Masuk***「辰之、話がある。ちょっと来い」 若林先輩が僕の首に赤い痕を残したせいで、自宅に帰って来た兄貴が首筋に指を差しながら、ここぞとばかりに僕に向かって突っ込んだ。(あーあ。突っ込んでほしいのは、兄貴のち〇ぽだけだっていうのにな――) 目敏くキスマークを見つけた兄貴は、ムッとしながら僕の腕を引っ張り、強引に自室へと連れ込む。扉が閉まったのを機に、兄貴から口を開いてなにかを言いかけたので、すかさずベッドにあがって四つん這いになってみせた。「辰之、なにしてんだ」「なにって、こういうコトをするために、わざわざ僕をここに呼んだんじゃないの? 兄貴とのバック、すっごく気持ちがよかったしね。二回目とは思えないくらいに、僕のナカで弾けたでしょ。兄貴としては、正常位よりも気持ちよかったのかなって」 笑いながら流暢に説明し終えた途端に、兄貴の頬が真っ赤に染まった。図星をついた発言ができたことに満足しつつ、兄貴の枕に顔を押しつける。大好きな匂いを思いきり嗅いだ。「そんなことよりも俺だけじゃなく、箱崎だって心配してるんだぞ。今日、部活が終わってからアイツに呼び出された」「箱崎がどうして……」「おまえの首のそれ、結構目立つからさ。若林先輩に呼び出されたあとにつけられたのがわかって、どうして黒瀬先輩は若林先輩を紹介したんですかって、箱崎に食ってかかられた」 兄貴のしょんぼりした声を聞いたせいで、仕方なく枕から顔をあげる。第三者が絡むと、余計に面倒くさくなるのは目に見えていた。それゆえに、僕の口からは文句しか出てこない。「ただの友達の箱崎に心配されても、僕にはどうにもならないっていうのにね。全部兄貴のせいなのに!」「そうだ、俺のせいだ。若林先輩に呼び出されたときに、どうして俺に頼らなかったんだよ」 ベッドにうつ伏せに寝転ぶ僕を無理やり起こしたと思ったら、ぎゅっと抱きしめてくれた。「兄貴?」 苦しいくらいの兄貴からの抱擁で僕の頭がバグったのか、目の前がチカチカした。ただ抱きしめられているだけなのに、下半身はカタチが変わってしまう始末。呼吸すら普通にできなくて、口ではぁはぁしなければならないくらいだった。「宏斗、兄さん……」
上目遣いで口を半開きにしたまま、若林先輩の肩に両腕をかけて、いやらしく腰を動かす。 僕の躰は兄貴だけのもの――この人と肉体的な関係を築くより、玩具という道具でプレイしたほうが、まだ穢れずに済むと考え、淫靡に乱れる姿をあえて見せつけてやった。「あっ…ああん! やぁっあっ…んぁっ……」「きーまり! バイブにするわ」 喉仏を動かしながら生唾を飲んだ若林先輩の選択に、思わず笑いだしそうになる。自分なりに甘い喘ぎ声をあげつつ、イキたいのを我慢してますという顔を必死に作り込み、道具を選ぶように誘導したのが功を奏した。「辰之くんがバイブの振動で感じてるところ、すっごく楽しみにしてる」「頼むから、バイブの振動を最強にしないでよ」「あまりの気持ちよさに我慢できなくなって、どこかへ行ったり、俺から逃げようとしたらそうするかも」 若林先輩がセリフを言い終える前に、予鈴が教材室に響き渡った。僕は慌てて、開けているワイシャツのボタンをはめる。「はいはい。若林先輩から最終攻撃をされないように、それなりに頑張りますよ」「そうやって無理して意地はってるところ、俺の好みだけどな。さっきだって、相当感じていただろう?」 名残惜しいと言わんばかりに僕の首筋に顔を寄せて、チリっとした痛みを肌に残した。嫌なそれを右手で拭ってから、教材室をあとにする。あからさまに冷たい態度をとる僕を、若林先輩はどんな気持ちで見つめていたかなんて、知る由もなかった。
