出来たでっぱりをマジマジと眺める。 「なんで急にでっぱったの?ここ」 「しかも形がいびつですね」 「だよねぇ?」 なんて、危機感なく会話していたら、上からまたヒュルル~と落下音が聞こえて来た。 「ふみみっ!?」 また猪塚先輩が私の手を引いて
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第三十三話③ ※※※

何とか脱出出来たけど、私と猪塚先輩の視界に入ったのは長ーい廊下。 「一本道?」 「どうしましょう?」 「と言っても…行くしかなくない?」 後ろに戻りたくはないし…。 振り返って登ってきた道を見ると…うん。戻りたくはない。 私と猪塚先輩は廊下を歩き出した。 しかし、今歩いてて思ったんだけど。 「……下ってない?」 「下ってますね。…白鳥さん。僕、嫌な予感が」 「あー、猪塚先輩も?実は私もー」 この廊下、下ってるんだよねー…。 歩を進めれば進めるほど解るんだけど緩やかなカーブを描きつつ下ってるんだよね。 しかも一本道だし。道を逸れる事もない。 そうしてカーブを描いて下るって事は…。 「ま、そうなりますよね」 「そうなりますね」 そう。私達はまた行き止まりに辿り着き閉じ込められた。 さっきと同じ場所に戻されたのだ。 積み上げたブロックはどう言う原理か解らないけど、綺麗に消えている。 前みたいに閉じ込められたくないので壁が出来る手前で二人で足を止めていた。 「……どうしようか、白鳥さん」 「ホントにねー…。多分一歩踏み込んだらまた同じ結果だよね?」 「だと思います」 「かと言って、後ろに戻った所で道が残ってるとも思えないよね」 「牢が待っているだけですね」 「ってなると進むしかないって事だよね?」 「そうですね」 「でも、またやりたくはないよね」 「やりたくないですね」 二人で考え込む。 うぅ~ん…。 考え込んでいると、背後からゴロゴロと音が聞こえる。 「猪塚先輩。私嫌な予感が」 「奇遇ですね、白鳥さん。実は僕も」 ……。 覚悟を決めてバッと振り返ると背後から巨大な球体が転がって来ている。 「ふみーっ!!」 当然逃げる。 すると、当然閉じ込められて。『ステージ2 ゲーム開始します』アナウンスが流れる。 うん?ステージ2? さっきとは違うと言う事? ゴゴゴッと音が鳴って天井が開いてブロックが落ちて来た。 私と猪塚先輩は慣れたように端によって回避する。 「えっと…どんなブロック?」 「これは…L字型のブロックですね」 「L字かぁ。それじゃあ」 ヒュルルルル~。 「ふみっ!?」 「えっ!?」 ほぼ条件反射で後ろに飛び退く。 するとそこに鏡写しのL字型のブロックが落ちて来てい
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第三十三話④ ※※※

ヒュルル~。もうすっかりこの落下音にも慣れてしまった。落ちて来たブロックの形は…□ブロックだった。重さはどうかな?私と猪塚先輩はブロックに駆け寄り、持ち上げようとした。のだけど…。「お、重い…」「最初の頃と同じ重さの様ですね」ヒュルル~。音が聞こえて急ぎ飛び退く。ドンッ。と音を立てて落ちて来たそれを見ると、今度はLブロック。「すみませんが、服を持ってて貰えますか?それから指示をお願いします」「うん。了解」着替えの服を猪塚先輩から預かり、私は邪魔にならない位置に移動しつつ、猪塚先輩にブロックの配置指示を出す。四段綺麗に積んで、最後落ちて来た長い棒を端っこに縦に入れると四列同時消しになる。猪塚先輩がそれを嵌めた瞬間。ヒュンッ!突然足下が涼しくなった。その奇妙な感触に咄嗟に足下を見ると、盛り上がった床が四段分消えている。「嘘ぉーっ!?」落下してもそんな凄い高さじゃないから怪我はしないし、上手く着地もするけれど、驚きはするよね。ビックリして私と猪塚先輩が慌てて着地をして、落下してくるブロックに当たらないように回避する。「ちょ、え?こんなの初めてだよねっ!?」「初めてに決まってんだろっ。っつか、マジでビビったわ。白鳥、怪我してたらただじゃおかねぇーぞっ!?」「怪我はないけど、あービックリした」心臓がバクバクしてる。その動悸が収まってきたら、今度は腹が立って来た。何でいきなり消える仕様にしたの?危ないじゃない…。そう、そこまで本気なの。ふーん…。「良い根性してるわね…。このゲームを私はどれだけやり込んできたと思ってるのっ!絶対、脱出してやるんだからっ!」『……怒ってる白鳥さんも可愛い…』「猪塚先輩っ!今はそんな事言ってる場合じゃないでしょっ!でもありがとうっ!!」褒めて貰ったんだからお礼はしっかりねっ!でも今はそんな状況じゃないのよねっ!「それでどうするんですか?」「簡単よ。四段目だけ一マス空くように埋めていく」『……それは本当に簡単なんでしょうか…?』「全く問題ないわ。猪塚先輩。まずこのブロックを左端に」私は宣言通り。四段目の一マスだけ空くようにブロックを組んでいく。ブロックは一列にならないと安定した床にはならない。だから一旦一列をブロックで埋めてみた。すると床がなくなる事はなかったのだ。と
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第三十三話⑤ ※※※(棗視点)

