All Chapters of Lv1・Maxからのまちづくり: Chapter 161 - Chapter 170

193 Chapters

第161話・正反対な二人の町長

 それから町民総がかりのお説教が始まった。 自分たちを心配させるな。他の町に力を貸すのもいいけど自分自身のことを考えろ。何でグランディールの町長がスピティのことに首突っ込んでぶっ倒れるんだ、等々。 そしてぼくは……反論できません。はい分かってます。ぼくがいらんことしいだったために勝手に倒れて一週間動けなかったんですよね! はいぼくですぼくが悪いです! ぜーんぶぼくが悪いです! と開き直ることも出来ず、許されるまで正座でお説教聞きました。ぼくもうアナイナのこと言えないよ、ぼくが絶対的に悪いんだから! 年長組は何となくやれやれ的な雰囲気でこっちを見てる。 たっぷり一刻はお説教されて、そして足はしっかり痺れました。 痺れて動けないところをわっしょいわっしょい運ばれて、半分ぼくの家化している会議堂の仮眠室に放り込まれて、やっと解散。 ぼくは痺れたまま取り残されました。「町民の総意は分かったか?」「……はい……」 サージュの言葉に、はい、以外に答えられるわけないだろ。「みんなこの一週間、お前を心配してたんだ。まだ言いたいことがあるだろうにここまでで解放してくれたんだからな」「…………はい…………」 しゅーん。「反省してます……」「なら大人しくしてろ。しばらく町長の仕事はないから」「え?」「町民が手分けしてやることになってるから」 サージュはドアを閉めて出て行った。 いっそ仕事があったほうが良かったんだけどなあ。 ベッドにゴロンして溜息一つ。 仕事で忙しくしていれば、余計なこと考えることなく頑張れたのになあ。 部屋で大人しくしてると、自分の馬鹿さ加減を思い知らされて頭を抱えたくなってくる。 スピティのフューラー町長が言った「与えてくれ」は、方法であって、何も丸々任せるって意味じゃなかったんだ。 それを勝手に暴走して作ったのはぼく。 そしてぶっ倒れて寝込んで一週間も滞在する羽目になったぼく。 それでグランディールにもスピティにも心配かけて。「エキャル~?」 空中に声をかけると、少しして窓をつつく音。 窓を開ければ入ってくる緋色の鳥。「エキャル~」 エキャルラットは嬉しそうにぼくの周りを飛び回る。「エキャル~、みんなに怒られちゃったよ~」 緋色の体を抱きしめて頬ずりすれば、ふかふかの肌触り。 鳴かない鳥
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第162話・一番になりたい男

 スヴァーラはモルに頷いて、町長室の何も飾っていない真っ白な壁に手を当てる。 スヴァーラのスキル「鳥観図」。スキルで支配下に置いた鳥の見たものを映像として投影できるスキルだ。それだけでなく、映像を保存して移動することも出来る。ミアストの目として便利に使われている。 そのスヴァーラが投影したのは、スピティの斜め上からの景色だった。「……何……?」 町の中心から水が一筋吹きあがり、真ん中から放射線状に流れて行く。そこから枝分かれして、水汲み場や畑や湯処に流れ込んでいる。 以前スピティのフューラー町長はこう言っていた。 水量は十分に作れる。だが、それをどう廻せば不平等ではないのか、文句が出ないのか、そもそも水路が作り辛い町なので、困っていると。 この空の水路は、それを全て解決している。「これが……グランディールのスキル技術だと……?」 空から水を流せば、複雑な水路を考える必要もない。たっぷりの水量が何処から何処までも平等に流れている。「はい……グランディールから人を呼んで、そのコツを教えたとか……それが上手く行って、空からの侵入者も過度な雨も熱波も防げるようになり……」 モルは絞り出すような声で告げた。「スピティはグランディールと永遠の友情と信頼を誓う彫像を中心の水汲み場の傍に据えたそうです……!」「くそっ!」 ミアストは立ち上がって、取り替えたばかりの椅子を蹴り飛ばした。 元々作りが甘かった椅子はバラバラになる。 スピティから取り寄せた椅子は五回ほど蹴らないとひびどころか歪みも入らなかったのに。 エアヴァクセンの職人に作らせた家具は地味で弱くて脆い。スピティや、噂に聞くグランディールの家具は見事なまでの美しさと堅固さを兼ね備えていると言うのに。エアヴァクセンには。 腹が立って、壊れた椅子の残骸を踏みつける。踏んで、踏んで、バラバラになるまで踏む。「何故だ、何故だ、何故だ!」 続いては絶叫だった。「何故グランディールはそれをスピティに教えた! 教えるならば生まれ育ったこのエアヴァクセンだろうが! そのようなスキル技術はSSランクに相応しいだろうが! 恩知らずのクソガキが!」 ミアストが叫んでいる間、モルは浴びたお茶を拭きもせず小さくなり、スヴァーラはその後ろに隠れていた。 ハーッ、ハーッと肩で息を
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第163話・原因と結果

