All Chapters of 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない : Chapter 191 - Chapter 200

206 Chapters

交渉下手は(元)日本人だからしょうがないってことにしておく

「当然、徴税はいたしますが、耕地面積ではなく収穫量の七割を基準に一部労働奉仕で代弁するつもりです」「七!? ……代弁?」 ん? 難しすぎた?  どう言えばいいんだべ?「例えば木材の伐採作業をする人手を出せばその分、農産物の量を減らせる……?」 いや、うまく説明できないな。「お兄さんのためにたくさん働けば、その分納めるフレイラの量を減らせるってこと?」 少年よ、君賢いね。  名前は……ケイロ・ボットだっけ?  優しい話し方で肯定しておこう。「そうだよ」 すげぇ満足そうな顔した。「働けば働くほど納める分が少なくなると言うことですか?」 おっと? 村長の言葉遣いに心持ち敬語感出てきたぞ。  もう一息だな。「そうです。もちろん徴税ですからこちらの要求以上の労働は対象外ですがね」 労働だけで納税されても困るから、その辺の塩梅はこちらで決めさせてもらうよ。「おじいちゃん、悪くない条件だよ?」「そうじゃのぅ……じゃが、こんな小さな村では収穫量も人手もたかが知れとるでのぅ……」「村に余所者が増えるのは好ましくありませんか?」「え?」 日本ではムラ社会なんて言葉があったくらい村ってものに排他的イメージを持っているんで聞いてみたんだけど、言い回しが判りにくかったかな?「新しく村人を増やすのは抵抗がありますか?」「働き手が増えて村が栄えるのを嫌がるわけもありません」 …………。 うん、細心の注意を払って施策しないと軋轢が問題になるな。  言動からそれが判る。  僕以外、流れ者が集まってるうちの町でさえ、いざこざの噂は時々聞こえてくるからなぁ。  これも、政策の検討案件だ。「さて、村長。どうでしょう? 私の庇護下に入る気はございませんか?」 長い沈黙が続く、やがてケイロがそっと村長の膝に自分の手を添える。  見つめ合う二人。  村長が
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それはゴメン

 隣村との密約を交わした僕はその後、村の整備計画を立てるための情報収拾をした。  夕暮れ時に村長の息子夫婦が帰ってきて、僕をもてなす食事を用意してもらう。  去年の収穫からこっち食料に余裕のある僕の町と違ってとても質素なご馳走だったけど、心を込めて作ってもらったことに感謝しながら食べた。  夜は早々に寝る。  もちろん、リリムに眠りの魔法をかけてもらってだ。  そして翌日、早朝には村を立つ。  何か言いたそうなケイロ少年に「また来るよ」 と、約束して。「オギン」「はい」「一晩野宿したいんだけど、いい?」「……この時期なら野営の準備などせずに一晩過ごすことはできますが、どうしてまた」「経験しておきたいのが一つと、ちよっと道々確認したいことがあってさ」「経験……ですか?」「そう。ケ・イ・ケ・ン」「あの……」「ん?」 すげぇなんか言いたそうなんだけど。「いえ、かしこまりました」 オギンはそれっきり何も言ってこなかった。  さて、僕は懐から黒墨と、背負い袋から木簡を取り出した。  木簡は取り扱いを考慮して縦一シャッケン横三スンブの長さにしている。  ちょうど僕の前腕くらいの大きさだ。  今回はそれを六枚持ってきてる。  重ねた厚さが大体三スンブになる。  これがなければもっと入れられるものがあるとオギンに言われていたのだけど、これは絶対に必要だと主張して持ってきた貴重な木簡だ。  これを使って道々様々なことを書き込んでいく。  木簡は六枚しかないから書くことは厳選しなきゃならなくて苦労したよ。  そなんこんなで道程六割くらいのところで日が暮れ出した。「お館様、日暮れまでに野営地につかないと、野宿も危険になります」 と、オギンに促されて、後ろ髪ひかれる思いでホルスを走らせる。  少々ホルスには無理をさせた代わりになんとか日没までに間に合った。
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煩悩との戦い

