旅行前日の夜。 佳苗はベッドの上へ小さめのボストンバッグを広げていた。「これで忘れ物ないかな……」 着替え。 化粧ポーチ。 充電器。 財布。 確認しながら一つずつバッグへ入れていく。 その様子を、リビングから戻ってきた雄吾が見て小さく笑った。「もう準備してるのか」「はい」 佳苗は振り返って微笑む。「明日の朝、慌てたくないので」「らしいな」 雄吾はベッドの横へ腰を下ろした。「確認するか?」「お願いします」 佳苗は嬉しそうにバッグを差し出す。「着替え」「あります」「充電器」「あります」「財布」「あります」「免許証」「……あっ」 佳苗の動きが止まった。「忘れてました」 慌てて財布を開き、免許証ではなく運転免許を持っていないことに気付いて苦笑する。「私は免許を持ってないんでした」「保険証は?」「あります」 財布の中を確認して、ほっと胸をなで下ろした。「それで十分だ」 雄吾は笑う。「危ないところでした」「いや、確認したから大丈夫だ」 二人は顔を見合わせて笑った。 荷造りを終えると、佳苗はバッグのファスナーを閉める。「これで安心です」「あとは寝るだけですね」「ああ」 雄吾は時計へ目を向けた。「明日は早めに出る」「渋滞するかもしれないからな」「はい」 佳苗は頷いた。「お弁当でも作ろうかと思ったんですけど……」「旅行なんだから休め」
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