 スキル技術のコツというには乱暴だが、要は、必要なスキルを揃えればいいだけなのだ。 この場合は、恐らくは水を生み出すスキル、増幅させるスキル、操るスキル。最低この三つのスキルがあればできるだろう。あとはちょっとした「合わせ」。その感覚さえつかめば、エアヴァクセンレベルの広さの町でも水路天井が作れるはず。 だが、ミアストは、自分の手でそれをやるのが気にくわない。 下の町にやらせてこそ……いや下の町が喜んでやらせてくれと言わせてこそのSSランクだと思っている。 実は、ミアストには焦る理由がある。 最近、エアヴァクセンの中で広がっている噂。 エアヴァクセンがランクダウンしたのではないかという――。 エアヴァクセンには多くの鑑定師がいる。細やかな決まったものしか鑑定できないものから人や町の鑑定も出来るものまで。 しかし、最近ミアストは鑑定士を近付けていない。 成人式すら代理を送って欠席する。 あそこまで新しい鑑定士が生まれるのを待ち望んでいたミアストが鑑定士を近付けないとは、つまり、そういうことなのだろうと。 ランクダウンを告げられるのを恐れているのではないかと……。 そして、この町の中で極……極一部の人間だけは、知っている。 噂を気にして、ミアストが焦っているということを。 長くSSランクにいたエアヴァクセンを、自分の代で落とすわけにはいかない。そんなことをすれば、自分は最悪の町長だと歴史に刻み込まれてしまう。 それで、あの手この手でランクを上げようとしているのだ。 詐欺行為もスキル技術を欲しがるのもそのため。ランクが上がりそうだと思えばどんなことでもやってきた。傍から見れば、どう考えてもランクが下がるのではという行動を。 ミアストが町鑑定のスキル持ちに聞けば、ランクを上げる方法を教えられたかもしれない。スキル学を学ぶ人間が傍に居れば、今自分のやっていることがから回っていると知れたかも知れない。 だけど、エアヴァクセンには、それが間違っていると言える人間がいない。 ミアストに警告できる立場の人間がいないのだ。 唯一出来た人は既に故人。 名町長だった祖父、レイター・スタットは、孫に町長としてのイロハを教え込んだ。常に孫を連れ歩き、町長としての在り方を見せていた。 だからミアストは、名町長に向ける町民の視線を知
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第164話・囚われ

