聡祐が澪に目を留めるとは、その場の誰も予想していなかった。ただ一人、征司だけはまるで他人事のようだ。聡祐に多くを言うこともなく、目を伏せて淡々と言った。「先に美術品でも見に行こう」紗耶は黙ったまま、意味ありげに眉を動かした。男というものは、たとえ愛がなくても、自分の妻に対しては多少なりとも独占欲を持つものだ。ほかの男が少しでも近づくことを、普通なら面白く思わない。もしその程度の独占欲すらないのなら、もう無関心を通り越して、心底どうでもよくなっているということだ。知之はむしろ、澪がその場を離れていてよかったと思った。征司のこんな冷たい一面を見ずに済んだのだから。知之にはとても受け入れられないが、それでも軽く頷いた。「俺も少し見て回ります」聡祐はどうぞ、と手で示した。彰人だけがその場に残り、目を細めて聡祐を見た。「お前、本気か?一目惚れしたって」聡祐は笑い、グラスを掲げた。「男と女のことだ。そんなに大げさに考えるものでもないだろ。気が合えば付き合うし、合わなければそれまでのことだ」その言い方はどこか軽かった。彰人も一瞬、言葉を詰まらせた。彼はただ、澪の見た目が気に入っただけで、一時的な関係を持ちたいだけなのかもしれない。だが、たとえ征司が気に留めないとしても、森宮家の妻が何か不埒な真似をすることは許されない。彰人は周囲を見回し、声を落とした。「聡祐、恋をするなら誰としようが構わない。あの女だけはやめておけ」「分かった。じゃあ、その相手が誰なのか教えてくれ。彼氏なのか夫なのか知らないが、独身じゃないと言うなら、名前くらい出せるだろ」そう言われると、彰人は言葉に詰まった。征司本人が澪を妻として表に出す気がない以上、自分が勝手に明かすわけにはいかない。しかも、今日は紗耶もいる。ここで明かせば、誰にとっても気まずい場になる。彰人は眉をひそめた。聡祐は彼のグラスに軽く自分のグラスを当てた。「まさか、お前も彼女を気に入ったから、わざと独身じゃないなんて言ってるんじゃないだろうな」それ以外の理由なら、聡祐には思いつかなかった。「ふざけんなよ。そんなわけないだろ」彰人は眉を寄せたまま、軽い口調で言った。「あの女は、お前には合わない」彰人には、それ以上のことは言えなかっ
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