 ……それはごめん。  今度から最低二人で出かけてもらうよ。「ぐっすり寝られるの?」「無理ですね。一晩で二度ほど目が覚めます。大体火力が弱くなっていますので、薪を焼べて寝直します」 ……ほんと、ごめん。「…………」 …………。 なんだ?  この気まずい沈黙は。「お館様」「はい?」「どちらが先に寝……見張りになりますか?」「そうだね、睡眠時間がいつもの半分になるんなら、僕は先に寝たいかな?」「……では、私が先に見張りとなりましょう。ごゆっくりお休みくださいませ」 なんだったんだ?  今の間は。  まぁいいか。  寝る寝る。(今日は眠りの魔法に頼れないわよ) リリムが横になった僕の耳元で意地悪く囁いてくる。  それもワザと色っぽい声で。  くそっ、意識は前世の四十オヤジを引きずっているとはいえ、今は十七歳の健康的な男の子なんだぞ。  いや、四十オヤジを引きずってるからなおのこと気になるじゃないか!(あのくたらさんみゃくさんぼだい あのくたらさんみゃくさんぼだい……) あーダメだ。  煩悩が湧き上がる。  昨日見たオギンのおっぱい大きかったなぁ……。(スケベ) あ(汗) これは本格的にやばいぞ。  くそ。  煩悩退散 煩悩退散……。  これじゃダメだ。  そうだ、般若心経を唱えよう。  僕の前世記憶は完コピだ。  オタク趣味の一環で般若心経を写経したこともある。  あれを無心で唱えるんだ。  それしかない! 観自在菩薩行深般若波羅蜜多時  照見五蘊皆空度一切苦厄舎利子  色不異空空不異色色即是空空即是色受想行識  亦復如是舎利子是諸法空相不生不滅不垢不浄  不増不減是故空中無色無受想行識  無限耳鼻舌身意無色声香味触法無限界乃
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旅で得た知見を元に新たな計画を立てる。

「お館様。お館様、交代のお時間です」 オギンに起こされたってことは、なんとか寝られたということだ。  でも、全然寝た気がしない。「ありがとう。ところで僕は何に注意して見張っていればいいんだろうか?」「この辺りで危険なのはナルフくらいです」「そういえばラバナルはナルフ族、肉食の獣もナルフだね? なんでだろ?」 厳密には発音が違うんだけどさ。「ナルフ族は人族がナルフと呼ぶ獣をヤマイヌと呼ぶそうですし、たまたまなのでしょう」「へぇ」 山犬なんだ。  まぁ、確かに多言語で同音異義の単語があるのは不思議じゃないか。「では、休ませてもらいます」「あ、ああ」 ちょうど火を挟んで僕の向かい側で、火を背にしてオギンが横になる。  信用ないねぇ。  仮にもお館様ですよ、僕は。 …………。(リリム)(なに?)(いつも通り考えをまとめる手伝いをしてくれないか)(りょ) 僕が前世をおさらばする頃に流行っていた挨拶だよ、それ。  まぁ、いいや。  僕は薪を焼べて火勢を強めて後ろを向く。  木簡を読むためだ。  それから僕はリリムを相手に夜が開けるまで自分の考えを整理し続けた。  そして、起き出したオギンと軽く腹を満たした後、眠い目をこすりつつ町を目指す。  昼前には町に着き、僕は自分の館で新しい木簡に整理した情報を書き込む。  うーむ、やっぱ、紙が欲しい。  軽くて薄くて取り扱いの簡便な紙が欲しい。  仕事に没頭していたからか、暗くなるまで眠くなることはなかったんだけど、晩飯食ったらてきめんに睡魔に襲われたのは、どう考えても睡眠不足だろうね。  寝支度だけは頑張って自分の寝床に入る。  やっぱ我が家が一番だわ。  翌朝、すっきりした頭で今後の方策を諮るためにイラードとルダーを呼び出す。  二人だけなのは主に内政方面の計画のためだ。  まずは村長
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無理を承知で道理をねじ伏せる計画

