جميع فصول : الفصل -الفصل 90

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第八十二話

 グラスを受け取る。口をつけた。苦味のあとに、炭酸が抜けていく。「……美味しい」「だろ?」 圭はもう一口飲んだ。 すると斗真の手が伸びてきた。指先が、圭の口元に触れる。「ソース」 指で拭われる。斗真はその指についたソースを舐めた。「たく、お前は昔からその抜けたところがなぁ」 笑いながら言う。 圭は少し戸惑いながら、自分の口元を左手で拭った。その手を、斗真が手拭きで包むようにして拭いてやる。「右手、良くなったみたいだけど」「うん」「まだ左手中心だな」「そうだね。つい、左手で何でもしようとする癖がついて」「左手だけで何でもできるってのも器用だよな。デザインだって左で描けてる」「この数年で……かな。まだまだだけど」 圭は笑った。斗真が一瞬、黙る。「……すまん。仕事の話、こういうところでするもんじゃなかったな」「いいですよ。別に」 圭はグラスを口に運んだ。さっきよりも、少しだけ大胆に飲む。「美味いか?」「ええ」 圭はグラスを置いて笑った。「最高です」 斗真が少し意外そうな顔をした。「……笑った君、初めて見たよ」「そうですか?」「ああ。宙の隣にいた時も、あんまり笑ってなかった」 その名前を聞いて、圭の表情がほんの少しだけ止まった。「……そうでした?」「そうだったよ」 斗真はビールを一口飲んだ。「いつも周りを見てた」「周りを?」「宙が何してるかとか。誰と話してるかとか」 圭は返事をしなかった。 図星だった。「まあ、今はいいけど」 斗真はそれ以上追及しなかった。 その代わり、少しだけ身体を圭のほうへ向けた。「今日はどう?」「何がですか?」「楽しい?」 圭は店内を見渡した。 相変わらず音は大きい。煙草や酒や香水の匂いもする。自分には場違いな気もする。 それでも。「……はい」 少し考えてから、圭は答えた。「思ってたより」「ならよかった」 斗真が笑う。それから少し間を置いて、「圭はさ」「はい」「こういうところにいる時くらい、難しいこと考えなくていいんじゃない?」「……難しいこと?」「仕事とか、手のこととか。宙のこととか」 圭の指が、グラスの縁で止まった。「今日は忘れろよ」 斗真の声は、不思議なくらい穏やかだった。「俺がいるんだから」 圭は斗真を見る。 その言葉に、
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第八十三話

 圭は慌てて身を引いた。 その拍子に、手にしていたグラスが傾く。 飲み物がテーブルにこぼれ、さらにシャツの胸元にもかかった。「あらあら、やっちゃったねー……」 斗真が苦笑する。「ごめんなさい。びっくりして……」「ほんと、いつも謝ってばかりだな」「……」 何気なく言われた言葉だった。けれど、圭はそこでふと黙った。「圭さんって、俺より年上だろ?」「……はい」「宙よりも」 その名前に、圭の指が止まる。「なのに、いつも年下の俺たちの顔色ばっかり見てる」「……」「何かあるとすぐ謝るし。相手が悪くても、自分が悪かったんじゃないかって顔する」 圭は俯いた。否定できなかった。 宙といた頃は、特にそうだった。相手の機嫌を損ねないように。 怒らせないように。嫌われないように。いつも先回りしていた。「……そんなに、ですか?」「そんなにだよ」 斗真は笑った。「だから、今日は俺のことなんか気にしなくていい」「……」「帰りたくなったら帰ればいい。もう少しいたいならいればいい」 その言葉が、妙に心に残った。 帰る、帰らない。 どちらも自分で決めていい。 そんな当たり前のことを、最近の圭は忘れていたような気がした。 身体が熱い。 久しぶりに飲んだ酒が、思った以上に回っている。それでも、頭のどこかは妙に冷静だった。「……斗真さん」「ん?」「さっきの……」「キス?」 斗真はあっさり言った。圭は小さく頷く。「嫌だった?」「……分かりません」「そっか」 斗真は、それ以上聞かなかった。ただ、圭の濡れたシャツを見る。「着替えたほうがいいな」「大丈夫です」「大丈夫じゃないだろ」 斗真が笑う。「風邪ひくぞ」 そう言って、圭の肩を軽く叩いた。 その距離が、さっきまでより近く感じた。けれど今度は、圭は身を引かなかった。「……帰ります」 そう言ったものの、立ち上がった瞬間に足元がふらついた。「おっと」 斗真が腕を支える。「大丈夫か?」「……はい」「全然大丈夫じゃないじゃん」 斗真が苦笑した。「久しぶりの人に飲ませるんじゃなかったな」「自分で飲んだんです」「そうだけど」 斗真は圭の左側へ回った。「ほら。こっちなら左手で掴めるだろ」 圭は差し出された腕に左手を添えた。「……ありがとうございます」 店
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第八十四話

