All Chapters of Lv1・Maxからのまちづくり: Chapter 101 - Chapter 110

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第101話・母の心配兄の心配

 チキンを飲み込んで、ぼくは「アナイナへ」と書かれた封筒から手紙を取り出した。『アナイナへ。 お兄ちゃんが追放処分された時、絶対あなたは何か仕出かすと思ったけど、まさか町を出て行くとは思いませんでした。 未成年が町を出ることの大変さをあれだけ口酸っぱく教えたのに。 でも、あなたは一年町で待ったとしても、結局はお兄ちゃんを追って出て行ったでしょうから、同じことだろうけど。 何処かの町に受け入れられたそうですね。どこの町かは聞きません。 だけど、お兄ちゃんの迷惑にだけはならないように。お兄ちゃんは生きていくだけで精いっぱいなのに、あなたまで入ったらお兄ちゃんはきっと無茶をするから。だから、あなたは一歩引いて、お兄ちゃんの邪魔にならないようにしなさいね。 そして、幸せに暮らしてください。 お母さんもお父さんも、望むのはあなたたちが幸せに生きることです。 今は生きるのに精いっぱいでしょうけど、いつか、大切な誰かと一緒に幸せに暮らしてください。何かあったら手紙を送ってね。本当に、あなたたちはいい町に救われたのね。 元気で、病気をせずに。 母より。』 う~ん、さすがアナイナとぼくのお母さん。ぼくらのことがよく分かってるなあ。アナイナが放っておいても出て行ったことと、ぼくが結局アナイナを見捨てられないのもお見通し。「子ども扱いしてるよね」 ちょっと不満そうに、アナイナ。「実際子供だろ。あと半年ちょっと」「そーなんだけどさ」「お前は何がしたいんだ?」「え?」「成人になったら何をしたいんだ、って聞いたんだよ」「成人……大人かあ……」 ちょっと考えて、にっこり笑うアナイナ……。「お兄ちゃんと一緒にいる!」「違う」 ため息が出るぼくを、誰も責められないと思う。「何の仕事をするか、ってこと」「お兄ちゃんの手伝い」「無理」 単純に考える妹発言を切って捨てる。「ええ~?」「どんなことやってるか知りもしないでぼくの手伝いなんて言わないの。ただでさえぼくが足引っ張ってるようなものなのに、これ以上足手まといは増やせない」「お兄ちゃんが足手まといー?」「そう。政も知らない、他の町のことも知らない、町を豊かにするには何が必要かも知らない。ぼくがこの町の町長なのは、ひとえにスキル「まちづくり」のおかげ。でもスキルに頼り切りだ
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第102話・将来の為に

「料理?」 小首を傾げるアナイナに、クイネは太い声で笑う。「自分みたいに食堂を始めるというのもあるし、何処かへ嫁に行くか婿をもらうかにしても美味い料理が出来るとそれだけで立場は上になるぞ。それに、町長も喜ぶ」「なんでお兄ちゃんが喜ぶの?」「町長の仕事はほとんど会議堂だろう?」 うん、と頷くアナイナに、クイネは笑いながら続ける。「食堂まで来れないからヴァリエが出前してるわけだが」 チラッとクイネはヴァリエを見る。さっきの接客態度で散々叱られたヴァリエがふくれっ面で立っている。「あんたが町長の好物を作って持っていったら、町長は喜ぶだろうし役にも立つ」 ふくれっ面がどんどん進行しているヴァリエと、目のキラキラが倍増しになっているアナイナ。おーい。「そっか! わたしがお料理作れれば、お兄ちゃんが食堂まで行かなくて家に帰ってきてくれることにもなるんだ!」 エキャルが目をすがめてアナイナを見ている。「そっか、そっか。お兄ちゃんと一緒にご飯食べれるし、お兄ちゃんに差し入れって持ってくことも出来るんだ!」 何か嫌な予感がしなくもないのだけれど、アナイナが目的を持ったならいいことだ。「店長!」 ついにヴァリエが口を挟んできた。「私には料理を教えてくれないのに、どうしてアナイナには教えるのですか!」「あんたは人の話を聞かない」「え?」「下拵えも、切り方も、調味料の分量も、一度でも自分の言う通りにしたことがあるか?」「し、してます!」「あれをしていますと言うなら、自分は相当教えるのが下手なようだ」 ……ヴァリエは料理が下手……と言うわけじゃないなあ。この分だと。本当に何も聞かず自分の感覚だけで料理を作って、料理が料理じゃないものになっていくんだろうなあ……。「町長、アナイナは料理は?」「お母さんにも教わってたし、学問所でも基礎は学んでいるから出来ないってことはない、はず」 料理とか、学問所の勉強とか、一度上手くなると決めたアナイナは、かなりの集中力を発揮するし、ヴァリエより人の話を聞くという能力は上……な筈。「なら、やる気さえあれば上手くなるだろう。どうだ?」「やる! じゃない、やります! 教えてください師匠!」 知らないことを教えてくれる人を尊敬し、学ぶという姿勢は学問所の時からあった。そしてクイネ
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第103話・厄介な才能

