All Chapters of 夫の子を産まされ、妹の身代わりとして死んだ私――今世では冷徹CEOに執着されています: Chapter 361 - Chapter 370

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それで安心なのよね?

『あなたは、それで安心なのよね?』 美佐子の声に、佳苗はすぐに答えられなかった。「……お母様?」『ごめんなさい。変な聞き方をしたわね』「いえ……」『ただ、少し気になって』 美佐子はため息をついた。『絢子ちゃん、昨日うちに来たのよ』「そうだったんですか」『ええ。仕事の帰りにね』 それ自体は何もおかしくない。 佳苗はそう思った。『それで、雄吾と一緒だったんでしょうって聞いたら、仕事の話しかしていないって』「はい」『終わったあとは、一人で帰ってきたそうよ』「……はい」『あの子、本当にあなたとの約束を守ろうとしているのね』「約束というか……」 佳苗は言葉を選んだ。「私が一条さんにお願いしたわけではありません」『でも、仕事以外で連絡を取るのは嫌だって言ったでしょう?』「それは言いました」『だったら同じじゃない?』「……」 胸が苦しくなる。 まただ。 何かが少しずつ、違う意味へ変わっていく。「お母様。私、一条さんに仕事以外で一言も話さないでほしいとは言ってません」『でも、連絡は嫌なのよね?』「はい。でも……」『二人きりで食事をするのも嫌』「それは……はい」『触れるのも嫌』「……はい」 美佐子が小さく息を吐いた。『じゃあ、絢子ちゃんはどうしたらいいのかしら』「え?」『二十年以上も友達だった人と、仕事以外では連絡もできない。食事にも行けない。昔みたいに接することもできない』「……」『私はね、佳苗さん』 美佐子の声は穏やかだった。 だからこそ、その言葉は重かった。『恋人ができたら多少距離が変わるのは仕方ないと思うの』「はい」『でも、昔からの友達をそこまで遠ざけなくてもいいんじゃないかしら』 佳苗の胸が痛んだ。「私が……遠ざけているんですか?」『そういうつもりじゃないのは分かってるわ』「でも、今――」『ごめんなさい』 美佐子が遮った。『あなたを責めたいわけじゃないの』「……」『ただ、絢子ちゃんも大切な子だから』「はい」『あの子が寂しそうにしているのを見ると、どうしてもね』 佳苗は唇を噛んだ。 分かっている。 美佐子にとって絢子は大切な存在。 だから傷ついていれば心配する。 当然のことだ。 けれど。「お母様」『なあに?』「一条さんは、私が嫌だと言ったから寂しい
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許してあげて

「絢子ちゃんと雄吾が、昔みたいに友達でいることを許してあげてくれないかしら」 佳苗はしばらく、美佐子の顔を見つめていた。「……許す、ですか?」「言い方が悪かったわね」 美佐子は困ったように笑う。「別に、あなたに許可をもらわなければいけないという意味じゃないのよ」「でも……」「ただ、雄吾もあなたが嫌がるから、絢子ちゃんと距離を置いているでしょう?」「それは雄吾さんが自分で決めたことです」「そう言うけれど」 美佐子は小さく息を吐いた。「あなたが嫌だと言わなければ、雄吾だって今まで通りだったんじゃない?」 胸に刺さる。 確かに。 佳苗が嫌だと言ったから、雄吾は距離を取ると決めた。「お母様は……私に我慢してほしいんですか?」「我慢なんて」「一条さんが雄吾さんを好きでも?」「それは昔のことでしょう?」「今も好きじゃないとは言い切れないと、一条さん本人から聞きました」「……」 美佐子が言葉に詰まる。「それでも、私は気にせず二人を今まで通りにさせた方がいいんでしょうか」「でも絢子ちゃんは、何もしないと言っているんでしょう?」「……はい」「だったら、信じてあげてもいいんじゃないかしら」 佳苗は俯いた。 また同じだ。 信じない自分が悪い。 許せない自分が狭量。 そんな話になっていく。「私ね」 美佐子が優しく続ける。「佳苗さんの気持ちも分かるのよ。恋人の近くに、自分を好きな女性がいるのは嫌でしょう」「はい」「でも、二十年以上の友情までなくさせるのは、少し違うと思うの」「……」「雄吾にとっても、絢子ちゃんは大切な友人なのよ」 佳苗はゆっくり顔を上げた。「それ、雄吾さんが言ったんですか?」「え?」「一条さんと昔みたいに友達でいたいって、雄吾さんがお母様に言ったんですか?」「それは……」「言ってないんですよね?」 美佐子が黙った。 佳苗の胸は痛かった。 それでも、今度は引かなかった。「雄吾さんは私に、自分で決めたと言いました」「でも、あなたに気を遣っているだけかもしれないでしょう?」「だったら」 佳苗は静かに答える。「それは雄吾さんに聞いてください」「佳苗さん……」「私ではなくて」 初めてだった。 美佐子に対して、こんなにはっきり言ったのは。「雄吾さんと一条さんの関係をどうするか
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終わらせるために

