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89話

Author: 東雲桃矢
last update publish date: 2026-08-28 11:00:51

 上を見ると、南京錠がついていた。

「そんな……!」

 絶望に打ちひしがれていると、腕を掴まれる。

「来い、話がある」

 百合はその腕を振り払おうとするが、成人男性に力でかなうはずもなく、振りほどけない。

「いや! 離して! あなたなんかといたくない!」

「百合、頼むから俺に強硬手段を使わせないでくれ」

 強硬手段という言葉に、感情が冷えていく。軽蔑は怒りに変わり、爆発する。

「強硬手段ですって? 脅しのつもり? 本当に最低!」

「違う! 話を聞けと言ってるだろう! 俺は話を聞いてほしいだけだ!」

「へぇ、話ねぇ。言っておきますけどねぇ、私は少し前まで、母が財閥の生き残りだったって知らなかったの。祖父の遺産の在り処も、暗証番号も知らないの。遺産欲しさに私と結婚したんでしょうけど、あてが外れたわね。分かったらさっさと離婚したらどうなの!?」

「はぁ、分かった。いくらでも時間をやる。だから、冷静になってく

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