Lahat ng Kabanata ng この恋に永遠(とわ)の決別を〜二度目ましてのこの人生、もう同じ轍は踏みません〜: Kabanata 21 - Kabanata 30

36 Kabanata

21話

「真子ちゃん、これは一体…」 すっかり様変わりした部屋に、小森は目を丸くした。 あれだけあったはずのクマのぬいぐるみが跡形もなく消えている。 その一方で部屋の隅にはいくつものゴミ袋が置かれていた。 小森に抱かれた真子は、その腕の中でばつの悪い表情を浮かべる。 あのゴミ袋の中には、小森がプレゼントしてくれたぬいぐるみもいくつか入っている。 罪悪感はあった。 それでも結局、真子はそれらを捨ててしまったのだ。 小森が何も感じないわけがない。 現に、ゴミ袋を目にした小森は、黙ったまま何も言わない。 そんな沈黙に耐え切れなくなった真子は、おずおずと口を開いた。 「悠介くんごめんなさい、私…」 だが、そんな真子の言葉を小森が遮った。 「ここに不燃物のゴミ袋もあるけど、もしかして、次は不燃物のクマさんグッズを捨てるところだった?」 真子は眉を下げると、 「ごめんなさい…」 消え入りそうな声で、そう小森に謝った。 腕の中で縮こまる真子に、小森は、 「容赦無く捨てていっていいのかな?」 「え?」 驚いて顔を上げた真子に、小森は微笑む。 「あれらの処分はお兄さんに任せなさい。その間、真子ちゃんはソファに座って待っててね」 小森は二人掛けのソファに真子を降ろすと、スーツの上着を脱いで、Yシャツの袖を捲った。 床の不燃袋を拾い上げると、何かを探すようにキョロキョロと辺りを見渡している。 「悠介くん?」 「お、あったあった」 小森はカゴの中から新聞紙を取り出した。 「真子ちゃん、まだ早朝の新聞配達もやってるんだっけ?」 しげしげと新聞紙を眺めながら、小森が何気ない口調で聞いた。 唐突な質問に、真子は、 「え、あ、うん」 真子の答えに、小森は、「そっか…」と言って、どこか切なそうな顔になる。 「ーー悠介くん?」 真子の呼びかけに、小森は振り返って、 「真子ちゃん、何よりも自分を大事にね?」 「え?」 戸惑う真子に、小森はニコリと笑いかけると、サッと前に向き直って作業へと取り掛かった。 彼は食器棚からクマの描かれたカップやお皿を取り出すと、一枚一枚新聞紙に包んでゴミ袋へと入れていく。 小森の流れるような手つきを見つめながら、真子は先ほど小森に言わ
last updateHuling Na-update : 2026-09-05
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22話

「じゃあ、真子ちゃん。僕はそろそろ帰るね」 最後のゴミ袋を手に、小森はリビングを後にしようとする。 ゴミは明日、小森が直接ごみ収集場へ持って行ってくれることになった。 地域のゴミ回収の日を待つより、一気に捨ててしまったほうが真子の負担も軽くなる。 そう、気を遣ってくれてのことだった。 見送りに立ち上がろうとする真子を、小森は笑顔で制した。 真子は小森を真っ直ぐに見上げると、 「何から何までやってもらっちゃって…ありがとう、悠介くん。助かりました」 そう言って、小森に向かって頭を下げる。 小森は少し驚いたような顔をしたが、次に微笑むと、 「ううん、僕も真子ちゃんの役に立てたのならすごく嬉しい。これからも、何か困ったことがあったらいつでも僕を頼ってほしいな」 顔を上げた真子は、小森のその言葉に素直に「うん」と頷いた。 「うん」と返す小森の顔は、なぜか少し泣きそうだった。 小森は、真子から変に思われないよう注意しながら顔を背けると、 「真子ちゃんは、この後東城さんが来てくれて一緒に食事するんだったよね?」 「うん!だから、悠介くんも一緒に食べていけばいいのに。綾の作るご飯は絶品なんだよ?」 小森は申し訳なさそうに眉を下げた。 「そうしたいんだけど、この後ちょっと用事があって…せっかく誘ってくれたのにごめんね?」 真子は慌てて、 「用事あったの⁉︎それなのに、長々と引き留めちゃって、こっちこそごめんなさい。大丈夫?間に合う?」 小森は笑って、 「うん、間に合うから大丈夫だよ。じゃあ、行くね?お邪魔しました」 「ううん、ありがとう悠介くん。本調子になった時はぜひ、今日のお礼をさせてね!」 小森はその場で足を止めた。 そして、ゆっくりと真子に振り返る。 「真子ちゃん、やっぱり無理して退院したんだね」 そう聞こうかと思ったが、そう聞かれ、困る真子の顔が頭に浮かんだ。 だから、 「真子ちゃん。司くんはね、真子ちゃんの分の入院費も払おうとしていたんだよ」 「え…」 小森は苦笑した。 やっぱり。 はじめから彼女には、司くんから入院費を払ってもらおうなんて発想、微塵もなかったんだ。 司くんも司くんで、今回も真子ちゃんから全然頼りにされていないだなんてーー
last updateHuling Na-update : 2026-09-06
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23話