 部屋に着くと、斗真は水を差し出した。「飲め」「ありがとうございます」 圭は水を飲んだ。 さっきより少しだけ意識が戻ってきている。そのとき、ふと斗真と目が合った。「……さっきのこと」「キス?」「……はい」 斗真は圭を見る。「嫌だったなら、もうしない」 圭は答えられなかった。嫌だった。そう言い切れるほどではなかった。 むしろ……あの瞬間だけ、何も考えずにいられた。「……もう一度」 圭の声は小さかった。「え?」「……キスしてもらっても、いいですか」 斗真はしばらく圭を見つめた。そして、ゆっくり近づく。 今度は圭も逃げなかった。 唇が重なる。さっきよりも長い。圭は目を閉じた。 海斗の顔が、一瞬だけ浮かぶ。 けれど、その記憶から逃げるように、圭は斗真の服を掴んだ。 斗真がその手を見た。 そして、圭を見つめる。「……圭」「……はい」「本当にいいんだな?」 圭は小さく頷いた。「……はい」 その返事を聞いた斗真は、圭を抱き寄せた。 その腕の中で、圭は目を閉じる。 安心したかった。 何も考えたくなかった。 誰かに必要とされたかった。 ただ、それだけだった。 そして斗真は、そんな圭の気持ちを知っているように、静かに笑った。「……ずっと、こうなるのを待ってた」「……え?」 圭が顔を上げる。斗真は少しだけ目を細めた。「君を手に入れたら、あいつに勝てる気がしてたんだ」「……あいつ?」 聞かなくてもわかっているが……「宙だよ」 その名前を聞いた瞬間、圭はやっぱり、と。でも勝てる気がする、その気持ちがわからなかった。二人は仲良さそうに見えたからこそ……。「俺は、あいつには何をやっても勝てなかった」 斗真は笑っていた。 けれど、その目だけは笑っていなかった。「だから……いつか、あいつが一番大切にしていたものを、俺が手に入れてやろうって思ってた」「……」 圭は何も言えなかった。「下僕として粗雑に扱いながらも自分の手から離れるのが怖かった。あいつはそれが怖くて意思とは反対の行動をとっていた……本当にひどいやつだ……君の扱いを見てたらとても可哀想でならなかったよ」 自分の身体を抱く斗真の腕が、ほんの少しだけ強くなる。「でもまさか、本当にこうなるとは思わなかったけどな」 ふと圭は思った。それを聞いて
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第八十五話

