「そのあと、潰れちゃったんでしょ? アレグリア。君も、君のお母様も、苦労なされただろうね」 春哉の言葉自体は同情に満ちていたが、言い方に棘がある。ショックで何も言い返せずにいると、春哉は再び口を開いた。「ところで君は、いつまで秋明の手のひらの上で踊ってるつもりだい?」「なんのこと?」 強気で出たつもりが、声が震えてしまった。春哉はそんな百合を見て、優しく笑う。「本当に、何も知らないんだね。僕が真実を教えよう」 春哉は懐から封筒を取り出した。中には写真が入っている。春哉はその写真達を、百合の前に丁寧に並べながら説明した。「これは、秋明の部下が熊谷の浮気現場を押さえてるところ」 矢絃とマキが、腕を組んでホテルに入ってるところを、男が物陰から撮影している。この写真に写った矢絃とマキの服装や場所には、百合も見覚えがあった。「これは、部下が秋明に写真を渡しているところ」 1枚目の写真で浮気の証拠写真を撮っていた男が、秋明に封筒を手渡している。「そして、熊谷家のポストに、秋明がその写真を入れてるところ」 3枚目の写真は、秋明が熊谷家のポストに封筒を入れているところだった。(そんな、流産の原因を私に突きつけたのが、秋明さんだったなんて……)「兄の僕が言うのもアレなんだけど、秋明は恐ろしい男だよ。欲しいものを手に入れるためなら、手を汚すことさえ厭わない」「そんな……」「可哀想に。その様子だと、秋明には随分飼い慣らされてしまったんだね……。君が嫌じゃなかったら、僕が保護するよ」「保護……?」「弟の尻拭いさ。君がどんな理由で秋明といるのか知らないけど、ただ単に、優しくされて騙されたってわけでもないんだろ?」「えぇ、まぁ……。そうですけど……」 百合は視線を彷徨わせる。心を通わせるようになってきたが、契約結婚していることに変わりはない。
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