جميع فصول : الفصل -الفصل 50

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Love too late:大切なぬくもり4

「軽井沢に別荘を持っている、裕福な家庭で育った大学生で、中学生くらいの妹がいる長男。彼は、自然気胸と甲状腺癌を患っているんですね」 「涼一ついでに、この似顔絵も添付してやってくれ。絶対に役に立つから」 「郁也さん、似顔絵が描けるなんてすごいね。どれどれ――」(ああ、涼一くんは知らなかったのか。それはご愁傷様です) メモ帳に描かれたイラストを覗き込む涼一くんに、桃瀬は太郎と出逢ったときのことを思い出しながら説明をする。「俺と同じくらいの身長だったから、185センチくらい。髪はボサボサで、顔は適度に整っていたぞ」 「整っていないよ。むしろサル顔だったって」 「そうか? でも内に秘めたワイルドさを表現するために、この絵を描いてやったんだぞ」 自信満々な桃瀬を他所に、涼一くんが似顔絵を見て固まっている。「どうした涼一、早くヤツに送ってやれよ」 「えっ!? あ、うん……」 えいっと言いながら、両目を閉じて送信してる涼一くんと、それを受け取った相手に、内心黙祷を捧げた。桃瀬の似顔絵がどうなっているのか、俺はなんとなく想像つくからね。「周防さんの傍に理解してくれる人が、早く戻ってくるのを祈ってます」 涼一くんは、右手をそっと差し出してきた。「ありがと。どうなるか正直、全然わからないんだけど、助けてくれたふたりに、いい報告ができるように、俺は頑張るから」 その手をぎゅっと握りしめると、涼一くんは反対の手を優しく添えて、ふわりと包み込む。「郁也さんと待ってます。きっと大丈夫ですよ」 涼一くんとふたり、友情を深め合っている様子を、桃瀬はただ黙って見つめていた。 落ち込んでるときだからこそ、人のあたたかみが、こんなにあり難く感じてしまい、いつもどこか強がっていた自分が、バカらしくなったのは言うまでもない。
last updateآخر تحديث : 2026-08-01
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Love too late:大切なぬくもり5

*** 桃瀬たちが帰って、一気に静かになったリビング。ひとりきりでいることを、嫌でも実感してしまい、いても立ってもいられなくなり、ぶらりと外に出た。 向かうアテなんてどこにもなかったけれど、自然と高台に足が向かった。まるでそこに、太郎がいるんじゃないかと思ってしまったから。 この時点で昼間からのお酒の酔いは、すっかり醒めた。気落ちしてしまった心の浮上までは、やっぱり難しくて、ぼんやりしながら、とぼとぼとゆっくり歩く。 高台への階段を一段ずつ踏みしめて、やっとたどり着いたら、カップルが数組、所々に散らばっていた。(――ひとりで来ているのは、俺だけだ……) 太郎とふたりで星を眺めた場所が、運よく空いていたので、まっすぐそこに歩を進める。昨日よりも少しだけ膨らんだ三日月と一緒に、星がキラキラと瞬いていて、それを彩るように夜景が煌いた。「太郎……」 たった一日離れていただけなのに、こんなにも寂しくなるなんて。『はじめは見た目が好みだったから、声をかけた』 というはじまりから――。『好きなんだよ。もうワケがわかんねぇくらいタケシ先生のことが、めちゃくちゃ好きなんだ!』 この短時間で、かわいげのない俺の、どこを好きになってくれたのやら。『好みのタイプじゃないなら、好みのタイプになるように洗脳してやる! そんでもって好きになるように、仕向けてやるから。絶対に、好きって言わせてみせるぞ。俺にとって、最期になるかもしれない恋なんだ。簡単に諦められるワケないだろ……』 どんなに断っても諦めずにしつこく、次から次へと胸クソ悪い甘い言葉を、アイツは懲りずに吐いてくれたよな。『俺の定位置っていうか、居場所みたいな感じだから』 そう言って、俺のベッドに潜り込んだり。『俺だけがこの姿を見られるのって、すっげー嬉しいんだ』 俺の寝起き姿を見て、いたずらっ子みたいな顔をしながら、嬉しそうに言ってたな。寝癖のついた頭に、不機嫌丸出しでいる俺の、どこがいいのか、未だに全然理解できなかった。『そのまま接したらいいのに。笑ったタケシ先生の顔、結構かわいいんだから、大丈夫だぜ』 病院で働く俺を見て告げた言葉だったが、太郎の前で笑ったことがなかったはずなのに、どうしてかわいいなんて言ってくれたのやら。『俺はタケシ先生のこと、すっげぇ好きだし。誰にも渡すつもりはないか
last updateآخر تحديث : 2026-08-02
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Love too late:真実の愛