 圭は夢の中で過去のことを思い出していた。 よくある過去を思い出す夢だ。 何度か斗真が自分と宙がしているところを見ていた、という話を聞いたからだろうか。 確かに何度か斗真に見られていたと言う自覚はあった。それもそのはず、宙は見せつけていた気もする。 そう思えば宙と斗真は友達やビジネスパートナーではなくライバルだったのだと、今思えばそう思う圭。 あれは斗真が主催した宙の誕生日会と称したパーティだった。 とあるバーを貸し切ってシャンパンタワーもやって……いろんな男女がいた。 店の雰囲気も良いのかカップルだったり初対面の男女が酒やタバコも交じれば良い雰囲気になりVIPルームやトイレではキスだけでなくそれ以上の行為をしてる者もいた。 宙は圭以外の男ともキスをしていたが圭がいる手前、相手は控えめだった。 圭は相変わらず騒がしいと思いながら座ってたらグラスを落としてしまった。 周りの人が振り向く中、宙は「気分下がるんだよなぁ、圭」 と言う。 謝っても宙の機嫌は良くない。 右手が使えたらグラスだって落とすことは無かった……と右手の震えを左手で押さえた。「おい、こっちにこい」 しまった、と圭は震える。きっとこれは……と。夢なのにこの震えは止まらない。 わかってる、このあと自分をどうするかなんて。 空になったVIP席を閉めてソファーにどかっと座った宙。 自分はどうすべきか知ってる。彼の機嫌を良くするために……。「声を出すな」 そう言われても出てしまう。 注意されるたび太もも叩かれる圭。 机に左手をだらんとさせて四つん這いになる。だんだん速度が速くなり「あんっんんんん……」「だから声出すな!」 今度は尻を叩かれる。痛い、ジンジンする……圭はいろんな痛みに息が荒くなる。 そこに斗真がやってきた。 と同時に宙は果てた。圭も遅れて……机の上に放り出される。「……わりぃ、お取り込み中だったか……主役がどこ行ったかと思ったら」 圭は下半身に何も纏っていないことに恥ずかしさを覚える。「今すぐいく」 宙は手早くズボンを履いてタバコに火をつける。「おい、圭くんはこのままかい?」「粗相をするやつはほっとけ。こいつがいると台無しだ」 そう言って去っていく宙。圭はなんとかして頭を上げると蔑んだような顔をして見てる斗真と目が合った。 …
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第八十六話

 気がつけば、意識が落ちていた。「起きろ……」「……」「起きろって」 肩を揺すられ、圭はぱっと目を開けた。「……え?」 目の前に斗真がいる。いつの間に起きたのだろう。「仕事だぞ。今日も」「あ……はい……分かってますって」 圭は身体を起こした。 昨日着ていた服を見る。 当然、スーツではない。 スーツは自宅だ。「……どうしよう」「俺のクローゼットから適当に着てけ」 斗真が欠伸をする。「あ、宙からお下がりでもらったやつもあるけど?」 その名前を聞いた瞬間。 圭の表情が固まった。「……いえ」 首を横に振る。 朝から宙の名前を聞きたくなかった。「じゃあ、こっち」 斗真が服を選ぶ。 圭は借りた服に着替えた。身長はそこまで変わらない。 それでも、ところどころサイズが合わない。 鏡を見ると、自分の身体に斗真の服が乗っていることが妙に生々しく感じられた。「完全オーダーだからな」 斗真が自分のスーツを整えながら言う。「圭くんも、もう少し鍛えたら胸の辺り綺麗にラインが出て、格好よく着られるよ」 圭は鏡越しに自分を見る。 細い身体。 そして、斗真の身体。「……鍛える……」 その言葉が、妙に頭に残った。「よかったら……」 圭は振り返る。「ジム、どんなところか教えてください」「ん?」 斗真が少し驚く。「まあ……いいけど」 その返事を聞いて、圭は少しだけ笑った。 そのとき。 腹が鳴った。「……朝ごはん」 斗真が笑う。「駅前のおにぎり屋。朝食セットがあるんだよ」 まだ少し二日酔いが残っている。 頭は重い。 けれど、腹は空いていた。 いつもなら、自分か海斗が朝食を用意している。今日は違う。 それだけのことなのに、不思議な感じがした。 スマートフォンを見る。 また海斗からのメールが目に入った。『おはよう。晩御飯はどうしたかな? 朝ごはんは作り置きあるから大丈夫だよね?』 胸の奥が痛む。圭は画面を見つめた。 返信しなくてはいけない。 でも、言葉が出てこない。「行くぞ」 斗真が玄関へ向かう。「あそこ、結構混むんだよ」「は、はい……」 圭もスマートフォンを握ったまま立ち上がる。 そのそっけなさに、なぜか虚しさを感じた。 昨夜とは違う。あまりにも普通だ。まるで、何事もなかったかのよ
last updateآخر تحديث : 2026-10-05
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第八十七話