「流入してくる人を建設に充てるってのはどうだ?」 いいね、ルダー。「町を頼ってくる人は町に住みたくてくるのです。宿場に止めるなんて心証を悪くしますよ」「敵は増やしたくないな」「でもよ、イラード。この町の適正規模は百五十人程度。いつもそう言ってるのはお前さんだろ?」「ええ」「だったら、早晩町に人は受け入れられなくなるってことだぞ」「それは……」 確かに今のペースで人口が増えるのだとしたら来年の夏にはその規模になってしまいそうだ。「お館様が隣村抱き込む気になったのもそう言った事情があった上でだと思うんだ。ところで、お館様?」「なんでしょう?」「宿場二ヶ所で何人くらいの人口を割くつもりなんだ?」 人口ときたか。「ゆくゆくは宿場町周りも畑にする計画だから一ヶ所五十人規模ってところかな?」「ゆくゆくの計画はどうでもいい。宿場としての計画だけで言ってくれ」「手厳しいね」「そもそもこの町にもまだ百人しかいない」 そうですね。「宿屋二軒ってとこかな。宿の維持管理、接客、食事の提供で最低十人くらい?」「多くありませんか?」「多いかな?」「ふむ、なるほど。それで畑か」 そうなのよ。  大都市をつなぐ宿場だってんならともかく、終点はいいとこ百五十人規模のこの町。  しばらくは隣村との行き来にしか需要がないんだから、宿場としては宿二軒でも多いくらいなわけ。  でも将来の人口増大と宿場としての機能維持を考えたらこんな計画になっちゃったんだな、これが。「判りました。判りました。こちら側の野営地は春から宿場を建設することにしましょう。移民団は三十人規模。ただし、計画は男爵との戦次第です。いいですね?」「はい」「で? 移民団の代表には誰を充てるつもりなんだ?」 ニヤニヤしながらルダーが訊いてくる。「ジャスの予定だ。ジャスにはもう一つの宿場
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だよねー

 忙しい夏が終わって実りの秋が訪れた。  人数と地域を割り振って収穫に当たる。  町の前面に広がる畑はドブルを責任者に村の男手を三割割く。  背面の新規開拓地は、ルダーを責任者に男手を四割。  雑木林の収穫物はまだ時期の早いものもあるので勝手の判っているヘレンを責任者とする女性陣総出の収穫班と、班の安全を確保しつつ狩りをするオギン、ザイーダ、ペギー、クレタの護衛班。  残りの男手は北の森に狩猟に出かけている。  僕?  僕は狩猟班だよ。  もっとも、猟に出かけて三日目にはキャラバンが帰ってきたんで、急遽カイジョーと僕は村で頭脳労働に変更だ。  代わりにキャラバンの連中がヤッチシを残して狩猟班に送り出された。  さて、戦略会議だ。  メンバーは僕とジョー、カイジョー、ヤッチシの四人。  まずは町の外の様子についての報告があった。  それによると大きな武力衝突は起きていないそうだ。  やはり動き出すとすれば収穫後ってことなんだろう。  男爵領に関していえばずっと平穏で、領境を接している他勢力との関係もむしろ良好だという。  なんだよ、そんな情勢で増税してんの?  便乗?「どさくさに紛れて私腹肥やしてるわけ?」「みたいだな」「腐れてんな」 カイジョーの吐き捨てるような言葉に僕は大いに共感する。「てことは、ズラカルト男爵は特に軍備の増強とかしてないの?」「ああ、まったくしてない」「家臣団は?」「家臣団?」「そう、男爵が軍備に金かけてなくても家臣がそれぞれに有事対策してたら、結果として男爵軍の強化につながるじゃない」「それもそうか。ヤッチシ、どうなんだ?」「へい、軍務に就いている役人で個人的に金をかけているものはございやせん。いわんや部下に金をかけているものなどいようはすが……あ、お一方。オルバック家の家人で」「ルビレル」「へい。お館様、よくご存知で」「ジュニアの付き添いでこの街にき
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売ったのか、買ったのか