 子供たちが学問所に通うようになってから、各所の子供関係問題は消えていった。 畑や牧草地で走り回って収穫物をダメにされたり、火の入っていない窯に忍び込んで危ういことになったり、そういうことはまるっきりなくなった。 うん、やることがないとろくでもないことしでかすのはどこの誰でも同じ。 アナイナは町長の妹で一番年上と言うことで、子供たちのリーダー格になっていた。と言っても子供たちを率いて何かやる訳でなく、むしろ今まで受けたことのない授業に退屈して遊びだす子供を窘めたり喧嘩の仲裁をしたりと忙しいらしい。一度授業を見に行きたいね。 で、アナイナはプラスして料理も習っている。 週三回食堂に通って、下拵えから学んでいるそうだ。 基本的にアナイナは一度始めたら極めるまで諦めないという、悪い方に向かえばヴァリエ以上のストーカーになるけどいい方に向かえばグランディール一の努力家になる性質を持っている。料理を習う目的はぼくに好かれるため……うん、兄妹とは言え目的はヴァリエと変わらない……だけど、料理にその性質を振り分ければ、師匠のクイネの技を全部覚えるまでやるだろう。それに自分流のアレンジも加えて。 ……アナイナは、ぼくが大好きで大好きで何をするにもぼく優先と言うブラコンなところさえなければ、興味を持ったものを完璧に学ぶまで決して投げ出さない努力型の天才なんだよなあ。 どんなスキルが目覚めたとしても、それを有意義に使えるだろうし。 思えばぼくが「まちづくり」のスキルを使い始めたのも、アナイナの提案なんだし。それを考えると発想力もあるかな。 可愛くて勉強が出来てダンスとか芸術系も得意で、彼氏の一人や二人いてもおかしくないと思うんだけど、残念ながらアナイナの彼氏は、ぼくが知っている限り一人しかいたことがない。 ある日、アナイナが五歳くらいの時か、「かれしなのー」と学問所の同級生を連れてきたことがあった。 家族全員笑顔で出迎えて、ちやほやしてたらアナイナが自分から彼氏を追い出した。 「なんで?!」と聞いたら、「おにいちゃんはダメって言わなきゃダメなの! アナイナはおにいちゃんのだからダメって言わないとダメなのー!」と大泣きした。 要するにぼくに嫉妬させたかったんだ。 彼氏は泣いて家に帰って、アナイナはぼくに縋りついて大泣き。あれは一種の修
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第104話・町の魂

