リビングへ入ると、雄吾は佳苗の表情を見つめた。「何があった」 その穏やかな声に、佳苗は張りつめていた気持ちが少しだけ緩む。「実は……」 佳苗は今日までの出来事を順を追って話した。 契約内容が違うと言われたこと。 何度説明しても話を聞いてもらえないこと。 担当を代えろと言われたこと。 会社にも迷惑が掛かり始めていること。 雄吾は一度も口を挟まず、最後まで静かに聞いていた。「……ということなんです」 話し終えると、雄吾は少し考えるように視線を落とした。「佳苗」「はい」「一つ聞く」「はい」「君は、自分が間違えたと思っているか?」 佳苗は首を横に振った。「思いません」 迷いはなかった。「送ったメールも、添付した契約書も、何度も確認しました」「見落としがある可能性は否定できません。でも、少なくとも今の時点では、私のミスだとは思えないんです」 雄吾は静かに頷く。「なら、それでいい」 その一言に、佳苗は思わず顔を上げた。「事実を積み重ねろ」「感情ではなく、証拠だ」「相手が怒鳴ろうが、見下そうが関係ない」「最後に残るのは事実だけだ」 佳苗はその言葉を胸の中で繰り返す。 ――最後に残るのは事実。「はい」 雄吾はそれ以上、この件には踏み込まなかった。「夕食にしよう」 そう言って話を切り替える。 それがありがたかった。 雄吾は自分で解決してやるとも、取引先に連絡するとも言わない。 佳苗が自分で乗り越えるべき問題だと理解しているからだ。 夕食を終えた後も、佳苗はノートパソコンを開いた。 会社から持ち帰った資料はない
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