「んんっ…っぁ! や…め…っんん……ぁ」「やめてじゃない、もっとだろ?」 割れ目を弄っている指先が、尻穴をコアに刺激する。ただでさえ疼いているところをぐりぐりされると、ほしくて堪らなくなった。「時間っ…ないのに、そんなこと…い、ぃうわけないでしょ」 しかしながら、ほしがっているのを悟られるわけにはいかない。「遠慮せずに言えって。早く挿れてくださいってさ」 今こういうことをされているのは、他人の手を借りたオナニーだと思い込んだ。僕が心の底から欲して止まないのは、兄貴だけなのだから。「そうだ、いいこと思いついた。俺が来る前に辰之くんが授業中にトイレに行って、解しておけよ。そしたら、すぐに挿れられる!」(冗談じゃない。他人のを受け挿れるために自ら解すなんて、やってられるか。どうやって卑猥なお願いを、うまく回避できるだろうか)「若林先輩っ、バイブとソレのどちらかを選んでくださぃっ…んあっ!」 さらなる快感を求め、腰が勝手に上下に揺れてしまった。このまま気持ちよさに身をまかせたいというのに、無理難題を思いつく若林先輩のせいで、思うように集中できない。「え~っ、究極の選択じゃないか。困ったな……」「あっあっあっ…んっ…は…ぁっ……!」
「……本当にヤるんですか?」「だってこんな短い時間じゃ、辰之くんの中を解すだけで終わるだろ。どんなに頑張っても、早漏の俺だって無理な話」(いやいや、記録更新すべく頑張ってみればいいのに。僕の予想では、ちゃっちゃと解してぱっぱと挿入し、サクッとイけるって。だって若林先輩は超早漏でしょ!)「だからさ、リモコン型バイブを辰之くんの中に挿れて、俺がブルブルさせたいタイミングで、スイッチオンするわけ! 何度もブルブルされて我慢できなくなった辰之くんが俺のをほしがって『若林先輩、お願いっ! 早くちょうだい!』とまぁこんなふうに、自ら強請る展開にいけたらなぁと」 耳元で最初に語られた『小型バイブを仕込みたい』という卑猥なセリフだけでもおいおいと思ったのに、詳しく説明される内容に顔の片側だけ歪むのがわかった。 そんな僕の表情で感じていると勘違いしたのか、若林先輩の責めが激しくなっていく。胸の頂きに触れていた指先が強く先端を摘まんだせいで、腰から下がじんじん疼いた。「あっあっ…若林先輩の好きなタイミングでブルブルしたら、授業に集中できなくて疎かになるっ」「1階から3階まて飛ばせるような、高性能なリモコンじゃないから安心しろ。まぁそれでも同じフロアにいたら、震わせることができるけどな」「うわぁ……。休み時間毎に、わざわざここまで上がって来てスイッチを押して、教室の外から僕が耐え忍ぶ姿を覗き見るわけか。悪趣味を極めてる!」 開けたワイシャツをズラして乳首を露にしたと思ったら、舌先でぺろぺろする。「あぁん、くすぐったい」「くすぐったいだけじゃないくせに。ココとアソコを硬くして」 山のような教材の壁に僕の躰を押しつけ、乳首を食みながら下半身に触れられた。前の手はち〇ぽの根元をやんわりと扱くように、後ろの手は割れ目をなぞるように強く触れていく。「ん、ふ、あぁ……」「この間のように、嫌がらなくてもいいんだよ。もっと淫らになってみてくれ」「充分に淫らだと思いますっ…けど。ぁっ…っぁあ」「やっぱあれか。黒瀬に操たててるから、全力で楽しめない感じ?」 そんなものを壊してやると言わんばかりに、前を弄る手の力が強められた。