「????」 更に訳が分からないという顔をしているぼくに、ヴァダーは肩を竦めた。「この町は、お前の引きでもってんだよ」「あの」「分からないか? お前、人に関する引きはいいんだ」「引き?」「そう、引き。なんだかんだ言ってアナイナは色々出来るヤツってのはお前も認めてるだろ?」「うん、まあ」「その直後に出会ったのが俺たちで、俺たちからサージュとファーレ夫妻」「うん」「シエルのおかげでスピティに納められる家具を作れたし、そこでポルティアと出会ってデレカート商会とトラトーレ商会って二大商会と取引が出来た。その帰りにアレやリュー、ヴァローレみたいなめっちゃくちゃ有能な連中がいる盗賊団を引き入れた。普通ここまで都合よく必要な人材に連続で巡り合えるなんてことはないぞ」「でも、次に会ったのがピーラーとデスポタじゃないか」「でも、外れじゃないだろ」「外れだろ?」「いや。むしろ当たりだ」 ヴァダーは空中を走る水路を見上げながら説明を続ける。「ピーラーの無茶な注文にこたえたおかげで家具の町グランディールはその名を馳せた。デスポタからはクイネやピェツと言った有能な人間をごっそりいただけた。被害は町長が頭を殴られたくらい。……まあくらいっって言っちゃなんだけどさ、それだけで町は大きくなった。違うか?」「詭弁のような気がするんだけど」「でも事実だろ」「事実っちゃ事実だけど」「一人の追放者がスキルがあるとはいえ一年もたたずにCランクの町を造るなんて、普通あり得ないだろ。お前の才能って言うか運って言うかがなければ、グランディールは文字通り空中崩壊しててもおかしくなかった」 ヴァダーは水路から時折落ちてくる水滴を、指先で弾きながら言葉を続ける。「なんでかは分からないけど、お前はグランディールを造るために生まれてきた気がするよ」「スキル「まちづくり」があるから上手く行ってるだけだよ。ぼく自身はほとんど何もしてない」「これはサージュの受け売りだけどさ、町には魂があるっていうんだと」「は?」「そもそもスキルを持てるのは自我と魂を持っている存在だけだって言う。なら、町スキルを持っている町って言う存在は魂を持っていてもおかしくない。スキル学にはそういう魂論があるって言ってた」 確かに……人間以外でスキルを持っているのはごく一
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第105話・怪しい影

 エキャルを頭に乗せて戻るけど、なんだかエキャルがおかしい。 そわそわしているというか。 今までぼくの頭に乗ってきた時は頭の上でまったりと落ち着いているのに、何か伸び上がったり位置を直したりと落ち着きがない。「エキャル? どうしたの?」 エキャルが長い首を伸ばして、ぼくの顔を逆さに覗き込む。「?」 黒い潤んだ瞳が、困ったような、悩んでいるような感じで、こっちを見ている。「……何かあったのか?」 当たり、のようだ。瞬きしてこっちを見てくる。 思えば、昼休憩から呼び戻すのにわざわざエキャルを使うというのはちょっとおかしい。 今までも似たようなことがあって、サージュかアパルが呼びに来たことは何度もある。エキャルが来たからと言って、そんな所で手を抜く二人じゃない。 エキャルが二人の言うことを聞いてこんな簡単な仕事をわざわざ引き受けることも、まず有り得ない。エキャルは結構プライドが高い。昼が終わったから呼んできてくれなんて仕事は引き受けない。おまけに走り書きで「休みは終わり」と書かれて。「……厄介事の気配がするな」 「休みは終わり」。サージュの走り書き。エキャルが来ればもう終わったかな、と思えるだろうに。わざわざそんなことを書くということは。「エキャル、肩の方留まって」 何かあった。間違いない。 ぼくは心の中で町長の仮面をつけて、若き町長の顔になって会議堂へ戻った。「戻った」 ぼそりと言って、大会議室へ入る。 サージュとアパルが振り返る。 空気が固いのを肌で感じられる。この二人がここまで警戒する何かがあったんだ。 そして、見慣れないものがひとつ。 伝令鳥。 エキャルではもちろんない。トラトーレやデレカート所有の伝令鳥でもない。これまで見た伝令鳥の中でも少し色が浅い。 グランディールにやってきた、持ち主不明の伝令鳥。「町長」「何処からの鳥だ?」 既に町長モードに入っているぼくを確認して、アパルが言った。「エアヴァクセンからです」 表情には出ない。声も出さない。でも、ぼくはかなり驚いていた。 エアヴァクセンから? あの町から手紙が届くなんて、ないはずだ。 グランディールがファヤンスを吸収したという報は、当然、町長《ミアスト》の耳にも入っているだろう。だけど、それでわざわざ伝令鳥を送ってくるか? 町の取引
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第106話・裏にいるミアスト

