不意に九条征哉が立ち上がる。「俺の、婚約者?」そう言いながら九条征哉がゆっくりと歩き出す。その体に誰も逆らえないような強いオーラを発しながら。そして私の隣に並び立つと、私に聞く。「アイツはそう言っているが、美織はアイツを知っているのか?」そう聞かれて私は鼻で笑う。「いいえ、知らない人よ」そう言いながら私は九条征哉に手を伸ばし、その頬に触れる。「私はもう既にあなたと結婚しているの、そうでしょ?」九条征哉はそう言う私に微笑み、私の手に頬擦りしながら言う。「そうだ、美織は俺の女だ」私はそんな九条征哉に微笑む。「それに」そこで言葉を切って、瑛理香を見る。「彼女、妊娠しているみたい。ここの服は妊婦用には作っていないじゃない?」そう言って私は九条征哉を見上げる。「私が気に入らなかったドレスをあげても良かったんだけど、彼女が妊婦さんなら着られないものね」私がそう言うと九条征哉が鼻で笑う。「お前が気に入らなかったドレスは一般販売用に下ろしても構わないが、アイツらに買えるのか?」◇◇◇お姉様が私を馬鹿にしている……?両膝をついて懇願しているのに、お姉様は私に情すら掛けないというの!しかも嘲笑うような事まで言って……!許せない! 許せない!私はお姉様を睨みながら立ち上がり、適当に店の中のものを見繕う。目についたバッグを手に取る。「これを包んで」そう言いながらスタッフに差し出す。「瑛理香!」翔太が止めに入る。「何してんだよ! 止めろ!」私はそう言う翔太の手を払う。「お姉様に、あの女に馬鹿にされているのよ!? そんなの耐えられない!」そう言いながら私は自分のバッグの中からカードを出す。「これで」そう言ってカードを渡す。困り果てた様子のスタッフに、VIPルームの中から声がする。「カードを切ってやれ」九条征哉の声だ。忌々しい。スタッフはその場でカードを切る。けれどすぐに警告音が鳴る。「お客様、このカードは使えません」そう言われて思い出す。そうだ、私のカードは七倉のお屋敷に行った時のドレスの弁償金の為に、停止されているんだった……。そう思い、私は翔太を見る。「は? 俺?」そう聞かれて私は翔太に顔を近付けて言う。「今、カードを切れば、お姉様にも格好がつくわ」そう言うと翔太は一瞬、ジャケットの内ポケットを探ったけ
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