「あー、ちょっと情報量多いかも…一旦整理させて」 煮込みうどんを食べながら、真子から今日一日の話を聞かせてもらっていた綾だったが、あまりの濃厚さに頭を抱えた。 真子の部屋から目つきの悪いクマたちが一斉に姿を消したことに綾はすぐに気づいたが、あえてそこには触れないでおいた。 隣の部屋の色気漂うオネエに始まり、昨日に引き続き現れた憎っくき存在、門脇司。 そして、見た目も中身もパーフェクトな、イケメン好青年、小森悠介(帰っちゃったのが残念)。 「相変わらずかっこよかったなあ…」 頬杖をつき、口からそうこぼす綾の横顔を目に、真子は愛おしそうに微笑んだ。 恋する乙女の顔というものは、どうしてこうもキラキラとしているのだろう。 自分を見てにこにこと笑っている真子に、綾はわかりやすく咳払いをして誤魔化した。 「んっと、まずは隣のオネエだね。真子がこの部屋に住み始めてから結構長いはずなのに、その人に会うのは今日が初めてだったの?」 うどんをすする真子の顔がまだニヤけていることに、綾はわざと目を細めて見つめ返す。 「集・中!」 真子は、ハハっと笑って、 「ごめんごめん。うん、会うのは初めてだと思う。私が朝は早くて、夜も遅いからか、お隣さんに限らずアパートの住民に会う機会がほとんどないんだよね。唯一、家賃を渡しに行く時に一階の大家さんに会うくらいかも」 「そっか、そっか。まあ、悪い人じゃなさそうなら安心だね。ちなみに名前は教えてもらったの?」 だが、真子はこの時、オネエの唇に付いていたピアスを思い出していたため、綾の話を最後まで聞いていなかった。 あのピアスが目に入った瞬間、咄嗟に目を逸らしてしまった。 見慣れないものを目にして、どう反応していいのかがわからなかった。 理由はそれだけで、悪気があったわけではないのだけれどーー 「失礼だったよね…」 真子の呟きに、綾は「え?何て?」 「お隣のオネエさん、唇にピアスしてたんだけどね」 綾は興奮したように鼻の穴を膨らませた。 「何それ!唇ピアスとか、エロすぎでしょっ‼︎」 「え、エロ…」 「あ、ごめん。私の中で隣のオネエのイメージが勝手に浮かんでて。そのイメージのオネエに唇ピアス付けさせた結果、さっきの感想にいたりました」 暴走したことを恥
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24話