「追い出しておいて何を今更」 ぼくは鼻で笑った。 ぼくのスキル名はミアストも知っている。「まちづくり」。ただレベル上限が1だということで追い出しておいて、役に立っていそうだから連れ戻す? 図々しい。同じ町長として情けない考え方だとしか思えない。「とはいえ……放置はできないね」「ご両親が人質に取られているようなものだからな」「この文字でわかるけど」 ぼくはお父さんの手紙を指した。「明らかに歪んでいる」「強制的に書かされたか、あるいは危機を伝えているか」 どちらにしても、二人はミアストの監視下にあるだろう。「……どうする?」「まだミアストはぼくを舐めてかかっている」 サージュの問いに、ぼくはシエルがデザインした椅子の背もたれに体重を預け、目を閉じる。「お父さんから手紙が来れば、素直に町の名前を教えると思っている」「……ああ」「それが不愉快だ」 ぼくは言い放った。ここにいない奴に向かって。「多分、あいつの頭の中のぼくは追い出された時のまま。親がいないと大したことも出来ない子供のまま」 怒りか。怨みか。憎しみか。自分でも分からない感情に振り回され、デスクに置いた拳が震える。「そんな子供を、一度は切っておいて、役に立ちそうだからと親を使って呼び戻そうとする。それが許せない。同じ町長として」「ほう?」「町として連れ戻したいなら町長の名前を出すべきだ。町長が連れ戻したいから、と言えばいいのに、それを伝えずただ町の名を伝えろと」「どんな町であってもSSランクとは比べ物にならない、そう思っているな」 サージュの言葉にぼくは頷く。「どんな町であってもエアヴァクセンの名を出せばぼくを連れ戻せる、そしてぼくがSSランクの町に帰って来れると知ったならすっ飛んで帰ると思われてるんだ」 それが、ムカつく。「エアヴァクセンが何だってんだ。グランディールはCランクではあるけれど、エアヴァクセンと正面から勝負して勝つ自信がある。家具、陶器と言う名産があり、住民の望みの家が建つ。水に覆われ守られた空飛ぶ町。どこにもエアヴァクセンに負ける要素がない」「だが、まだグランディールを知らせるべきではない」 サージュが眉間にしわを寄せて呟く。「グランディールが全く無名からスタートして、家具の町で、ファヤンスを取り込んだことで陶
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第107話・アナイナの決意

 ぼくは「町の人に言うなと言われたので言えません。どうしてもと言うなら理由を聞けと言われました」と言う返事を色の薄い伝令鳥に持たせた。 伝令鳥が門の方に向かうのを見送る。「あの伝令鳥も罠の一環かな」 呟いたぼくに、アパルが視線で問うてくる。「ぼくの両親が伝令鳥を借りて使ったかのように思わせるため」「だとしたら、敵はあまりにも町長を知らない」 アパルは呆れたように首を振る。「まだただの子供だと舐めているんだな」「そう。甘く見ている。このぼくを」 ミアストの中では、まだぼくは物知らずの子供のままなんだろう。 SSランクの町に居残れることを祈っていたのに、レベルが足らず追い出された子供。放浪して野垂れ死んでいるはずだったのに、何処かの町に拾われ、そこで親切にされている。 ミアストの中で町が放浪者に親切にするのは理由があることになる。恐らくは、追い出した子供のスキルが町の役に立つものだから拾われたのだと。 だとすれば、その所有権は子供が生まれたエアヴァクセンにあるはずと。 何処までも図々しい。 追い出しておいて、今更? お父さんお母さんの身柄まで確保して? エアヴァクセンを潰すことは最初からぼくの中では決まっていたけど、今はミアストを痛い目に遭わせてやりたい。人を舐めてかかるのもいい加減にしろと、そう言ってやりたい。 何とかエアヴァクセンから両親を引き離し、グランディールじゃなくてもいいから安全な場所へ置きたい。 とりあえずアナイナには話しておくべきかな。 久しぶりに家に戻ると、色々料理で試行錯誤中なアナイナがいた。「お兄ちゃん!」 ぼくを見てパッと顔が輝くけど、そのぼくの表情が暗いのに気付いて不安そうになった。「……何かあった?」「あったって言うかなんて言うか……」 テーブルに向かい合わせに座って、ぼくは服の内側から手紙を取り出した。お父さんの手紙だ。「町のことを言え? どういう意味?」 意味が分かりかねる、と言う顔。「ぼくを連れ戻したいらしい」「はあ?!」 この一言で、アナイナも怒り全開モードに突入した。「お兄ちゃんを追い出したのは町長でしょ?! 追い出しといて連れ戻したい?! どーゆー神経してんのよあのおっさん!」「全く同感だけど、お父さんお母さんが人質に取られているようなものだ
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第108話・エアヴァクセンとのやり取り