数日後、桃瀬経由で太郎の情報が送られてきた。『名字で地元の名士だってわかるから、あえて伏せていたんだろうな。とにかく入院している病院もわかったことだし、なんとか時間を作って、見舞いに行ってやれ』 メッセージと一緒に添付されてる太郎の顔写真を、ドキドキしながら、まじまじと見つめてしまう。どうやって手に入れたのか、それは大学構内で撮影された写真で、大勢の学生の中にいる太郎をクローズアップしたものだったが、ハッキリと本人だとわかった。 出逢ったときよりも、少しだけ髪が短いけど、やっぱりボサボサ気味で、どこか眠そうな表情を、ぼんやりと浮かべている顔。写真だけど数日ぶりの再会に、胸がじーんと熱くなってしまう。「周防先生、次の患者さん入れますけど、大丈夫ですか?」 その声にハッとして、慌ててスマホを白衣のポケットに隠した。「ヤバイ……今の俺、乙女な顔になってる気がする」 まるで念願のアイドルに会った、オタクな青年みたいかもしれないな。 勢いよく両頬をパシパシ叩いて、気合いを入れ直す。「ごめんねー! もう大丈夫だよ。患者さん、診察室に入れちゃって~!」 さっさと患者さんを捌いて、太郎に逢いに行こう。その意気込みで仕事に勤しんだのだった。
last updateآخر تحديث : 2026-08-03
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Love too late:真実の愛2

*** 入院した部屋が個室でよかった。厄介なヤツが、面会に来てしまったから。「先輩、良かったです。入院して手術なんて、大きな病気だと思っていましたから」 ベッドをリクライニングにした状態で対峙しながら、コッソリため息をついた。 タケシ先生に出逢う前、大学の後輩に告白され、軽い気持ちでOKして、付き合う約束をしたその当日。一緒に帰る間際に、自然気胸の発作に突然襲われ倒れてしまったせいで、それきりになっていた。「大学で倒れたときは、世話になったな。ありがと……」「こんな僕でよければ頼ってくれたら、すっごく嬉しいなって」「そのことなんだけど悪いな。俺、好きな人ができた。だからおまえとは、もう付き合えない」 テレながら喋る後輩に、残酷な現実を突きつけた。「え? 今、なんて……」「すっげぇ好きな人ができたんだ。ソイツしか見えないし、心から大事にしたいって思ってる」 俺がそう言ったら、後輩は膝に置いてる拳をぎゅっと握りしめた。「僕も先輩のこと、同じくらい大事に想っています」「どんなに想われても、迷惑なだけだから。悪いが諦めてくれ」 俺の言葉を聞き、辛そうな表情を浮かべた後輩に対して、説得を試みる。「……先輩の好きな人の二番目じゃ、ダメですか?」(コイツ諦めが悪いな、どうしようか……) いつもなら縋りつかれようが泣かれようが、今までなら無下にあしらってきた。だけどタケシ先生に告白して、大好きな人に諦めろと言われ続け、キズついたことで相手の痛みをみずから知ってしまったせいで、うまくあしらうことができない。 ――なるべくなら、あまり深いキズをつけたくない。「二番目で、おまえは幸せなのか?」「先輩の傍にいられるのなら」「だけど心は、どうやったって手に入らない。一番近くにいても、一番遠くにいることになるんだ」 ――タケシ先生がそうだったから。俺のほうを全然見てくれなくて、すっげえ辛かった。「おまえさ、二番目なんかで満足するなよ。一番、自分のことを好きになってくれる相手を捜せよな」 諦めることは、容易じゃないってわかってる。だからこそ、後輩の背中を強く押してやらないと。「先輩……」「話は済んだ。悪いけど、疲れたから出て行ってくれ。お見舞いは来なくていい」 言いながら、ぷいっとそっぽを向いたら、椅子から立ち上がる音と、鼻をすする音がした
last updateآخر تحديث : 2026-08-04
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Love too late:真実の愛3