先に入室した若林先輩が僕に抱きつこうとしたが、素早く身を翻して山のように積まれている教材の隙間に視線を飛ばしてチェックをはじめた。「辰之くん、なにをやってるんだ。俺の相手をしてくれ」「少しだけ待ってください。この間のように盗聴器を仕掛けられていたら、ふたり揃って誰かに脅されるかもしれないんですよ」 節操のなさにうんざりしつつ、たくさんの教材を見渡しながら盗聴器を探していく。 僕なりにしっかり注意をしたというのに、若林先輩は探し物をする僕の背後から両腕を伸ばし、躰をまさぐりながらうなじにキスを落とした。ぞくっとする唇の感触に、頭を振ってやり過ごす。「辰之くんとなら、どんな噂をされてもかまわないけど」「あんな派手な呼び出しされた時点で、尾ひれがついた噂をされそうですけどね。ンンっ!」 若林先輩のいやらしい手の動きで感じてしまい、探し物をする集中力が一瞬で削がれた。(くそっ! 大事なときだっていうのに、敏感な自分の躰が疎ましい……)「いい匂い。こっちを向いて」 首筋を執拗に責めることに飽きたのか、僕が振り返る前に強引に振り向かせ、ぐぐっと顔を寄せる。「キスはダメですよ!」 目の前に迫った唇を、右手でやんわりと塞いだ。油断も隙もありゃしない。「俺、キスはうまいよ。挿れたくなるくらいに、感じさせてあげる」 キスを強請っているくせに僕の尻を揉みしだく感じで、念入りに両手を使って撫でまわされた。「だったらなおのこと、遠慮させていただきます」「ふーん。辰之くんがそういうつもりなら、俺にも考えがある」 含みのあるまなざしに嫌な予感しかしない。黙ったまま若林先輩の唇から、静かに手を退けた。「辰之くんとのデートは、明日のこの時間だろ?」「はい、そうですけど……」「キス以外は、なにをしてもいい約束だったよね。だからさ――」 わざわざ耳元に寄せて楽しげに語られたセリフの続きに、顔を歪ませるしかない。 若林先輩は、告げられた言葉に絶句して固まる僕のワイシャツのボタンを数個だけ外し、片手を忍ばせて胸の頂きに触れる。「辰之くんとの短い逢瀬の時間を、俺なりに楽しませてもらうから」
*** 兄貴の気を惹くためとはいえ、正直なところ僕自身も他人に躰をあまり触れられたくないこともあり、若林先輩を呼び出すときは、短い休み時間を利用することにした。1階にある三年の教室から3階の一年の教室に移動するだけでも、時間を稼ぐことができるのはラッキーだと言える。「辰之くん、行くぞ!」 教室の扉を開けた瞬間なされた、下の名前での呼び出し。逢瀬の時間が刻々となくなっていくのもあり、若林先輩が焦っているのが丸わかりだった。 しかしながら教室に顔を出した相手が三年生ということで、自然と目立ってしょうがない。この状況に僕は渋々といった様子で自分の席から腰をあげて扉に向かおうとしたら、箱崎がいきなり腕を掴んで引き止める。「黒瀬、どうして若林先輩に呼び出されたんだ。今まで接点がなかっただろ」「兄貴経由でちょっとね……」「黒瀬先輩経由? だったら、なおのことおかしいって」 箱崎の行かせたくない気持ちが、僕の腕を掴む力に表れていた。(これが兄貴だったらよかったのに――)「箱崎が心配するようなことは、本当になにもないよ。進路について、ちょっと相談にのってもらってるんだ」「進路?」 さらに眉根を寄せて僕を見下ろす箱崎を説得しようと誤魔化す言葉を考えたそのとき、目の前に現れた人物の大きな背中が視界を遮った。「邪魔邪魔! 箱崎ぃ、とっとと辰之くんから腕を放せよ」 かなり焦っているのだろう。