「美鈴が猪塚の所のと行方不明?」 白鳥財閥が経営するハワイのホテルの一室。 鴇兄さんの声が室内に響いた。 ホテルの部屋の中で華菜ちゃんを中心に皆で姿を見失った四人の捜索を行っていたのだけど…。 鴇兄さん、背中に悪魔の羽が…いや、頭に鬼の角と言った方がいいかな? とにかく、どす黒い怒りと色んな意味を含めた心配のオーラが渦巻いている。 腕組んで、誰に文句言う訳でもないんだけど、今入った情報を聞いた途端、その言葉とぶわわっと真っ黒オーラが鴇兄さんの周囲に飛び交った。 「……久しぶりだね。鴇兄さん、黒オーラ」 「確かに久しぶりだけど…気の所為かな?この部屋の温度が下がって来てる気がするんだ」 「おおぅっ!筋肉にっ!冷えはっ!」 「ダーリン。落ち着いて下さい。私がきちんと温めますから」 ……何か余計な声が混じっていたような? 「ダーリン」 「ハニー」 気のせいではなかったみたいだ。 「はぁ…とにかくだ。美鈴の無事を確認するのが先だ。あいつの事だから一人でもどうにか生きて行くだろうが、問題は」 「男が側にいると話は別って事だよね」 「そうだ」 いっそ猪塚でも良いから一緒にいてくれれば…。 本当にあの時ヘリから飛び降りなかったのが悔やまれる。 「優兎と樹の御曹司も行方不明。あの時ヘリから落下するであろう場所は捜索を続けているが、四人の姿はなかった。流されるにしても、そこまで時間をかけていないのに見つからないなんて事はまずないだろう。となると、第三者が連れ去ったと考えるべきだ」 「誰もいない、痕跡も無い、とかおかしいもんね」 「落ちたのは確かで、僕達もしっかりと見てるからね」 「何か見つかれば、ちょっとは違ったのかもしれないけど」「見つけたーーーーっ!!」僕達の会話は見事に分断された。 鈴の親友の声が僕達の声を全て遮ったのだ。 華菜ちゃんは僕達が話している間、ずっとパソコンを弄って鈴の居場所を探ってくれていた。 「それで、花崎。美鈴は何処に?」 「イタリアの端に私が美鈴ちゃんのイヤリングに仕込んだGPSが反応してるっ」 「……うん?華菜ちゃん、鈴ちゃんにGPSなんていつの間に…?」 「ついでに猪塚先輩のご飯に混ぜて体内に取りこませたGPSも同じ所で反応を」 「…うん。華菜ちゃん。ちょっと待とうか?聞き捨てならない事が
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第三十三話⑥ ※※※(猪塚視点)