「相変わらず、チャラ男やってんだな。早速病室に男を連れ込んで、あんなふうに泣かせるとか」 どうして、ここにいるんだよ?「やっぱ、すぐに手術したんだな。首の包帯、苦しくないか?」(どうしてこの状況で、明るく笑っていられるんだよ? いつもならここは、不機嫌になってるトコだろ……) タケシ先生は、呆然としてる俺の傍までやって来て、首に手を伸ばし、包帯にそっと触る。その手を迷うことなく、ぎゅっと握りしめてやった。タケシ先生のあたたかいぬくもりが、じわりと伝わってきて、俺の胸を熱くさせる。 久しぶりの再会を噛みしめていると、目の前で少し困った表情を浮かべて口を開く。「このバカ犬が! 出て行くならあんな絵を置いてくよりも、置手紙してから出で行けって」 そんな俺の手をぎゅっと力を入れて、更に握り返してくれる。「気に入らなかった?」 「いいや、嬉しかったよ。診察室の目のつくところに、きちんと飾っておいた」 相変わらず穏やかな口ぶりに、違和感を覚える。絶対におかしい――なんでそんな優しい目をして、俺を見つめるのだろうか。そんなことされると、タケシ先生がなにを考えてるのかわからなくて、調子が狂ってしまう。「タケシ先生、あ、のさ……」(しかも、どうやって俺のことを調べたんだろう?) 聞きたいことが頭の中を過ぎるけど、タケシ先生のにこやかな笑顔を見ているだけで、まるで氷が溶けていくみたいに、質問がなくなってしまう。「悪い、ちょっとトイレに行って来る」 俺の手をやんわりと振り解き、足早に去って行く背中を、ただ見つめるしかできない。「タケシ先生……」 ――ずっと逢いたかった―― 病院のベッドにひとりで寝ていると、思い出してしまう。すぐ傍にあった、愛おしい人のぬくもりを。 タケシ先生ってば、広いダブルベッドで寝ているのに、いつも隅近くでゴロンと横になっていて。空いてるスペースがまるで、俺の定位置みたいに、なぜだか感じられたんだ。 背中をちょっとだけ丸めて眠る体に、そっと寄り添うことができるだけで、すっげぇ幸せだった。なのに今は、ワザとにこやかな笑顔を作って、俺との距離をとってる感じがする。これならまだいつものように、ガツンと怒ってくれたほうが数倍マシだよ。「マジでタイミング悪いったら、ありゃしねぇ……」 ベッドの中で、頭を抱えるしかない。他人行儀なタ
last updateآخر تحديث : 2026-08-05
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Love too late:真実の愛4

