梓が闇金生活を初めて約半月後の夕方。秋明は仕事から帰ると、百合に向き直る。「今夜、斎賀梓がうちに来る。何か掴んだらしい」「いよいよね……」 妻夫木財閥を陥れようとしている者の中に、熊谷矢絃がいる。そう思うだけで、緊張で喉が干上がっていく。「落ち着け。ここに来るのは矢絃でも、マキでもない。斎賀梓だ」 秋明は百合の手を握りながら言ってくれる。「そうよね、ありがとう……」 返事をするも、不安は拭いきれない。 夜21時。インターホンが鳴る。百合が出ようとしたが、秋明に止められ、彼が対応した。 数分後、秋明は梓を連れて戻ってきた。「残念ながら、山本さんからの接触はありませんでしたが、引き抜きがありました」 梓はボイスレコーダーを出し、再生ボタンを押す。『エトワールの斎賀梓サン?』 ゆったりした関西訛り。この声と喋り方に、百合も秋明も心当たりがあった。「中務か……」 秋明はぽつりと呟き、苦虫を噛み潰したような顔をする。もう害はないと思っていた相手が、妻夫木財閥をじわじわと削っていたのだ。そんな顔にもなるだろう。『聞いたで。アンタ、最近遊び回っとるんやって? 闇金にも手ぇ出したんやろ?』『どうして、そんなことを……』『なんでやろなぁ? なぁ、借金肩代わりしたろか?』『え?』『おっと、もちろんタダではせぇへんよ。それ相応のことしてもらわな』『何をすればいいんですか?』『なぁに、そない難しいことやあらへん。和ニカケに転職すればええんや。エトワールで採用決定しとるファッションデザイン画のお土産付きでな』『そんな……! エトワールを裏切るだなんて、私には……』『すぐに答えは出せへんよなぁ。大事な会社やし。せやから、猶予あげるわ。その気にな
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