 海斗が帰ってきたのは昼過ぎだった。 オフィスに戻ってきて他の社員たちから労われている。 圭も打ち合わせを終えてから海斗のデスクに向かった。海斗の顔はとても疲れているようだった。「お疲れ様……大変だったね」「ああ……もう取引先と施工会社が揉めてしまってね。夜遅くまで間に入ってたんだ」 書類もどっさりと海斗の机に置かれた。「もう家に帰って休めばよかったじゃん」 斗真が間に入ってきた。圭は少しひやっとするが取り乱さず海斗の方を見た。「だったらよかったんですけど……まだこっちも他の仕事も抱えてますし。報告書書きたいし、また対応をしないといけないからこの一ヶ月……」「一ヶ月……」 書類を見るとかなり揉めていたようで自分たちの会社はとばっちりを喰らったようなものだった。「それよりも圭、晩御飯は食べられたか?」 ふと自分を心配する海斗に圭はびっくりした。「えっ、あっ……うん」 ふと目線を斗真にやるが斗真は目線を別の方向に向けている。 じっと圭の顔を見ている海斗。「……この服は……」 まさか斗真の家に泊まって借りた服とは言えない……。「昔の服だよ、出してなかったやつ」「……そうか、普段着ないやつだったから」 気づかれたらどうしようかと圭はヒヤッとした。そしてまだ海斗は圭の少しの異変に気づく。「顔が浮腫んでる……まさか酒飲んだのか」「あ、いや、べつに……」「なわけないよな、ごめんごめん。僕はヤケ酒飲んでました、ホテルで」 海斗は笑いながらコピーを取りに行った。 圭はヒヤヒヤしながらも海斗の後ろ姿を見る。 すると斗真が「……察しやすいな、海斗さん。気をつけないと」 と言うと圭はモゾモゾし始めた。 斗真が他の人から見えないように圭の太ももに手を触れたのだ。迂闊にも体が反応してしまった。 斗真がじとーっと見ている。 反応した圭の部分を斗真がゆっくりと触る。「……や、やめてください……海斗さんが戻ってきます」「ギリギリまで……こうしてるよ」「……んんっ……」 恥ずかしくて赤面して俯く圭。耐えきれずトイレに走っていった。 そこに何も知らない海斗が戻ってきた。「あれ、圭は?」「ん? どこいったんだろ、知らねー。でもまだ取引先のところ行ったり来たりするのかい?」 海斗はフーとため息をついて頷いた。相当参っているようだ
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第八十八話

「ということで……しばらくマンスリーのホテル契約した」 夜、圭はご飯を食べてる際に海斗に言われた。「そう心配そうな顔をするな……行きづらいだろ」 仕事だとわかっていても一ヶ月海斗と離れる……昨晩の斗真とのこともあったばかりだ。「圭、料理もある程度できるよね……大変だったら食事サービスの手配もしてるから安心だよ。ハウスキーピングも手配しなきゃ」 いや、そういうことじゃない……食事や家事はなんとかなる……圭は目で訴える。「ホテルは食事もちゃんと出るらしいし……生活面はなんとかなりそうだけど」 ……もちろん海斗の体調面も心配だが……。「斗真さんが色々と手配してくれて助かったよ。僕もそろそろ日本の仕事に慣れないとな、圭もだけど」 斗真の名前が出ると圭は胸がグッと締め付けられる。 昨夜……海斗の知らない自分と斗真の過ちを。「斗真さんはその……宙に近い存在だけどもう怖がることはない。関わることも無いそうだ……」 そうだがいつ宙が圭の前に現れてもおかしく無い。 まだ信用できていない、実のところは。 だから海斗に……そばにいて欲しい……でないと圭は自分の理性が振り切れて取り返しのつかないことを犯してしまいそうだと。 昨夜のことを思い返すとそう思わざるを得なかった。「……心配だけどいつまでも心配しすぎもダメだと思ってな……過保護すぎだし、自分」「……」 圭は首を横に振る。「やっぱり何かおかしい、職場でも思っていたけど」 酒を飲んだのかと聞かれその時に正直に言えばよかった、いや今でも言えばいい……。 なのだが圭は言えない。斗真と一線を超えてしまったからだ。「……って思うことも過剰な心配かもしれないよな、ほんとだめだなぁ」 と海斗は笑った。食事を食べ終わって食器を流しまで持っていく。 圭もついていく。「……あのね、医者からいろんなコミュニティに行くのがいいとか趣味を……運動とかしたほうがいいって」 他にも話すことはあるのだが……海斗はうん、と頷いた。「そうだな。二人で何か運動とか始めてもいいけどしばらくは無理だしな……先に圭がいいと思ったことを始めてみるのもいいよ。僕も良いと思ったら加わるし……そうしないかもだし」「……うん、わかった」 海斗は圭の頭を撫でた。そして優しく抱きしめる。圭もぎゅっと抱きしめた。 斗真には身体を預け
last updateآخر تحديث : 2026-10-07
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第八十九話