*** トイレに行くと言いながら病室を出て、すぐ傍にある談話室の椅子に、思わず座り込んでしまった。「まったく太郎のヤツ……いったい、なにを考えてるんだ」 病室ですれ違った男のコは、明らかに大学生だってわかった。しかも泣いていたのだ、ただ事じゃないのは明白。 だからアイツに逢った瞬間、驚きついでに不機嫌になれず、どうしていいのかすごく混乱した結果、にこやかに笑ってしまった。怒りなんて、一瞬でどこかに行く始末。 談話室には、携帯使用許可のプレートが出ていたので、困り果てた俺はすぐに、桃瀬にメッセージする。『ももちん、俺どうすればいい? 太郎の病室に行ったら、泣いてる男のコと出くわしちゃった。きっと病室に男のコを連れ込んだアイツは、いかがわしいコトをしようとしたんだよ』(メッセージ送信っと――) 渋い顔のまま送信ボタンを押し、ちょっと待ったら、桃瀬から返信があった。『とにかくその彼について、きちんと太郎に事情を聞いてみろ。納得するまでお互いに、話し合ったらいいんじゃないか?』 おおっ、確かに。冷静になりきれず、いきなり病気のことから聞いちゃったもんな。ここは桃瀬の言うとおりに落ち着いて、納得するまで事情を根掘り葉掘りと聞いてやろうじゃないの。 さっきまでの重い気持ちはどこへ――桃瀬の的確な意見のお蔭で足取りも軽くなり、太郎の病室に戻った。 ベッドの傍に置いてある椅子を引き寄せて、よいしょっと腰掛けてから、太郎の顔を見る。相変わらずのサル顔はそのままに、以前よりも血色は良好そうで、健康そのものに見える。「おい、さっき出て行ったヤツ――」 いつも通りの口調で話し出した途端に、太郎が慌てて弁解するように話し出した。「タケシ先生、絶対に誤解をしてるだろ。アイツは、ただの元彼っていうか……えっと告白されて軽い気持ちでOKしたんだけど、その後俺が自然気胸で倒れてから、音信不通になって。心配して、実家に入院先を聞いたらしくてさ。わざわざ見舞いに来てくれたんだ」 焦りながら喋った言葉を、頭の中で整理していく。ここは冷静になって、落ち着いて分析しなければならない。「元彼ね、へえ……」 「でも、ちゃんと断ったんだ」 「――押し倒したんじゃなく」 「違うって! そんなことするワケないだろっ。やっぱり誤解してる」 必死な太郎の形相が、俺の笑いを誘った。
last updateآخر تحديث : 2026-08-06
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Love too late:恋するキモチ

――この恋は甘くない。そう自負してるのだが……。「こうやってまた、タケシ先生と並んで歩けるなんて、なんだか夢を見てるみたい」 恋人の太郎は、そんなふうに考えてる俺の気持ちを、キレイに無視して、ポンポン甘い言葉を、これでもかと吐き続ける。その言葉に、なんと返事をしてやればいいのか、すごく困り果てて、右後方にいるヤツに視線を飛ばした。 女性と一緒に歩くと、歩幅が気になるので、ゆっくり目にして歩くのだが、太郎は男だし、俺よりも背が高いんだから、並んで歩くのには、まったく支障がないはず。 それなのに、いつもちょっとだけ後ろを歩くのは、なぜなんだろうか?「タケシ先生、なんですか~?」 俺の視線の理由がわからず、間延びしたような声で訊ねた。「どうして一緒に、並んで歩かないんだ? 俺と歩きたくない、ワケでもあるのか?」 「だって、横に並ぶと見えなくなるし。俺の好きな泣きボクロと、癖のある襟足の髪の毛。この絶妙な角度なら、両方が見えるんだ」 「そうかい……」 呆れた――なにを考えてるんだコイツ。「それともタケシ先生は、俺と並んで歩きたい?」 「別に……」 「なぁんだ、違ったのか。目の下をほんのり赤くして、こっちを物欲しそうに見ていたから、てっきりそうなのかと思ったのにさ。残念だなぁ」 月明かりだけで、頬が赤くなっているなんて、確認できるわけがないだろう。 チッと舌打ちし、内心文句を言いながら、視線を太郎から前方に移すと、右手をそっと握られた。「なんのつもりだ?」 公衆の面前でこんなふうに、堂々と手を繋ぐなんて。ちょっとだけ、ハズカシイじゃないか。「ん~俺ってば病みあがりで、結構疲れちゃったから、焼肉屋までタケシ先生にグイグイッと、引っ張って行ってほしいなぁ」 「今、とってつけたような理由、考えついたんだろ……」 へらっと笑ったサル顔のおまえを見たら、なんとなくわかってしまったぞ。「だーって。タケシ先生は超絶優しいし、俺を見捨てるなんて、ぜーったいにしないだろ。なんてったって軽井沢まで、追いかけて来てくれたんだからさ」 にやりと笑って、握った手に力を込めてくる。「……それに、こうしてたら寂しくないだろ?」 俺が太郎のことをお見通しのように、太郎も俺のことがわかってしまうのか。 心底呆れながらも、握られてる手に、そっと力を入れてやっ
last updateآخر تحديث : 2026-08-07
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Love too late:恋するキモチ2