 数日後、再びあの伝令鳥が来た。 何処か不健康に見える浅い色の伝令鳥は、ぼくの顔を見て足を突き出す。ぼくの後ろの止まり木ではエキャルが羽根を広げて余所者を威嚇する。 ぼくは封入れから手紙を取り出して広げた。 『町の人に何か口止めされているのか? 父さんにも言えないことなのか? 父さんはお前たちが心配だ。町長もお前たちのことを心配している。一度帰ってくることは出来ないのか? エアヴァクセンのミアスト町長の名を出してもいいと仰ってくださっている』 プチっと切れたのは、ぼくの血管……じゃなくて、会議堂にいたアナイナだった。「お前たちって、お兄ちゃんだけなんでしょっ! お兄ちゃんのスキルが欲しいんでしょっ! お父さんを口止めしてんのあんたでしょっ! お父さんに言うとあんたに筒抜けなんでしょっ! 何か一度だ、一度帰ってきたら二度と出さないつもりのくせにっ!」 足でどがどがと床を踏み鳴らし、怒り狂っている。 怒りの暴走はアナイナに任せて、ぼく、アパル、サージュは顔を突き合わせる。「やっぱり町と町長の名を出してきたな」「自分で追い出しておいて、心配してるも何もあったもんじゃないが」 ぼくは我ながら歪んだ笑みを浮かべた。「引っ掛けてやりたい気分になってきた」 そして、アナイナと話し合った作戦を説明した。 アパルもサージュも渋い顔。「言いたいことは分かってる」 ぼくは腕を組んで目を閉じた。「だけど、町長がぼくだと知られたら、あの男は、絶対ぼくごとグランディールを併合する。両親の安全と引き換えにね。そしてグランディールを完全に併合してもぼくは手放されない。両親とアナイナを人質に、アパルで失敗した自分だけの理想の町づくりをさせるだろう」「グランディールに不安要素は作りたくない。特に町の要である町長を奪われることだけは何としてでも避けたい」 サージュが唸る。「そのためには……アナイナ発案のその作戦が確実……と言うか今のところ我々が取れる唯一の最善の作戦だ」「もちろん、両親に何かスキルが仕込まれている可能性もある。ヴァローレも連れて行かなければならない。ヴァローレの「鑑定」なら仕込みを破る方法も出て来るからな」 ぼくは無意識の内の髪の毛をグシャグシャにしていた。「ぼくは……行けない」「ああ。行ってはいけない」 サージュが
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第109話・最悪な町(アナイナ視点)