いつの間にか若林先輩は堂々と教室の中まで入り込み、箱崎の腕を掴んで僕から引き離すなり、攫うように連れ去る。「黒瀬っ!」「箱崎大丈夫だよ。行ってくるね」(音楽室での交渉後、短い時間で三発イった早漏の若林先輩が僕にナニをするのか。そこのところに興味があるし……) 作り笑いしながら力なく手を振る僕を、箱崎は歪むような苦しげな顔のまま見送った。若林先輩がバイなのを知ってるゆえに心配して、ああやって止めに入ってくれたのだろう。 僕は若林先輩に手を引かれて、3階の一番奥にある誰も来ないであろう教材室に連れ込まれた。登校後に盗聴器のチェックを入念に済ませていたが、空き時間に仕掛けられていたら朝のチェックが無駄になる。
*** 部活を終えた兄貴と馬鹿女が向かった先は、市立図書館の自習室だった。 図書館の奥にある自習室が見渡せる本棚の隙間に、うまい具合に体を隠し、ふたりの様子をじっくりと窺う。他にも来館している客がいるので、派手な行動をするとは思えないけれど、相手はあの馬鹿女。油断するわけにはいかない。 兄貴は馬鹿女の横で楽しそうにノートを指さしつつ、ささやき声でなにかを話しかける。僕に向けてくれるのとはあきらかに違う笑みに、胸の奥が軋むように痛んだ。(クソっ、あんな女にそんな笑顔で話しかけるなよ……) どうにも見ていられなくなり、本棚に背中を預けて天井を仰ぎ見た。奥歯をぎゅっと噛みしめながら、持っ
*** 兄貴が部活を終えるまでの時間を使って、この間女子トイレに仕掛けた盗聴器の中身を確認すべく、目立たないであろう図書室の隅の席で聞いていた。(前々回と前回は空振りに終わったけど、今回はどうだろう……) 期待を胸にイヤホンから流れる女子の会話を耳にしつつ、机の上に広げたノートにその内容を端的に書き記した。僕の姿を傍から見る分には、熱心に勉強しているように見えるだろうな。 いろんな女子からもたらされる噂話や愚痴を聞いている最中に、衝撃的とも言える話は突如はじまった。 早口でまくしたてる甲高い声に反応し、相槌する者は僅かだったが、信じられない内容にめまいがしてきた。どうにもメモする気
*** 昼休みが終わる直前になって、先にノートを貸していた箱崎が済まなそうな顔で僕の傍にやって来た。「黒瀬、ノート助かったよ。今日は彼女と遊ぶ約束してたから」「ということは、部活をサボる気だな?兄貴に言いつけてやろーっと」 ノートを受け取りながらふざけ半分で脅した途端に、箱崎は両手を合わせて拝むポーズをとる。「頼むから黙っててくれって。今日は彼女の誕生日でさ、どうしても長く一緒にいてあげたくて」「はいはい、惚気けるのはそれくらいでストップ。見逃してやるよ」「ノートからなにからサンキューな。さすがは黒瀬先輩の弟!」「褒めてもこれ以上なにもしないし。同じ彼女持ちでも、兄貴は部活を
***『お母さん、今日遅くなる。友達と勉強することになった』 帰りが遅くなってもいいネタを、昼休みになってから義母宛にLINEを送った。兄貴の頭の中では今朝僕の行動を耳にしているおかげで、いつもどおりの時間に帰宅していることになっている。だからこそ慎重に兄貴のあとをつけて、絶対に見つからないようにしなければならない。(兄貴は部活が終わったあとに、友達と勉強会の予定。だけどそこは友達じゃなくて、彼女の可能性が高い。学校の図書室はすでに閉まっているから、市立図書館の自習室で勉強をするのか。あるいは――) こうして頭の中を兄貴でいっぱいにするこの時間が、結構好きだったりする。僕と一緒にいな