 翌日の昼休み。 佳苗のスマートフォンに、絢子からメッセージが届いた。『少しだけ、お話しできますか?』 画面を見た瞬間、佳苗の指が止まる。 返事をしないと決めたはずだった。 けれど続けて届いた文面を見て、眉を寄せた。『おばさまから、昨日のことを聞きました』『私のせいで佳苗さんに嫌な思いをさせてしまって、本当にごめんなさい』「……」 やはり、美佐子から聞いたらしい。『おばさまが佳苗さんにあんなお願いをするなんて、私は知らなかったの』『私が頼んだわけじゃないことだけ、信じてもらえたら嬉しいです』 佳苗はしばらく考えてから、短く返信した。『分かっています。一条さんが頼んだとは思っていません』 嘘ではない。 美佐子が自分で考えて行動したことだとは理解している。 すぐに既読がついた。『ありがとう』『それだけ伝えたかったの』 そこで終わるかと思った。 けれど。『それと、もう一つだけ』 佳苗の胸がざわついた。『雄吾さんが私と距離を置きたいのは、自分の意思だって聞きました』「……」『だから、もう佳苗さんには何も言いません』『私と雄吾さんのことは、私たち二人の問題だから』 佳苗はその文章を何度も読み返した。 何もおかしくない。 雄吾自身がそう言ったのだから。 それなのに。 最後の一文だけが妙に引っかかった。 ――私たち二人の問題。     ◇ その日の午後。「榊原社長」 会議を終えて廊下へ出た雄吾を、絢子が呼び止めた。「少しだけいい?」「仕事の話か?」「ううん」「なら――」「これ
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私が止めるんですか?

『佳苗さん。お願い』 美佐子の声が耳に残る。『絢子ちゃんを止めてくれない?』「……私が、ですか?」『ええ』「どうして……」『だって、あの子が日本を離れるなんて』 美佐子の声は本気で動揺していた。『仕事だってあるのに。お父様の会社のことだってあるでしょう? それなのに、急に海外へ戻るなんて言い出すから』「……」『きっと、相当傷ついてるのよ』 佳苗は隣の雄吾を見る。 雄吾は黙って手を差し出した。「代われ」という意味だ。 けれど佳苗は、少し迷ってから首を横に振った。 今度は。 自分で話したかった。「お母様」『なあに?』「私には、止められません」『佳苗さん?』「一条さんが海外へ行くかどうかは、一条さんが決めることです」『でも、原因は――』 そこで美佐子が言葉を止める。 佳苗の胸が痛んだ。「原因は、私ですか?」『そういう意味じゃないのよ』「では、どういう意味ですか?」『……』「一条さんが雄吾さんを好きなのは、私のせいではありません」『それは分かってるわ』「雄吾さんが一条さんと距離を置くと決めたのも、私のせいではありません」『でも――』「一条さんが海外へ行くと決めることもです」 声が震えそうになる。 それでも佳苗は続けた。「それまで私が何とかしなきゃいけないんですか?」『……』「一条さんが悲しんだら、私が慰めて。離れると言ったら、私が引き止めて」『佳苗さん、私はそんなつもりで――』「だったら」 佳苗は息を吸った。「お母様が止めてあげてください」『え?』「お母様は、一条さんに日本にいてほしいんですよね?」『もちろんよ』「なら、お母様がそう伝えてください」『でも、絢子ちゃんがこうなったのは雄吾とのことが――』「だったら雄吾さんと話してください」 美佐子が黙った。「私を間に入れないでください」 言ってしまった。 胸が激しく鳴る。 嫌われる。 そんな恐怖はまだある。 けれど。 もう引き受けたくなかった。「ごめんなさい」 佳苗は静かに言った。「私は、一条さんが自分で決めたことの責任までは取れません」     ◇『……分かったわ』 長い沈黙のあと。 美佐子が答えた。 その声は硬かった。『ごめんなさいね。無理なお願いをして』「お母様……」『雄吾にもよろしく』
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昔の約束