「ここね」 わたしは馬車を飛び降りた。「約束の場所まではここからわたし一人で行くわ」「分かった」 馬車は街道の真ん中で方向転換して来た方向に帰っていく。 それを見届けて、わたしは行くべき道を歩き出した。 懐には手紙。お父さんから、と言うよりは、お父さんの後ろにいる誰かさんからの手紙。 『お前だけでも帰ってきておくれ。お前がいればお兄ちゃんも帰ってくるだろうし、お母さんもお前の心配をしているよ』 こんな手紙、お父さんが書くはずがない。 何かあるとお兄ちゃんに泣き付いていたわたしに、「お兄ちゃんといずれ別れる時、お前はお兄ちゃんに好きでいてもらいたいのかい? 嫌われたいのかい?」と言ったお父さん。そんなお父さんが、わたしがいればお兄ちゃんも戻ってくるだろうだなんていうはずがない。お父さんが書くとしたら、「お兄ちゃんの邪魔にならないよう帰って来なさい」だ。 家族舐めんなよ、町長さん。 それくらいの区別はつく! ぷんすかしながら歩くけど、待ち合わせの場所が近付いてきたから、少しスピードを落とす。 少し不安そうな顔で。誰も居ないのが怖いような顔で。 そこへ、見覚えのある服装が見えた。 五人の男たち。緑と白を組み合わせた制服、手には銀色の槍。エアヴァクセンの衛兵服。「何者だ!」 何よその言い方。グランディールじゃソルダートやキーパが笑って出迎えてくれるのに。でも。 わたしは、ほんの少し怯えた顔をした。「ご、ごめんなさい!」 悲鳴を上げる。 ついでに泣きそうな顔。「ここに来れば、お父さんが待ってるって聞いて……!」「アナイナ・マークンか?」「はい、アナイナです……」 怯えた声で恐る恐る頷くと、衛兵が辺りを見回した。「お前たちを拾った町の人間は? ここまで来ていたのか?」「急ぎの用があるからと向こうでわたしを下ろして行ってしまいました……あの、お父さんは」 チッと舌打ちをした衛兵に、感じる不愉快。「父親はこっちだ。ついてこい」 町民じゃなく、町長に仕えてるんだって分かる偉そうな態度。 グランディールで迷子の子供を見つけた人は、もっと優しく手を握って連れてってくれる。 もちろんわたしは迷子になる年じゃないけど、迷子を連れて行ったことは何度もある。子供は周りの大人が守ってあげなければいけないとみんなが思って
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第110話・町長とお父さんとお母さん(アナイナ視点)

 馬車で連れられて戻った故郷を見回すことも、両親の所にすら連れていかれず、わたしは会議堂へ連れていかれた。 そこにいたのは、まずミアスト町長。 それから、鑑定師。 成人式でお兄ちゃんのスキルを鑑定した、町でも有数の鑑定師……らしいけど、その人の名前は誰も知らない。顔も知らない。フードを深くかぶって顔を隠しているから。 あとは……知らない人が三人ほど。 まずわたしに会うのは、両親じゃなくてミアスト町長と、わたしを調べるスキル持ち数人だろうって、サージュは言ってた。 驚くほどにサージュの読みは良く当たるね。 それとも、そうじゃなくて、ミアスト町長たちが考え読まれやすい単純な性格ってこともあるかもだけど。 さて、ここでわたしがやることは。「アナイナ・マークン」 ミアストがえらそうな顔をして見下ろしてくる。 椅子に座らされたわたしは、怯えた顔でミアストを見上げる。「……はい」「……どうして町を抜け出した?」「お兄ちゃんが……出てっちゃったから……」「だから後を追ったと?」「はい……」「……で、どの町に拾われた。どこにある町だ」「・・・・・・・」「何?」「・・・・・・・!」 言葉にしようとするけれど、言葉にはならない。 何度か口をパクパクさせて、喉元を抑えて叫ぶように「グランディール」と言うけれど、言葉は声にはならない。「どうだ」「嘘はついていません」 多分嘘を見抜くスキル持ちが首を振る。「そして、声にならないのも事実です」「何かのスキルか」 ミアストがもう一人を見る。「はい。言葉や行動を制限するようなスキルに影響されています。恐らく町のことを何か言ったり書いたりしようとすると制限されるのでは」「内容を知ることは出来ないのか!」「残念ながら……」 ギリギリとミアストが歯ぎしりする。 ふん。せいぜいいろんなスキル試して見なさいよ。あんたが言うこと聞かないって追い出したアパルは、SSランクの町エアヴァクセンでもスキル効果を排除できない実力者だもんね。「・・・・・・・、・・・・・・・・・。・・・・!」 わたしは一生懸命説明する。グランディールがどんなに立派で安心な町か。どんなに自慢できる町か。町の人たちがどれだけ町を好きか。 でも、それは言葉にならない。頑張って声にしようとしても声にならない。 それでいいの
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