「……下がれ」 ひとしきり怒ってから、ミアストは二人に告げた。「……失礼します」 スヴァーラは一礼して部屋を出る。モルは続かず、ミアストの元に駆け寄る。 この後は分かっている。モルがミアストをおだてて褒め称えて慰めるのだ。貴方こそが一番の町長だと。グランディールのガキなんぞに負けるはずがないのだと。 これがあるから、ミアストには後悔や反省がないのだ……。 しかし、誰もそれを言えない。 まずモルにぶん殴られる。そしてミアストによって追放される。 いくら転落の坂へ向かっているとはいえ、SSランクの町は施設も住み心地もいいのだ。上層部、富裕層と呼ばれるランクの人間になるとその恩恵も大きいので、ミアストの機嫌を損ねることは誰も言わない。 そして、ミアストに会う機会もない下級層は、何も言わず自ら姿を消す道を選ぶ。戸籍はエアヴァクセンのままなのだから、もしかしてエアヴァクセンが持ち直した時はそのまま戻ることが出来る。安全な場所からエアヴァクセンの進路を見届けることが出来るのだ。 だから、誰もミアストに何も言わない。 スヴァーラ……スキルの便利さでミアスト直属として扱われ、あちこちの町にミアストの目として派遣されているスヴァーラは、誰よりもこのエアヴァクセンの危機を知っている。そして、何もできないことも……知っている。 スヴァーラは確かに高いランクの人間として扱われている。でもそれは、便利な道具としてだ。「鳥観図」という、目で見える「情報」をそのまま手に入れられるスキルは、貴重で便利。どの町も欲しがる。だからミアストは自分の傍から手放さない。こんなスキルを持っているエアヴァクセン、そしてその町長である自分、だから自分は偉い、尊い。そう思わせるためだと、スヴァーラは分かっている。 だから、出られない。 モルと一緒に行動しているのは、ミアストが命じたからだ。 もちろん、スヴァーラが他の町に逃げないように。 逃げ出す気もなくなるほど、常に傍に居るようにと命じられたモルは、風呂とトイレ、ミアストの傍に居る時以外は異様なほどついてくる。 任務で離れる時は、愛鳥オルニスがモルの所に残される。人質ならぬ鳥質だ。 その鳥質の元へ帰るために、スヴァーラはミアスト邸の中にあるモルの部屋に行く。 ドアを開けた瞬間から、ピィ、チチッと嬉しそうな鳴き声が聞こえた。
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第165話・傷付いた小鳥

 門から入って来たエキャルは、何かを背中に乗せているようだった。 伝令鳥は普段は首筋に封筒をつけて、そこに手紙を入れて送るが、大きいものを運びたい時は背中にくくる。どう見てもその大きさじゃ飛べないだろそれって場合でも飛べる。それでも大きい場合は二・三羽協力する。 でも……ぼくが手紙を頼んで放したわけじゃないし、ましてやエキャルが外から勝手に何か持ってくるなんて今までに一度もなかった。「ソルダート?」 門の方を向けば、膝をついたソルダートが掌に何かを乗せて、そのわきでエキャルが何やら心配そうな雰囲気。「ソルダート」「町長、いいんすか寝てなくても」「OKは出た。て言うより何があった?」「この鳥」 エキャルが心配そうに見ているのは、掌に乗りそうな大きさの、綺麗な色をした鳥だった。「エキャルが背中に乗せて入って来たんだが……」「この鳥を?」 ソルダートの手から綺麗な色の鳥をそっと受け取る。 微かに息はある。ことことと掌に鼓動を感じる。 よくよく見ると、足に小さな足環。その一部分が膨らんでいる。 そっと足環を外す。 膨らんでいる所から、とても小さく折り畳まれた紙が出てきた。 『この子の名前はオルニスです』 細く震える字で、そう書いてあった。 『もう老齢です。拾って下さった方、大事にしてあげてください』「拾って来たのか?」 くん、とエキャルが頷く。「とりあえずティーアの所に行こう」「すいません町長、俺様仕事なんで行けないけど……走ったりしないでくれよ?」「うん。走らない。走ったらこの子……オルニスだっけ? この子の体に悪い気がするから」「ティーアは鳥小屋にいるはずだ。両方とも気を付けて!」 ぼくは肩にエキャルを乗せ、掌で覆うようにオルニスという小鳥を庇って出来るだけ大急ぎでだけど体を揺らさないように急ぐ。 しばらくまともに動いてなかったので、息が上がる。 無茶をしないように、オルニスを守って。 ゆっくり、急いで、会議堂まで。 歩いているのに息が上がるのは、十日以上もベッドの上だったのが原因だろう。体は大丈夫だって医者にお墨付きもらったんだから。 鳥部屋に辿り着き、コンコン、とノックをする。「ティーア、いる?」「いるが……どうした? エキャルなら……」 掌を離せないので肘でドアを開ける。 桃色の宣伝鳥たちが目
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第166話・いったいどこから?