 絢子が電話を掛けた相手は、父だった。『絢子? 珍しいな』「お父様、今少しいい?」『ああ。どうした』「榊原さんのところとの共同案件のことなんだけど」『何か問題でもあったか?』「ううん。仕事は順調よ」 絢子は一度言葉を切った。「ただ……雄吾さん、結婚するつもりなのかなと思って」『雄吾君が?』「今、お付き合いしている方がいるでしょう?」『ああ。美佐子さんから聞いたことはあるな』 絢子は窓の外を見る。「お父様、昔……覚えてる?」『何をだ?』「私と雄吾さんが結婚したら、なんて話してたこと」 電話の向こうで父が笑った。『そんな昔の話か』「やっぱり覚えてたんだ」『お前たちがまだ学生の頃だろう。美佐子さんたちと酒を飲みながら、そんな話もしたな』「……そうよね」 ただの昔話。 正式な婚約でもない。 両家が交わした約束でもない。 だから絢子も、それ以上は言わなかった。『どうした。まだ雄吾君が好きなのか?』「……分からない」『絢子』「でも、今さら何かするつもりはないわ」 絢子は小さく笑った。「ただ、昔そんな話もあったなって思い出しただけ」『そうか』「お母様も覚えてたかな」『さあな』「今度会ったら聞いてみようかな」『変な波風を立てるなよ』「分かってる」 絢子は笑った。「ただの思い出話よ」     ◇ 数日後。 美佐子は久しぶりに夫と外で食事をしていた。「そういえば」 料理を待ちながら、夫がふと思い
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知らない雄吾

 二十年以上。 その時間を、佳苗は知らない。 雄吾がどんな子供だったのか。 どんな学生だったのか。 何を好きで、何を嫌って、どんなふうに笑っていたのか。 絢子は知っている。 美佐子も知っている。 自分だけが知らない。(……だからって、今の雄吾さんとは関係ない) 佳苗は自分に言い聞かせた。 雄吾も言ってくれた。 絢子との結婚話など、親が勝手に盛り上がっていただけ。 婚約していたわけでも、二人で将来を約束したわけでもない。 それでも。 心のどこかに、小さな棘が残った。     ◇ 数日後。「佳苗さん、これ見て」 美佐子の家で、佳苗は古いアルバムを差し出された。「この前昔の話をしたでしょう? それで懐かしくなっちゃって」「……アルバムですか?」「雄吾の小さい頃の」 佳苗の表情が明るくなる。「見たいです」「でしょう?」 美佐子が嬉しそうに隣へ座る。 幼稚園の入園式。 小学校の運動会。 家族旅行。「雄吾さん、昔からあまり笑わないんですね」「そうなのよ。この頃なんて写真を撮るって言うと逃げて」「ふふ」 佳苗はページをめくった。 知らない雄吾を知ることができる。 純粋に嬉しかった。 けれど。「あ……」 途中から、絢子の姿が増えていった。 並んで海辺に立つ二人。 誕生日会。 制服姿。 家族同士の旅行らしい写真まである。「この頃は一条家とよく一緒に旅行してたの」「そうだったんですね」「ほら、これなんて可愛
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一瞬の顔

 ほんの一瞬だった。 美佐子に向けていた柔らかな笑顔が消えた。 驚いたというより。 苛立ったような――。「……そうよね」 けれど次の瞬間には、絢子はいつもの表情に戻っていた。「ごめんなさい、おばさま。やっぱり旅行はやめましょう」「でも絢子ちゃん」「雄吾さんの言う通りよ」 絢子は困ったように笑う。「昔と今は違うもの」「……」「私、つい昔と同じ気持ちでいちゃうから駄目なのね」「絢子ちゃんが悪いわけじゃ――」「ううん」 絢子は首を横に振った。「私もちゃんと変わらないと」 そして雄吾を見る。「ごめんね、雄吾さん」「……」「もう昔のことを持ち出さないようにする」「ああ」「じゃあ、私はこれで」 絢子は美佐子にも頭を下げ、その場を離れていった。 雄吾は、その後ろ姿をじっと見つめていた。「雄吾?」「何?」「さっきからどうしたの?」「別に」「絢子ちゃんに冷たすぎない?」「普通だろ」「どこがよ」 美佐子はため息をついた。「旅行くらい、みんなで行けばいいじゃない」「行きたいなら母さんと絢子で行けばいい」「佳苗さんも誘って、仲良くなれば――」「無理に仲良くなる必要はない」「どうしてそんな言い方するの?」 雄吾は母を見る。「母さん」「何?」「最近、絢子から昔の話をよく聞くのか?」「……どういう意味?」「俺と絢子の結婚の話。昔の旅行。それまでほとんど話してなかっただろ」「それは、この前ア
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まだ、何も