楽園とはきっとここの事を言うんだろう…。 僕は今幸せの過剰摂取で死ねる。 なんであんなに白鳥さんは可愛いんだっ! 綺麗で可愛くて、見上げてくる顔が可愛くて、それでいて可愛くてっ! 声なんて鈴が鳴ってるみたいで、それでいて可愛くてっ! 僕が頑張ってる事にいつも真っ先に気付いてくれて、それでいて可愛くてっっ! どんな人にも優しくて天使みたいで、それでいて可愛くてっっ!!!問1 白鳥さんを何時間飲まず食わずで見ていられますか?『息絶えても目は開き続けるっ!!』くわっ!! と目をカッ開いた。 『って、あれ?なんで僕床に倒れてるんだ?』 しかもうつ伏せで。更に言うなら多分顔面強打したのかな?鼻が痛い。 体を起こして周囲を見渡す。 『白鳥さん?』 あれ? 白鳥さんは一体何処に? タオルや着替えた服がバラバラに落ちている。 えっとこれはどう言う状況だ? ちょっと記憶を整理しよう。 確か、白鳥さんが僕の体を拭こうとしてくれて中に入って来て…? ちょっと待てよ? もしかしてそれが既に幻か? 実は白鳥さんはずっと外にいた? いやいや。待て待て。 それはない。だってここに白鳥さんが持っていた服があるじゃないかっ! じゃあ、僕の体を拭いてくれようとしたのは本当って事っ!? 『………しあわせだー…』 天井を見上げ喜びに拳を握る。 一頻り幸せをちゃんと噛み締めてから、僕はハッと気付いた。 『待ってくれ。あれが幻じゃないのなら、どうして白鳥さんはここにいないんだっ?』 ドアを開けて外を見るが白鳥さんはそこにいない。 『幸せに浸ってる場合じゃないじゃないかっ!待て。思い出せ。白鳥さんは一体何処にっ』 記憶を辿る。 あの時、白鳥さんがここに来て体を拭く拭かないの攻防戦があって、で、僕が興奮に耐え切れず鼻血を出した。 で、白鳥さんが、か、体を貸すと言ってくれて、で、僕の興奮がMAXに到達して倒れそうになったのを白鳥さんが胸でうけ、と、めて…。 ふかふかのふわふわで…ごふぉっ! 幸せで吐血が出来るなんて…だが悔いはないっ! ………いや、あるって。 白鳥さんがいないこの状況に悔いしかない。 あの時薄れかけた意識の中で、笛の音と回収って声が聞こえた気がする。 あの声は、何処か聞き覚えがある。あの声は、確か…。 脳裏に過った
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第三十三話⑦ ※※※

「お茶、のみ、まスか?」 『いえ、結構ですよ。それに無理に日本語で話さなくても私イタリア語話せますよ』 「……?」 あれ?私を担いでここに駆け込んだお姉さんが首を傾げてるよ? 私イタリア語使い方間違ってたかな?それとももしかしてお姉さんイタリア語話せない? 『イタリア語で大丈夫、だそうよ?』 もう一人のお姉さんが通訳してくれた。通訳してくれた言葉はスペイン語? 成程。お姉さんはスペインの人なんだね。 『スペイン語の方が良いですか?』 にっこり笑って言うと、 『『えっ!?』』 二人のお姉さんが振り返った。 『それからお茶は今はいりません。お水を飲んだので。そんな事よりも、何故私はここに連れて来られたのでしょう?』 にっこり再び。 笑顔で圧。 『えっと…?』 おう、スペイン語だけだと周りに伝わらないね。 私は座らされた椅子で姿勢を正して、周囲をぐるっと見回した。 全員で四人。一人リーダーっぽいブラウンのウェーブ髪を一纏めにしたボンキュッボンのお姉さん。 一人は私を担いだ黒髪ショートのスペイン語を話すお姉さん。 もう一人は、金色ストレート髪の細身のお姉さん。 そして最後に赤茶の腰まである髪を一本の三つ編みにしてる身長がちょっと低めのお姉さん。 以上の四人。皆共通して黒スーツに黒ネクタイ、黒手袋とSPを彷彿とさせる恰好をしている。黒のパンプスで走れる技術、凄いよね。 でもね。 私もね。こう…総帥生活も結構長い事してきて、しかも前世からこっち襲われる回数の方が普通に過ごす日数より多いんじゃないか?と言う生活を送ってきた身としてはね? 『…もう一度問いましょうか。何故、私はここに連れて来られたのでしょう?』 イタリア語でハッキリと。 にっこりと微笑みながら問う。 笑顔で圧っ! 棗お兄ちゃんの得意技っ!どやっ!! …鴇お兄ちゃんもやってるか。葵お兄ちゃんもしてる?…棗お兄ちゃんの得意技改め白鳥家の秘奥義っ!!どやっ!! 『……お答えしかねます』 おや?リーダーなお姉さんが、圧返ししてきたぞ? ふふふ…でも弱い弱い。私に圧返ししたいのであればママ位の迫力を持ってこないと。 『お答しかねます、かぁ…。私にはそれを知る権利もない、と?』 『……』 『……舐められたものだわ。私を白鳥の総帥と知った上で、貴女方の上司
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