「誰かが、この鳥を痛めつけた……?」 こくりとティーアが頷く。「この手紙と合わせて考えると、このオルニスって鳥は、定期的に乱暴されていたようだ。飼い主は隙を見て逃がしたんだろう。何とか生き延びてくれ、と」 だが、とティーアは唸る。「逃がした飼い主が無事かは……何とも言えない」「え?」「鳥に乱暴を働いたというのは、鳥が飼い主にとって大事で仕方がないものだからだ。その鳥を逃がした飼い主がどんな目に遭っているか……」 ティーアが静かに怒っている理由が、見えた気がした。 飼い主にとって鳥は大事。鳥を痛めつけられるのが耐えられないほどに。それを利用されて、痛めつけられて、飼い主は言うことを聞かされていたんだろう。 でも鳥が大事で、可哀想だから。可愛いけれど、このままでいたら可哀想だから。 せめて、と。 せめて、誰かに拾われることを望んで。 だけど、人質……鳥質? ……になる存在を逃がされたら、脅しているほうが怒るだろう。飼い主に何をしているか分からない。 青い小鳥はふるふると震えている。 ふと、オルニスがここに来た経緯を思い出した。「ねえティーア、聞きたいんだけど」 ティーアが顔を上げてこっちを見る。「鳥が自分から町を選んで逃げてくることって、あるのかな」 ティーアは小さく唸った。「伝令鳥や宣伝鳥であれば……難しくはない。彼らは町の場所をスキルで知っている。何かに追われて安全な町に逃げ込むということは聞いたことがある。だがインコは……」 言葉を一瞬詰まらせ、そして口を開く。「可能性があるとすれば、伝令鳥に助けを求めた時だ」 ぼくはオルニスを見て、エキャルを見て、ティーアを見た。「……鳥同士で意思疎通って出来るの?」「群れで生活する鳥ならば。あるいは……何らかのスキルの影響下にある鳥ならば」 ぼくらは素早く視線を交わし合った。立ち上がろうとして、ティーアに抑えられる。「俺が呼んでくる。お前はあんまり動き回るな」「……分かった」 ぼくは鳥部屋の椅子に座り、ティーアは素早く立ち上がってドアに向かった。 布の中に埋もれているオルニスを見て、そっと指を差しだす。 オルニスは薄く目を開ける。 そして、指先に小さく頭を擦り付けた。「大丈夫だよ」 そっと、声をかけた。「もう君を痛めつけるやつはいない。それとも……飼い主が心
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第167話・鬼

「スヴァーラ?」 聞き覚えがあった。 よくモルと一緒にミアストの後をついて歩いている女。いつも何かを堪えているような顔をした人だった。 そう言えば、ミアストはSSランクの町長の嗜みとやらで使えそうなスキルを集める癖があり、その人……鳥の視界を自分で見るだけじゃなく、壁のような場所に映し出せる能力を、便利だと町民や訪れた他の町の町長たちに自慢していた。「父さん、そのオルニスって小鳥で、何か知ってることってある?」「ああ……親もいいスキルの持ち主でね、スヴァーラさんが目覚めた記念に、小鳥を娘に贈ったと聞いている。それがオルニスだと」「もう一つ聞きたいんだけど」 ぼくの顔を見て、父さんが真剣な顔で見返す。「……何だい?」「その鳥、スヴァーラさん大事にしてた?」「ああ、鳥をもらった直後にご両親が亡くなられたから……最後に残った家族と言ってもいい」 ティーアとぼくは視線を交わした。「最後に残った家族なら……人質に取ることは出来るね……」 呟いて、「ありがとう、父さん、母さん」「クレー」「ん?」 立ち上がった父さんは、ぼくの目の前に来た。「何をやる気かは知らないが」 う。何かやるって思われてる。「無茶だけはするんじゃないよ」 父さんと母さんは真剣な目でぼくを見ていた。「お前は優しい子だ。スヴァーラさんのことを見捨てられないのも分かる。だけど、お前はグランディールの町長だ。お前の双肩にこの町が乗ってるんだからね。お前が一番に考えなければならないのは、この町だ」「……はい、よく分かってます」「約束してくれるね? 前のように、町のみんなを悲しませないと」 ぼくは大きく頷いた。 だって、それは本音だったから。「最大限努力する」 母さんは何か言いたそうだったけど、父さんに腕を引かれて、そっと一緒に部屋を出た。 ティーアとヴァローレがこっちを見ている。「アパルとサージュを呼んできてくれ」 ティーアとヴァローレが頷いて、鳥部屋を出て行く。 無茶はしたくない。して痛い目に遭ったばかりだから。 だけど、助けを求めてグランディールにやってきた、オルニスを見捨てたくはない。 多分、オルニスはグランディールを探してやってきたんだ。 ミアストと真正面から勝負してくれる町を探したら、グランディールしかなくて、来た
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第168話・考えた末