真子は短く「うん」と頷いた後、 「けど、まさか門脇さんが私の分の入院費まで負担しようとしてくれたなんて思いもしなかった」 綾は厳しい顔になって、 「しようとしたただけ、ね?実際払ったわけじゃないし、何ならまた罰を与えるとかイカれたこと言い残して去ってったんだから、むしろあいつのやったことはマイナス!そこんとこ間違えちゃダメだよ!」 「うん、分かってる。ただ…」 前回は、退院後に会いに来てくれたのは綾と小森だけで、司は来なかった。というか、そもそも、彼がこのアパートを訪ねてきたことなど一度もなかった。 過去に戻ってからまだたったの二日。でも、もう既に起こることが大きく変わり始めている。 過去に起きたことと違うということは、これまでの記憶だけでは通用しないということ。 そうなると、その場その場で最善の判断を下していかなければならない。 けれど、一度若くして死を経験している以上、嫌でも最悪の可能性を考えてしまう。 判断を間違えれば、その先に待っているのはまたしても“死”なのではないか、と。 自分が死んだら、あの子たちに会える、という未来も同時に消えてしまうことになる。 それを回避するためにも、必ず出会わなければならないのが、あの子たちが言っていた、自分のラッキーパーソンだという人。 以前にも会っていたと言っていたが、一体誰のことを指しているのか現時点では全く見当がつかない。 そういえば確か、もう一つ何かヒントがあったはず。最後まで言えていなかったけれど、確かーー 「ただ、どうした?」 綾の声に、真子はハッとしたように我に返ると、視線を上げた。 「大丈夫?」 心配そうに顔を覗き込んでくる綾に、真子は「大丈夫」と、努めて明るく返す。 いけない、いけない…綾がいること忘れてた。 真子が、後でゆっくり頭の中を整理しよう、そう考えた直後だった。 真子のスマホの着信音が、リビングに響き渡る。 着信画面に表示された名前を目にした瞬間、真子と綾は同時に固まった。 二人は瞬時に目を合わせると、綾が真子に向かって、電話に出るな、というように首を振る。 だが、前に嫌というほどこの人物の扱いを学んだ真子は、ぐっと唇を引き結ぶと、パッとスマホを掴んだ。 それを止めようとした綾の手が空を切る。 真
last updateHuling Na-update : 2026-09-06
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25話

彩花は、瞳を揺らしながら麗子の目を数秒見た後、顔を背けた。 まるで、何か言いたいことはあるものの、言うことをためらっているようなそぶりだった。 そんな彩花の様子に、麗子は眉間にしわを寄せると彼女に詰め寄った。 「彩花、私に何か言いたいことがあるんでしょう?何なの?どんなことでも、私にはちゃんと話してちょうだい!」 だが、それでも、彩花は唇を噛んで黙っている。 痺れを切らした麗子が「彩花っ!」と、少しばかり声を荒げると、彩花はやっと、おずおずと口を開いた。 「お義母さま、私…」 麗子は彩花の背中を優しくさすった。 「うん、大丈夫よ。ゆっくりでいいから、話してごらんなさい。あたしがちゃんと聞いててあげるからね」 彩花は、麗子の言葉に安心したのか、はらはらとその目から涙を流して、 「私、昨日もまた、会社でケガをしてしまったんです」 また、という部分に引っ掛かりを覚えた麗子だったが、うんうんと頷くだけで、彩花の話に大人しく耳を傾けた。 「昨日、会社の廊下を歩いていた時、床に倒れていたモップに気付かず、そのままそこに足が引っ掛かって、それで足を酷く挫いてしまったんです…」 彩花のその言葉に、彼女の背中をさすっていた麗子の手がぴたりと止まる。 「モップが、床に倒れていたの?」 彩花はまたも俯くと、か細い声で「はい」と答えた。 途端に麗子の身体がわなわなと震え出す。 「あの女なのね…」 麗子の問いかけに、彩花は黙りこくる。 答えないことが、むしろ答えとなり、麗子の怒りが爆発した。 「またあの女があなたをケガさせただなんて!許せない、許せないわっ!」 麗子は勢いよく立ち上がった。 「一度ならず二度までも…こんなことが偶然なわけがない。わざとなんだわ。あの女のことだもの!絶対わざとに決まっているわ!」 麗子はイライラとしたように爪を噛むと、部屋の中を行ったり来たりする。 彩花はそんな麗子を目にすると、唇の端を吊り上げた。 彩花の思惑通り、麗子はスマホを取り出すとどこかに電話を掛け始める。 しばらく呼び出し音が鳴った後、電話に出た相手に開口一番、 「さっさと出なさいよねっ!あんたごときが、あたしを待たせるんじゃないわよっ!」 真子は耳がキーンとなるのも我慢して、冷静な態度で挨
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26話