「最善は味方に引き入れる事。次善がオルバック家からの切り離し、最悪でもこの町に出陣させない方策を考えなきゃ」「ほぅ、なかなか面白いことを考える。戦の準備とはこちらの武力を相手より強くすることだと考えていたが、相手を弱くする、か」 ええ!?  こんなの地球じゃ紀元前からの戦略だよ。  何ぬるいこと言ってんの?  ……ああ、カイジョーは今まで傭兵として戦術を考えてればよかったのかもな。  となれば、大局的戦略を考えられる人材を集めるのも大事な生存戦略になってくるぞ。「ところで、妙案はあるのかい?」 そうそう、今はルビレル対策だ。「現当主の信頼は篤いようだけど、ジュニアには疎まれてるんだろう? それを利用しない手はないよ」「面白そうですな。あっしにやらせてもらえませんか?」 面白そうときたか。  いわゆる忍び働きって奴だけど、名前通りに適性があるんだろうね、きっと。「じゃあ、頼むよ。ヤッチシ」「へい」 とまぁ、急ピッチで秋の収穫とその後にやってくる徴税の使者対策を行い、町は嵐の前の静けさをたたえ……られるわけもなく、僕のところに陳情がくる。「なぜ、表の畑にフレイラを蒔かないんだ!?」 と。  そりゃあね、僕も蒔きたいよ。  秋蒔きフレイラ。  だけどさ、男爵の使者くるっしょ。  使者の後には、軍がくるっしょや。  せっかくタネを蒔いた畑踏み荒らされたらやるせないべや。  てなことを懇切丁寧に説明責任を果たして説得したわけよ。  だいたいの人は判ってくれたんだけど、例によって一部反お館派勢力が納得いかないってゴネるんだから困っちゃう。  どうにかなんないもんかねぇ……。「だから粛清してしまえばいいのですよ。町の人口もキャラバンを数えなくとも百二十人になったのですから」 と、しれっとオギンが言う。  そうしちゃう?  いやいや、ダメだって。  なんて悶々としてい
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青天の霹靂

「開けろ! ええい、門を開けんかっ!」 それでハイそうですかと門を開けるくらいなら、こんな態度に出ちゃいないよ。  僕が門の裏で指示を出し、左右の櫓に隠れていたサビーとイラード、シメイとアーシカが姿を現す。  もちろん弓を引き絞り使節団に狙いをつけさせる。  外の様子は上空にいるリリムによって逐一報告が入るから手に取るように判るんだから便利だよ、ホント。  警備の騎士がホルスをなだめ、人夫が逃げ出そうとするのをオルバックJr.が叱咤する。  まぁ、叱咤は門のこっち側にも聞こえてくるけどね。「貴様ら、こんなことをしてタダで済むと思っているのか!?」「まさか、一戦交える覚悟でやってるさ」「なっ、なにっ!?」 こっちは覚悟が決まっている。  でも、あっちは覚悟がついてないようだ。  そりゃそうだ。  代々ずっと百姓は黙って税を納めるものと思っていたんだろうからね。  税を取り立てに来て拒否されるなんて青天の霹靂てなもんだろうよ。  さてさて、問答なんてまどろっこしいので本日は早々にお引き取り願おうか。  僕はシメイに指示を出して威嚇のために荷車に一矢射ってもらう。「こら! 逃げるな! 臆病者!!」 と、声が聞こえる。  リリムの報告を待つまでもなく、人夫が逃げ出したんだろう。  二、三言葉が交わされた後、ジュニアが忌々しそうに「覚えておれ!」 と捨て台詞を吐いで帰っていった。  さ、もう少し屈辱を与えておこう。  僕は念の為集めていた男たちに鬨の声を上げさせる。  勝ち誇って見せたのだ。  これできっと次に来るのもオルバック家になる。  それも大将にジュニアを立ててさ。  功立て名を挙げてこそ騎士ってもんだ。  辺境の集落から税を取り立てられずに逃げ帰ってきたなんて、こんな不名誉ないからね。  騎士の名誉ってのはこの世界でも重要だろ?
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天の配剤