 町の暴力行使は、「まちのおきて」で固く禁じられている。 「まちのおきて」とは、この世界……各町が住民を守る、今ぼくたちが生きるこの世界……大陸にある、全ての町の創世神話にして、町を縛る絶対の掟だ。 基本、各町の法律はこの掟を元に施行されている。掟を破った町、都合のいいように改変した町は天罰……精霊神の怒りの鉄槌が振り下ろされるという。 変えてはならない絶対の掟の一つが、暴力行使だ。 町の力を使って、町や違う町の個人に暴力を振るってはならない。 個人の喧嘩は見逃される。が、町の武力、財力などを使って、他の町の町民に暴力を使ってはいけない。それは罰の対象となる。どんな罰かと言うと、疫病、飢饉、天火、洪水、地震、雷鳴と、色々な形はとるが、その町にストライクで下り、他の町には影響せず、町全体がスキルを「合わせ」ても逃れられないのだという。 なんでそこまで厳しいの、と思う人もいるけど、それは今の世界になる前の世界が暴力……「いくさ」で滅んだからだという。 町をたくさん集めた「くに」があって、「くに」は争っていた。民を奪い合い、土地を奪い合い、「いくさ」が続き。 精霊神は愚かな争いを続ける人間を、見捨てようとした。 だけど、と精霊神は思い直した。 すべての人間が愚かなのではない。「あるじ」たるに相応しくない人間が「あるじ」になって、権力を追い求め、一番手っ取り早く手に入れる「いくさ」を始めたから、この事態が引き起こされたのだと。 だから、「くに」が滅んで生き残った民の前に、精霊神は降臨した。 最初の「まち」、スペランツァを作り、人々に守らなければならないことを教えた。 暴力で人を治めることはあってはならないと説き、長に相応しくない人間が長くその地位にいることを防ぎ。 各地にスペランツァを真似た町が出来たことで、精霊神は安心してスペランツァと共に精霊界へ戻り、世界を見守ることにした。 精霊神が今も世界から目を離していないから、天罰があるのだ。 ならぼくをぶん殴って閉じ込めて脅したファヤンス町長デスポタはどうなるんだ、と思ったけど、そういやあいつ、ぼくが町民を引き抜いたせいでほとんど名ばかり町長となってたな。町を返せと言ってたけど、多分ぼくに復讐しようと行動に到った時点で、町長の座は降ろされてたんだな。ヤバい状態になった時、町民が強制的に町長を追
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第169話・鳥の届ける手紙

