千鶴は張り切って自ら玄関を開けようとした。「きっと海渡が来たんだよ。早く料理を温め直しておいで」梨沙は苦笑しながら、その後ろについていき、そっと支えるように腕を添えた。千鶴がドアを開ける。そして呆然とした。昼間のあの厄介なおばあさんが、また来ていたのだ。ただ、その隣に立つ若い男性は驚くほど端正な顔立ちだった。秋子は千鶴を指差した。「この人」「おばあちゃん?何かあったの?」梨沙がキッチンから出てきて礼都の姿を見た瞬間、頭の中に大量の疑問符が浮かんだ。――5分後。4人はリビングに腰を下ろしていた。千鶴も、礼都が望の叔父だと知り、態度を少し和らげた。礼都は申し訳なさそうに言った。「こんな遅い時間にお邪魔してすみません。祖母が泣きながらどうしてもこちらへ来ると言い張りまして。先に病院へ行ったのですが、もう退院されたと聞いたので」千鶴は俯きながら、思わずぼやく。「このおばあさん、しつこいわね......」秋子は礼都の膝をぽんぽんと叩き、梨沙を指差した。そして当然のように言った。「この子を買うの。お金出して。たくさんね」梨沙はようやく事情を理解した。前回病院で秋子が帰ろうとせず、唐沢について帰らせるために千鶴が「家に帰ってお孫からもっと金をもらっておいで」と言った件を、礼都に説明した。礼都は眉をわずかに上げた。「なるほど」秋子は落ち着きがない子どものように礼都の腕を抱え、何度も揺さぶる。「ねえ、早く、お金!」礼都は冷静な表情のまま、厳しく彼女を見た。「人身売買は犯罪だよ。警察に捕まって刑務所へ行くことになるよ」秋子は肩をびくりと震わせ、途端に弱気になった。「じゃあ買わない。連れて帰ればいいでしょ」礼都は頭を抱えたくなった。アルツハイマー病を患ってからというもの、秋子は「れいと」を探すか、食べるか寝るかばかりだった。こんなふうに見知らぬ人を気に入り、家へ連れて帰りたいと言い出したのは初めてだった。千鶴は立ち上がった。「この子は私の孫娘だよ。いくら積まれたって売るもんか。あんたも誰かに孫を売ってくれって言われたら、売れるのかい?」秋子は指を一本立てた。「10円なら売る」礼都「......」千鶴は一瞬ぽかんとしたあと、思わず吹き出
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