「あっん……はぁっ……」 圭は壁を背にして喘ぐ。耐えきれずに漏れ出た声は斗真の唇で塞がれ舌を押し込まれ絡められる。 斗真からもらったジム用の黒のウエア、着てみたらお揃いだった。身体のラインがわかるもので自分の貧相な体に比べ斗真はスーツの下に隠れていた鍛え上げられた身体がウエアによって強調されてジムで抑えていた感情と欲望が斗真の部屋に入った途端に爆発した。 玄関先で発情したかのようにキスをする二人。「はふっ……んっ……」 口から漏れる吐息。斗真の首筋から香る香水……さらに興奮する。「こんなところで発情するなよ……ちゃんと準備しなきゃダメだろ?」 斗真は圭の尻を強く掴むと「あっん……」 と圭は声を出す。その様子に斗真は笑うしかなかった。 少しでも触れたら爆発しそうなくらい圭は我慢していた。「まぁシャワーはジムで浴びてきたから準備終わったら寝室に来い」 そう言うと圭はとろっとした目をさせながら頷いた。 斗真は服を脱ぎ寝室で待つ。 ジムでの圭の様子を思い出した。ウエアを着せたが右手の怪我の跡があまりにも酷かった。そのせいで彼は右手がほぼ使えなくなった。 そこまでもして守った宙に粗雑に扱われていたのかと思うと斗真は同情するしかなかった。 そんなことを思いながらも斗真も宙の恨みを晴らすかの如く彼と同じように弱い立場の圭をいたぶる。 なんてことだと自嘲するしかない……彼だったが圭が準備を終えて寝室にやってきた。圭も何も纏っていない状態だった。 シャワーも浴びたのか毛先が濡れていて肌もまだ温かい。「どうして欲しいんだい?」 圭にそんなことを聞かなくてもいいとは思っているが一応聞いてみた。「……お願いします」 答えにはなってないが圭は斗真の前で脚を開いた。 昨日みたく酒は飲んでいない、自分の意思でそうやってのけたのだ。 宙の前でもそうしていたのだろうと斗真は想像するだけで興奮が増す。 恥ずかしくて赤らめている顔の圭を見ながら焦らし、かと思えば強引に押し倒して圭の中に入っていく。「んはっ……あっ……」 圭はまた耐えきれず両手をだらんとあげて喘ぐ。 斗真も圭の中に入っていくにつれてもっと圭の感情を情緒を壊したくなっていく欲が高まり腰を何度も振る。「あああああっ……!!!」 奥まで行った頃には斗真も普通でいられなくなっていった。
last updateآخر تحديث : 2026-10-08
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第九十話