「あんたって人間はどうしてそうも性根が腐ってるのよっ!あんなアバズレを母親に持ったのだから仕方ないとはいえ、恩を仇で返すような真似ばかりして…ほんと、忌々しいったらないわっ!」 麗子のその言葉に、司の顔が曇る。 あんなアバズレを母親に? まさか、母さんの電話の相手ってーー 「人の話を聞いてるのっ!清川真子っ!」 真子の名前を耳にした司は、素早く母親に近づくと、その手からスマホを奪い取った。 そして、そのまま通話を切る。 麗子は、信じられない、といったように目を見開いた。 「何するのよ、司っ!」 ヒステリックに声を上げる麗子に、司は感情的になるのを必死に抑えて、 「母さん、ここは病院なんだ。声を抑えて」 だが、麗子は「黙りなさいっ!」と言うと、司の頬を思いっきり引っ叩いた。 「あなたがちゃんとしてないせいよっ!あなたがそんなんだからいつまでもあの女がつけ上がるのよっ!」 ジンジンとした頬の痛みに加え、口の中には血の味が広がった。 そんな司に、彩花は慌ててベッドから降りると、彼のもとへ駆け寄った。 「大丈夫、司?」 彩花が心配そうに司の顔を覗き込むと、彼は力なく「ああ」と答えた。 彩花は麗子に向き直って、 「お義母さま、司はお義母さまのためを思って電話を切ったんです。ほら、最近血圧が高いと仰っていたじゃないですか。だから、どうか彼を許してあげてください」 涙を滲ませて訴える彩花に、麗子は困ったように眉を下げた。 その一方で、司は無表情に彩花の足を見つめている。 「こんな時でもあなたって子は、自分よりも人を優先するんだから…」 麗子は優しい手つきで、そっと彩花の頬に手を添えた。 だが次の瞬間、キッと厳しい目つきになると、その目で司を睨みつけ、 「こんなにも心優しい子を泣かせて、胸が痛まないのかい!まったく…あんたって子は、ろくでなしの父親にそっくりだよ!あのろくでなしの薄情男にねっ!」 瞬間、司の身体がピクリと反応した。 ろくでなしの父親に似て――。 麗子はいつもそうだった。 司が少しでも彼女の意にそぐわないことをすれば、決まって父親の存在を持ち出してくる。 ――あの薄情男の息子だから。 何かある度にそう罵られ、時には手を上げられてきた。 まるで司
last updateHuling Na-update : 2026-09-08
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27話

真子はスマホから耳を離すと、戸惑ったように綾を見つめた。 「どうしたの?」と、不安そうに自分を見つめ返している綾に、真子は、 「わからない。急に切れちゃった」 綾は、ホッとしたように息を吐いた。 それから、わざと眉間にしわを寄せると、 「出るなって忠告したのに、何で電話に出ちゃうかなあ」 不機嫌な綾に、真子は苦笑した。 「出ないわけにはいかないよ」 綾は眉を下げると、 「昔はあんなに優しい人だったのにね…」 瞬間、真子の脳裏に、かつての優しかった頃の麗子が浮かんだ。 美しく、凛とした麗子のその姿は、幼かった真子にとって憧れの存在だった。 麗子は息子には少々厳しかったが、それは彼に常識ある人間に育ってほしいという願いがあったからだった。 彼女が誰よりも息子を愛し、大切にしていたことを、周囲の人間は皆知っていた。 そう、門脇麗子という人物は、愛に溢れた人だったーー 愛に溢れた人、だったのだ。 それなのに。 「私たち親子のせいで、麗子さんは変わってしまった…」 真子の呟きに、綾は首を横に振ると、 「真子と真子のお母さんは別々の人間でしょう!お母さんの罪はお母さんのものであって、真子には関係ない!それなのに、お母さんの罪を真子に償わせようとするなんておかしいよ!そんなの絶対間違ってる!」 綾は変わらない。 真子の母親が犯した罪を知ったあの時も、綾だけは真子に罪はないと言ってくれた。 いや、もう一人。 小森も、当初から真子は何も悪くないと言ってくれていた。 けどーー 「それでも、たった一人の家族だから…」 真子は眉を下げて笑う。 数年前に父が亡くなってからというもの、真子にとって血の繋がった家族は母親だけだった。 そんな母親とは、とあることから、何年も連絡が取れていない。 割り切って考えられたのならどれほどラクだろうと思う。 けれど、唯一の肉親なのだと思うと、どうやったって切り捨てられなかったーー 「血は水よりも濃いって、本当だね…」 苦笑する真子を綾は抱きしめた。 「真子、そろそろ自分を許してあげよう?真子はもう十分苦しんだじゃない。お母さんの身代わりになるのは、もうやめようよ…」 綾が切実にそう訴えるも、真子はただ黙っているのだった
last updateHuling Na-update : 2026-09-09
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28話