「あなたと雄吾って……結婚するの?」 佳苗は答えられなかった。 考えたことがなかったわけではない。 雄吾と暮らすようになって。 一緒に食事をして。 帰る場所が同じになって。 この生活がずっと続けばいいと思うことは、何度もあった。 けれど。「……まだ、そういうお話は」「あら、そうなの?」「はい」「てっきり、もう具体的な話が出ているのかと思ってたわ」 美佐子は意外そうだった。「雄吾、あなたのことをずいぶん大切にしているでしょう?」「……はい」「一緒に暮らしてもいるし」「はい」「だから私、当然そのつもりなのかと」 佳苗は曖昧に笑った。「まだ何も聞いていません」「そう……」 美佐子は紅茶に口をつける。「ごめんなさいね。余計なことを聞いて」「いえ」「あなたを急かしたいわけじゃないのよ」「分かっています」「ただ……」 美佐子が少し考えるように首を傾げた。「雄吾ももう、将来のことをきちんと考える年齢でしょう?」「……」「佳苗さんは、結婚したい?」 また答えに困る。「私は……」 したい。 そう答えてしまっていいのだろうか。 雄吾が何も言っていないのに。「できたら……いつかは」「そう」 美佐子は優しく微笑んだ。「だったら、雄吾もちゃんと考えてくれてるといいわね」「……はい」 何も悪い言葉ではなかった。 それなのに。 帰り道も、その言葉がずっと胸に残った。     ◇「ただいま」「おかえり」 家へ戻ると、雄吾は先に帰っていた。「母と会ってたんだろ?」「はい」「また何か言われたか?」「え?」「絢子のこと」「あ……今日は違います」「ならいい」 雄吾はそれ以上聞かなかった。 佳苗も、すぐには言えなかった。 ――私たち、結婚するんですか? そんなことを突然聞けば。 まるで結婚を迫っているようではないか。「佳苗?」「はい?」「何かあっただろ」「……どうして分かるんですか」「顔」 佳苗は困って笑った。「雄吾さんって、そういうところだけよく見てますよね」「そういうところだけって何だ」「何でもありません」 誤魔化そうとした。 けれど雄吾はじっと佳苗を見ている。「母に何を言われた?」「……」「佳苗」「結婚するのかって」 とうとう口にした。 雄吾の表情が
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二人だけのこと

「ただいま」 夜。 帰宅した雄吾の声を聞いて、佳苗はリビングから顔を上げた。「おかえりなさい」「……どうした?」「え?」「また何かあっただろ」 すぐに気づかれてしまう。 佳苗は少し迷ったが、今度は隠さなかった。「今日、お母様と電話でお話ししました」「母と?」「はい」「何を言われた?」「結婚のことです」 雄吾の眉が寄る。「また?」「一条さんと、私たちの結婚について話したそうです」「……絢子と?」「はい」 佳苗は、美佐子から聞いたことをそのまま話した。 絢子が、雄吾は大切なことほど慎重だと言ったこと。 佳苗が前の結婚で傷ついているから、急がないようにしているのではないかと話したこと。「それで私……」 佳苗は少し俯いた。「私たちの結婚のことは、一条さんと話さないでほしいって言いました」「ああ」「お母様、少し嫌そうでした」「だから?」「……」「佳苗」 雄吾は佳苗の向かいに座った。「それの何が悪い?」「悪くないって思いたいです」「思いたいじゃなくて、悪くない」「でも、お母様は一条さんと昔から何でも話していたみたいだから」「俺たちのことまで話す必要はない」「……はい」「それに」 雄吾の声が低くなる。「絢子が何で俺たちの結婚について意見してるんだ」「意見というほどでは……」「同じだ」 雄吾は明らかに不快そうだった。「俺が結婚をどう考え
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家族だから

 数日後。 美佐子から佳苗へ、一通のメッセージが届いた。『来月、主人の誕生日なの。佳苗さんも一緒にお祝いしてくれない?』 佳苗は少しだけ緊張した。 美佐子との関係は、以前よりぎくしゃくしている。 それでも、雄吾の父親の誕生日なら断る理由はない。『はい。ぜひ』 そう返信した。     ◇「父さんの誕生日?」「はい。お母様から誘っていただきました」「俺にも来てる」 雄吾がスマートフォンを見る。「行くか?」「もちろんです」「そうか」 佳苗は少し笑った。「何を持っていけばいいでしょう」「何もいらないだろ」「そういうわけにはいきません」「じゃあ酒」「お酒がお好きなんですか?」「ああ」「じゃあ、一緒に選んでください」「分かった」 久しぶりに。 何の不安もない話ができた。 佳苗は少し嬉しくなった。     ◇ 誕生日当日。 雄吾と佳苗が美佐子の家へ着くと、玄関には見覚えのある靴があった。 佳苗の足が止まる。「……もしかして」 雄吾も気づいたらしい。 眉を寄せた。「絢子か」 リビングへ入る。「あ、来たわね」 美佐子が笑顔で迎えた。 そしてその隣には。「こんにちは」 絢子が立っていた。「……こんにちは」「絢子ちゃんも呼んだの」 美佐子は当然のように言った。「主人も小さい頃から知っているし、毎年お祝いしてくれてるから」「そうなんですね」 佳苗は笑顔を作った。 美佐子と絢子
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