 エアヴァクセン。 スヴァーラは寝込んでいた。 酷い熱。でも、病気じゃない。 オルニスを……家族同然の大事な小鳥を逃がしたことで、散々モルに殴られたのだ。 前から、オルニスを放してやってくれ、言うことも聞くし従うから、と言っても聞いてくれず、すぐにオルニスはモルに掴まれ、握りしめられていた。絞め殺すぞ、と言われた。 殴られた顔が痛い……頭がガンガンする……体が熱い……。 でも。 最初からこうしてあげればよかった。 そうすれば、オルニスはきっともっと元気に、幸せに生きて行けたのに。「ごめんね……でも、大事にしてくれる人の所に行けたよね……」 両頬が腫れている。腕も足も青あざだらけ。顔も散々殴られた。ミアストとモルの怒りを買うのが怖い皆は、部屋に近付きもしないだろう。 でも、後悔はなかった。 これで、あの子が幸せになれるなら。 ワタシなんて……いくら殴られても……。 オルニス……もう会えないけど、幸せにね……。 スヴァーラの頬を、涙が伝い落ちた。     ◇     ◇     ◇「全く、あの女め」 モルはぶつくさ言いながら、自分の部屋に向かっていた。「何が、逃げないから逃がしてくれだ。あんな鳥一羽、焼いて食ったところで美味くもないだろうに大事にしやがって」 がん、と柱を蹴る。「あの鳥がいないとあの女はおれの思う通りに動かないじゃないか。あいつはおれの思う通りにするのが一番幸せなのに」 自分はミアストの一番の部下だ。SSランクの町長からの腹心。誰もがその座を狙っているが、ミアストの信頼が篤い自分が一番に決まっている。 エアヴァクセンが回っているのはミアストのおかげ。そのミアストを支えているのは自分。ミアストが一番信頼して、仕事を任せるのは自分。他の連中には任せられないから、自分がここにいるのだ。 なのに、町民は誰も自分を認めない。 ミアストの信頼を一身に受ける自分を羨んでいるのだ。そうに違いない。そうでなければここまで信頼を受ける自分を認めない理由がない。 そう……あの女も、自分を認めない。 ミアストの命令を告げる時、いつも彼女は視線を伏せている。好きでやっているわけではないという顔で。 自分が見ていなければ、あの女は悪い方悪い方へと向かって行く。だから気にかけて見てやっていると言うのに、ど
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第170話・大馬鹿者

 ミアストが激怒して自分を呼んでいると聞いたモルは、何事かと大急ぎで町長室へ向かった。 一体何があった? 自分が出て行かないと収まらないほど町長が激怒している? やっぱり町長が信頼しているのは自分だ、そこまで激怒している時に自分を呼んでくれるなんて。 お待ちください、町長。 一番の部下が今、参ります……! 町長室に飛び込んだモルを待っていたのは、真っ赤な顔のミアストだった。「この……この」「はい!」「この、大馬鹿者がーっっっ!!!!」 モルはミアストの本当の激怒を知っている。ミアストはモル以外の前で本当の激怒を見せたことがない。自分にぶつけて、落ち着いて、それから他の部下を怒るのだ。この激怒を宥められるのは自分だけ……!「落ち着いてください町長! わたしはここにおりますので……!」「ああ、呼んだからな! いないとおかしいぞこの愚図の能無しの考えなしが!」「はい! 今度お怒りになる相手はどの馬鹿でしょうか!」「貴様だこの馬鹿!」「はいわたしです!」「そうだ貴様だ、私の顔に泥を塗りおってこの馬鹿者が!」 いつもミアストは自分に怒りの矛先を向ける。それを自分はただひたすらに受け止める。そして呼吸が落ち着いてきて、顔に上った血が少し引いてから、その怒りの原因をぶちまけてくれる。それが出来るのはエアヴァクセンでも自分くらい。 モルは最大級の怒りを受け止めながら、内心この仕事を誇らしく思っていた。 ……が。 いつもなら五分も怒り狂えばある程度静まるはずのミアストが、今日は十分経っても収まる気配がない。「全く、こんな馬鹿で愚図で愚かな部下だとは思わなかった! 私は言ったな! 鳥を傷付けるなと! 鳥を奪う必要はないと! 傷つけるなと! それを貴様は! 藪をつついて蛇を出すとはこのことだ!」 ……あれ? モルはここでやっと疑問を覚えた。 ミアストが怒りをぶつける相手は自分……自分にぶつけて、落ち着くはずなのに、今日は全然落ち着かない……。沸き立つ怒りが本来向けるべき相手に向く様子がない……なぜだ?「町長、ミアスト様」 こんな時に口を利くのは間違っていると分かってはいたけれど、聞かずにはいられなかった。「今回は誰が、町長をそこまで怒らせたのですか?」「!!!!!!!!!」 ミアストはデスクに両掌を叩きつけた。「貴様の、モル・
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