 それから、圭は何度も斗真との逢瀬を重ねるようになった。 仕事が終われば、一緒にジムへ行く。 身体を動かして、汗を流して、それから斗真の家へ向かう。 いつしか、それが当たり前の流れになっていた。 最初の頃にあった罪悪感も、少しずつ薄れていった。 それどころか不思議なことに、仕事まで以前よりスムーズに進むようになった。「圭くん、なんか最近仕事早いね」「どうしちゃったんだい? なんかイキイキしてるよ」 周りの社員からも、そんなふうに声をかけられる。 圭は苦笑するしかなかった。 自分でも分からない。 なぜだろうか、筆が乗る。 頭の中に浮かんだものが、そのまま線になる。 以前なら途中で迷っていたところも、今は迷わない。 線がしっかりしている。 身体の軸が安定したことで、余計な力を入れなくなった。 斗真に教わった筋肉の使い方や、効率のいい身体の動かし方。 それが、思いがけないところでデザインにも影響していた。「……なんでだろうな」 描き上げた線を眺めながら、圭は小さく呟いた。 夜になれば、海斗からメールが届く。『そっちはどうだい?』 短い言葉の中に、いつも自分を気にかけてくれていることが分かる。 海斗も一日中忙しいはずなのに、こうして連絡をくれる。 圭も返事をする。 心配している。 帰ってきてほしいと思う。海斗のことが好きだ。 それだけは、今も変わっていない。 なのに自分の中で、何かの比重が少しずつ変わっていることを、圭自身が分かっていた。 斗真といる時間。ジムで身体を動かす時間。その後、斗真の家で過ごす時間。 気づけば、それらが自分の生活の中に深く入り込んでいる。 そして斗真といるときだけ、自分を解き放てるような感覚があった。 考えなくていい。 罪悪感も、過去も、これからのことも。ただ、その瞬間の自分でいればいい。 そう思える。 そんな時間を重ねるうちに、圭は少しずつ変わっていった。 身体つきも変わった。 筋肉の使い方を覚え、以前より身体の感覚が分かるようになった。 そして、それは仕事にも表れていた。 けれど、斗真との時間は二人きりのものばかりではなかった。 斗真は時々、圭を自分の知り合いのコミュニティへ連れて行った。 宙とはまったく関係のない場所。 年齢も職業もばらばらで、圭にとっては仕
last updateآخر تحديث : 2026-10-09
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第九十一話

 もちろん圭は海斗を忘れた訳じゃなかった。毎日のように連絡は来る。電話の時もあればメールの時も。 だがメールの方が多かった。相当忙しいのであろう、そう思うようにした。 斗真といる刺激的な生活が当たり前になってきたからなのか…… 今まで手厚く世話をしてくれたのにメールで一言二言になった海斗を冷たく感じたのか…… メールを返してる時に「また海斗さんかい?」 斗真は鼻で笑われ反射的にメールは返してはいけない……とスマートフォンを机に置き「……来週には帰って来れそうだって」 と伝えた。 圭は斗真の横に座る。頭を撫でられそして顎を触られた。「帰ってきてもこうして会うよな?」 じっと見つめられる。 間を置いて圭はうんと頷いた。「少し考えたね? ああいいよ、海斗さんのところに戻りな」「……」「そうだ、海斗さんにも色々と僕のコミュニティに参加してもらおう。彼も固い人間だからな、そろそろ日本の仕事に慣れていくにもいろんな人とプライベートで会わないとね」 と言いながら自分の親指を圭の口に入れる。圭はそれを舐め動く親指を咥えなんとも出し入れする動きに追いつこうとする。「こんな欲しがりな子になって……海斗さんもびっくりしちゃうんじゃないかな?」「んんっ……」「欲しいんだろ?」 斗真は首を傾げて圭を見つめる。「本当は海斗のが欲しいんだろ?」 海斗とはなかなか縮まらない距離。一度見た温泉での海斗の裸体を思い出す。ほどよく引き締まった身体。 その身体で抱きしめて欲しい……宙のように乱暴でも斗真のように支配的でも……。「……でもね、海斗さんから離れないと……いい加減。彼も言ってたよ。圭を過保護にしすぎたと」 それを聞いて圭は斗真の親指を口から外した。「……嫉妬させてあげたいな……過保護にさせた圭と僕、海斗さんの前で仲良くしてたらどう思うんだろうね」「……嫌です」「何が嫌なの? この一ヶ月間、海斗さんは圭から離れたけど何してるのか気になってしょうがないんじゃないかな?」「……」「だからメールや電話をよこしてくる……あれだけ離れろと言ったのに」 斗真の口調が強くなる。「圭がこんなにフラストレーション溜まってるのに何もしないで干渉して……僕といることで君は解き放たれた……あいつは何もしてこない、飼い殺してるだけ……その生活に戻ってもいいの
last updateآخر تحديث : 2026-10-10
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