「話は以上だ」 秋明は書斎に入っていく。百合は出されたチョコやオレンジジュースを口にしてから2階に行った。 入浴後、百合はひとり用寝室で、パスポートの取得方法を調べてから眠った。 1ヶ月後、広々とした会場で、百合は白いマーメイドドレスを着て、秋明の隣に立っていた。 壇上で挨拶をした後、秋明と一緒に挨拶をして回る。秋明は誰が何をしている人なのか教えてくれるが、百合はそれどころではない。(どうしてあの紋章がここにあるの?) ちらりと壇上を見る。壇上のバックには妻夫木家の紋章旗が飾られている。その紋章は、以前母から受け取ったシグネットリングに刻まれていた獅子の紋章と同じデザインだ。(母さんは、私は、何者なの?) そのことが気になって、パーティーどころじゃなかった。「百合、大丈夫か? ぼーっとしてるけど……。もしかして、具合悪い?」 秋明は気遣わしげに百合の顔を覗き込んでくる。「ごめんなさい、緊張しちゃって……」「そうか、こういう場に慣れてないもんな。百合ならすぐに慣れるさ」「そうだといいけど……」 百合は隙を見て、紋章旗の写真を撮った。(調べなきゃ……。これは流石に、偶然で片付く問題じゃない) 撮った写真を確認すると、秋明の元へ行き、良き妻を演じた。 パーティーが終わってリムジンに乗ると、百合は背もたれに身を預けた。(私には、慣れそうにないわ……) 社交の場には何度か顔を出しているが、おべっかの言い合いにも、きらびやかな会場にも慣れない。落ち着ける場所がなくて、息が詰まりそうになる。「百合、俺に何か隠してるな?」 鋭い視線と言葉を投げかけられ、ドキッとする。その顔はさっきまでの理想の夫から、冷徹な財閥会長に変わっていた。「隠し事はするな。契約違反だ」「ここじゃちょっと……。帰ったら話すわ……」 百合は紫苑と運転席をちらりと見てから言う。「分かった」 それ以上
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