「プクプクちゃん、って」 真子は吹き出した。 リビングに着くと、真子は小森に座っているよう促す。 だが、勝手を知る小森は、冷蔵庫から麦茶のポットを取り出すと、食器棚から真子と自分の分のコップを取り出した。 「悠介くんは座っててよ」と真子が言っても、小森は「いいから、いいから」と、その後もあれこれと手を貸した。 「お味噌汁だけでも作っておいて良かった〜」 真子はお椀を片手に、お味噌汁をよそった。 するとーー 「え…作ってくれたの?僕と食べるために、わざわざ?」 感動した様子の小森に、真子は苦笑してしまう。 「悠介くんったら、いくらなんでも大げさすぎるよ…」 真子が作ったのは、冷蔵庫の有り合わせ。 なんてことない、なめこと豆腐のお味噌汁だった。 それなのに、小森の反応はまるで、彼の大好物を作ってもらったかのようだった。 「だって……なんだか、すごく嬉しくて」 声を詰まらせて、そう話す小森に、真子はなんだか申し訳なくなった。 こんなにも喜んでもらえるのなら、せめて出汁から取るだとか、もっとこだわって作れば良かった。 顆粒だしを使い、料理時間も、後片付けまで含めてわずか五分。 それなのに、そのお味噌汁を前にキラキラとした目を向けている小森が、真子には不憫に思えてならなかった。 「いただきます」 二人は向かい合って手を合わせる。 真子は小森がデパ地下で買ってきてくれたおいなりに箸を伸ばし、小森は真子が作ったお味噌汁を両手で大事に持ち上げた。 あむっ、とおいなりを頬張りながら、真子は小森を注視する。 小森はお椀をゆっくり傾け、お味噌汁を一口啜るとーー 「ああ、美味しい…」 ほう、っと息を吐く小森に、真子の心は、うっ、とダメージを負った。 どこか様子のおかしい真子に、小森は心配そうに、 「真子ちゃん、どうしたの?どこか痛むの?」 真子に駆け寄ろうと立ち上がった小森を、真子は手で制して、 「私の良心が痛んでるだけだから気にしないで」 小森はキョトンとしたが、真子はごまかすように笑ってみせる。 「そういえば…明日からだったよね、真子ちゃんが仕事に復帰するのって?」 真子は「…うん」と答えながら、穴子入りのおいなりを頬張った。 黙って、もぐもぐと口を動かす
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29話

