「ありがとう、ルリちゃん。ついでに秋明さんも」 秋明からは返事がない。ルリは嬉しそうに笑みを浮かべる。 正直まだ納得していないし、秋明が自分のことを考えてくれているかは疑わしい。だが、ルリのおかげで気持ちはだいぶ落ち着いた。 「エトワールには、俺から連絡しておいた。お前は今日から自宅待機だ。仕事は家でしてろ」 「……そうね、そうするわ」 デザイナーという仕事は、わざわざ職場に行く必要はない。職場でのやりとりは、誰が何を担当するかというものがメインで、リモートでも問題ない。 ただ、百合個人としては、職場にいた方が仕事モードに切り替えやすいし、通勤中にも色んな人の服を見れるので、出勤できたほうが嬉しい。 食事を終えると、百合はゆったりした服に着替えて、作業部屋に籠もった。ラフを描き、トルソーに着せるために生地を取ろうとして、以前渡されたプラスチックケースが視界に入る。 百合はケースを手に取った。中には色とりどりの宝石たちが輝きを放っている。 「ジュエリーデザイナーにならないかって、何回も言ってきたのって、もしかして……」 祖父はアレグリアという宝石店を起業し、成功した。そしてアレグリアは、父の誠司が亡くなってから、なくなってしまった。 何故潰れたのかは、まだ分かっていない。「もしかして秋明さんは、アレグリアを復活させようと?」 百合は作業部屋を出て、秋明の部屋に行く。ノックしようとすると、秋明の話し声が聞こえた。どうやら誰かと電話しているようだ。 「明日の商談には、俺も同行すると伝えてくれ。……当たり前だ。成功すれば5億は固い。うまく立ち回れば、それ以上の利益も……」 (仕事の電話? やっぱり、スケールが違うわね……) 百合は電話が終わるのを待ちながら、ドアの向こうにいる夫は、やはり別次元の人間だと思う。 5億も稼げる商談など、庶民の百合には想像すらつかない。 電話が終わるのを聞くと、ノックした。 「秋明さん、ちょっといい?」 「入れ」 秋明はオフィスチェアに座っていた。部屋に入ると、秋明の前に立つ。 「どうした?」 「アレグリアのこと、教えて欲しいの」 「……詳しいことはまだ言えないが」 そう前置きをすると、アレグリアについて話し始める。アレグリアは百合の祖父が起業したこと、人気があったのは、値段の幅広
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