その日の帰り道。 スーパーを出た佳苗は、ふと商店街の一角で足を止めた。「あら」 小さな八百屋の店先に、人だかりができている。『本日限り! みかん詰め放題!』 威勢のいい店員の声が響いていた。「雄吾さん」 佳苗は思わず袖を引く。「あれ」 雄吾も看板へ目を向けた。「詰め放題か」「ちょっと見てもいいですか?」「ああ」 二人で近づくと、おばあさんや主婦たちが袋いっぱいにみかんを詰めている。「すごい……」 佳苗は思わず感心した。「袋から落ちなければいいんですね」 店員が笑顔で説明する。「そうだよ! 最後に持ち上げられればオッケー!」 佳苗は楽しそうに眺めていた。 すると雄吾が隣で聞く。「やりたいか?」「え?」「興味があるんだろう」 佳苗は少し迷ってから、小さく頷いた。「……実は」「ちょっとだけ」「やってみたいです」 その返事を聞いた雄吾は、迷いなく店員へ声を掛けた。「一つ頼む」「はい、五百円ね!」 袋を受け取った佳苗は、少し緊張したような顔になる。「頑張ります」 周りのお客さんに混じって、慎重にみかんを積み上げていく。「これなら……」 一段。 二段。 少しでも多く入れようと真剣だ。 雄吾は腕を組み、その様子を静かに見守っていた。「上手だねえ」 近くのおばあさんが笑う。「ありがとうございます」 佳苗も嬉しそうに笑い返す。 あと一個。 乗せられそうだ。「…&hellip
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