 完全に見えなくなるのを確認させてから、次の指示を出す。  畑に木の置き盾を設置するのだ。  障害物としてね。  戦闘になったらどうしても被害は覚悟しなきゃいけないんだけど、できればあんまり畑を荒らされたくない。  こうしておけばホルスで荒らされることはなくなるんじゃないかと思ってさ。  もちろん味方の盾としても使うんだけど。「ジョー」「何か?」「次に来るのは何日後になるかな?」「ホルスを飛ばして片道五日……そうさな、十四、五日ってところか」 また僕の誕生日くらいか……。  呪われてんのか? 誕生日。「じゃあ、明日から十日間はいつも通りに過ごしてもらおう。クレタとカルホに回覧板を作って回すように言ってくれ」「かしこまりました」 と、その場を後にしたのはザイーダ。  残りのメンバーはじっと僕を見ている。  ?  なんか言わなきゃダメ?「念の為、今日は見張りを四人にして、明日以降通常の二人体制に戻す。解散」 さて、そのいつも通りの十日ってのもダラダラできるわけもなく、フレイラを脱穀したり粉に挽いたり(用水路の水車大活躍)、保存食の仕込みをしたり雑木林で木の実やキノコを採集したりと、まぁ主に食い物周りで大忙しなわけだ。  他には裏の畑の拡張もする。  今年の表の畑はフレイラを秋蒔きできないから、少しでも開墾しとかないとね。  あっという間に十日が過ぎて、十一日目は休息日にした。  肉体労働で疲れた体を休ませて、決戦に備えるためだ。  十二日目からは櫓の見張りを四人に増強しての戦時体制に突入。  十五日目、まだ来る気配がない。  そして、僕の誕生日である十六日目、ついにオルバック軍が姿を現した。  チッ、やっぱり僕の誕生日に事件は起きるのか。(呪われてる?)(どうかしらね?) リリムにははぐらかされたけど、どう考えても天の配剤ってやつじゃねーの?
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緒戦、所詮はボンボンが頭のボンクラ軍さ

 とにかく今は対オルバック軍に全力集中だ。  まず、物見の報告によると、軍勢は想定より多い十八人。  うち弓兵が五人、剣兵が六人、ホルスに騎乗しているのが七人だそうだ。  ちょっと多いな。  騎兵は四、五騎の予定だったんだ。 …………。 誰かの助言を受けている節があるな。(リリム)(なに?)(ルビレルはいるか?)(いないみたいね) それは朗報。  僕は前回同様の四人を櫓に登らせ、騎兵に狙いを定めるように指示を出して矢を射らせる。  まだ緒戦。  ここで消耗品を無駄撃ちさせるなんて愚の骨頂だ。  少数精鋭で撃たせて有効射程内で三騎を射落す。  優秀。  流れ矢に当たった剣兵が二人。  騎兵に気を取られている間に相手の弓兵が射程に入ったようで、矢が飛んできた。  四人は素早く標的を弓兵に変更して一人を射殺し、三人を負傷させて射程の外に追い出したようだ。「退け! 撤退だ!」「退くな! これ以上オレに恥をかかせる気か!!」 それはいくら何でも酷ってもんだよジュニアくん。  地の利はこちらに一方的だし、不用意に接近したせいで先制を許して早々に死傷者出しちゃってるじゃない。  勝ち目はないんだよ。  冷静に考えることだね。  あー……いや、ここで冷静になられても困るから、もうちょっと煽ってやろうか。「これ以上恥をと言われるが、これ以上恥のかきようがあるのか?」 さん、はいっ!  門の内側に集まっている男たちが笑い囃し立てる。「ぐぬっ……言わせておけば……」「若っ! これ以上は若のお命に関わります。ここは一旦退いてくださりませ!」 誰だろう?  冷静な判断ができてるやつがいる。  ルビレル以外にも人材がいるのか。  僕は櫓に繋がっている糸電話で声の主の生け捕りを指示する。「難しいと思いますけど、やってみよう」
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