真子は「そう?」と言うと、いくらと錦糸卵のおいなりを一気に頬張る。 「んっ!悠介くん、これすっごく美味しいよ!悠介くんも食べてみて!」 真子は感動したように小森を見つめた。 小森は微笑むと、 「うん、じゃあ僕もいただこうかな。と、その前に、お味噌汁をもう一杯いただいてもいい?」 「もちろん!悠介くんの口に合ったのなら、私もすごく嬉しい!けど…悠介くん、さっきからお味噌汁しか食べてないよ?」 困ったような顔の真子に、小森は、 「だってすっごく美味しいんだもん」 (もん、だって!こんなイケメンが、もん、だって‼︎) 小森の可愛さにノックアウトされた真子は、負けました、といったように苦笑した。 そして、小森のお椀を手に立ち上がる。 「真子ちゃん、おかわりなら僕が自分でやるよ」 慌てて立ちあがろうとする小森に、真子は首を振った。 「(萌えさせてもらったお礼に)ぜひとも私にやらせてください」 キッチンへと向かう真子の後ろ姿に、小森の顔が思わず緩む。 なんだか、今の自分たちはまるでーー だが、そこで彼は自分の考えを否定するように首を振った。 すると、隣の家から、ドアの鍵を開けるカチャカチャという音が聞こえてきたため、小森は無意識にそちらへ顔を向ける。 「お待たせ〜」 おかわりのお味噌汁を手に戻ってきた真子は、小森が壁を見つめていることに首を傾げた。 「どうかした?」 真子の問いに、小森は「たいしたことじゃないよ」と笑う。 「お隣さんが帰ってきた物音がしたから、何となくそっちを見ちゃってただけ」 小森の前に、そっとお椀を置いた真子は、彼のその何気ない一言に「え⁉︎」と驚くと、 「また逃しちゃったかぁ…」 そう言ってうなだれた。 テーブルに消沈したように突っ伏している真子に、小森が、 「真子ちゃん、逃しちゃったって、何を?」 真子はテーブルに突っ伏したまま、顔だけ少しずらして、 「私、お隣さんにどうしても謝らなきゃいけないことがあって…だからこの一週間、お隣さんに会える機会をずっと窺ってたんだけど、ことごとく失敗してまして…」 そう言うと、真子はため息を吐いた。 小森は首を傾げて、 「お隣さんに謝らなきゃいけないこと?」 「うん、そうなの。以前、私が失
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30話

小森のその質問に、真子はキョトンとしている。 小森は困ったように笑うと、 「あれ?僕何か変なこと聞いちゃった?」 真子も困ったように笑って、 「ん?あれ?今、悠介くん、お隣さんは一人暮らしの高校生って言った?」 「うん、言ったよ。言ったけど…それがどうかした?」 だが、真子はヘラヘラと笑うと、 「えー、うっそだ〜。お隣さんが高校生とか、冗談だよね?」 だが、悠介が眉を下げて自分を見つめている姿に、真子は口を閉じると、次に難しい顔をして額を抑えた。 「真子ちゃん?」 心配する小森に、真子はふーっと長く息を吐き出して、 「その高校生って、黒い学ランを着た、背の高い子?」 「ああ、うん。そうだね、その子で合ってると思う。けど、ねえ真子ちゃん?そろそろ、僕にもちゃんと分かるように教えてくれる?」 だが、自分の考えで頭がいっぱいだった真子には、小森の言葉が届かなかった。 代わりに、なんてこった、というように唇を噛む。 その学ランを着た高校生とは、時間が巻き戻る前にも、アパートの中で何度かすれ違ったことがあった。 なんなら、つい先日も階段ですれ違っている。 朝、可燃ゴミを出しに行った帰りに、階段で学ラン姿のその子とすれ違った。 「いってらっしゃい」と声を掛ける真子に、その子は決まって「っす」と、だけ返事をする。 その子の目にはいつも、さらさらの前髪がかかっていて、真子とすれ違う時は決まって目を伏せたまま、こちらを見ようとはしなかった。 思春期の男の子らしいな そんな風に微笑ましく捉えていたのだがーー キャラ、違いすぎませんか? 「真子ちゃんっ‼︎」 小森の強い呼びかけに、真子はビクッと反応した。 「ごめん、ごめん」と顔を上げると、小森がかなり焦ったような顔をしていたものだから、 「ごめんね」 と、真子は笑って、再度小森に謝った。 「僕の話、聞こえてた?」 どこか沈んだ声の小森に、真子は弁明するように、 「ごめん、ちょっと考え事してて…ごめんなさい、聞いてませんでした。ごめんなさい!」 真子は頭を下げた。 その後頭部を黙って見下ろしている小森だったが、ちらりと目線を上げて、自分を伺っている真子のその仕草に、思わず笑ってしまう。 真子は顔を上げると、
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