***「こんばんは!」 「ちーっす、相変わらず仲がいいんだな」 キレイ目男子と、桃瀬が店の前で待っていた。 そんなふたりの前に、手を繋いだまま現れたのは、仲の良さをこれでもかとアピールするためだったんだけど、照れてしまったタケシ先生が、その手を無理やり解いてしまう。「コイツとは、仲がいいワケじゃないよ。病みあがりの病人が医者の俺がいるのに、道端で倒れたりしたら、それこそ洒落にならないでしょ」 「へえぇ、なるほどねぇ」 「周防さん、本当に面倒見がいいですね」 そんないいわけも、桃瀬は置いておいて、このキレイ目男子には通用してないって感じ。口元を押さえて、意味深な笑みを浮かべているから。 俺としては、もっとタケシ先生との関係を、これでもかと甘いものにしたかった。食ってもいないというのに、胸焼けがするとか、ワケのわからないことを言って、見事に全部蹴散らしてくれる。 そのまま、キレイ目男子の顔を見続けていると、いきなりペコリと丁寧にお辞儀をされてしまった。「はじめまして。郁也さんと一緒に暮らしてます、小田桐と言います」 次の瞬間タケシ先生に、バコンと後頭部を強く殴打されてしまう。「一番年下のおまえが、先に挨拶しないでどうするよ?」 「怒らないであげてください。僕がいきなり挨拶したんですから」 「でも……」 「挨拶が遅れて、本当にすみませーん。タケシ先生のカレシです」 またもや容赦のないタケシ先生の殴打が、俺の後頭部を襲った。「おまえ、なに言ってんだ! きちんと自分の名前を言って挨拶しろ」 いちいちそんなふうに、激しい照れ隠しをしなくてもいいのにさ。「タケシ先生のカレシの太郎でーす、はじめましてでーす」 「おまえなぁ!」 「ふふふ。本当におもしろい人だね、太郎くんって」 「おもしろいというか、頭がおかしいんだコイツは! どうして、本名で挨拶しないんだよ」 「本名よりも、タケシ先生に付けられたこの名前のほうが、気に入ってるから。かわいがられてるって感じがするし」 「かわいがってなんて、いないんだからな。おまえみたいなバカ犬は、俺は知らん!」 怒りまくるタケシ先生をしっかり無視して、向かい側のふたりが声高々に、俺らの様子をそれぞれ口にする。「周防が簡単に翻弄されてる姿、すっげぇ貴重だろ」 「確かに。最初から、こんな感じだっ
last updateآخر تحديث : 2026-08-08
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Love too late:恋するキモチ3

「ピーマンのビタミンよりも、カボチャの方が効果的だから。一緒にβーカロチンやポリフェノールが、いい感じで摂取できるんだよ。免疫力をアップして、再発防止に備えなきゃならないんだからね」 やがて焼かれていった野菜たちが、俺の皿の上にどんどんうず高く積まれていく。(どうしよう、こんなに食えないよ。シイタケは一口、ピーマンは半身が限界だ)「あの太郎くん、早く食べたほうが美味しいと思うよ」 なかなか手をつけない俺に焦れたのか、小田桐さんが声をかけてきた。「俺、野菜キライ。食べられない……」 隠しきれないと観念して事実を言うと、タケシ先生と桃瀬がピキーンと固まる。「おまえ、一緒に暮らしてたとき、普通に食べていただろう?」 「や……その実は――コッソリ残してた」 俺の言葉を聞いて、相当ショックだったのだろう。ガックリと肩を落としたタケシ先生。「焼肉のタレは万能なんだ、絶対に食える! というか食わせるんだ周防!!」 桃瀬は鼻息荒くしていきなり言い放ち、タレの入った容器をタケシ先生に手渡す。「太郎、おまえは目をつぶって口を開けていろ。大好きな周防が直接、食わせてくれるから」 大好きなタケシ先生でも、食べさせられるのは、キライな野菜なのに。「え、でも……」 「口に入れられる物は、全部肉だと思えばいい。しかも周防が、わざわざ食べさせてくれるんだぞ。超レアものだ。普通なら、絶対にあり得ないんだからな」 普通ならあり得ないことは、重々理解してるけど、野菜は野菜であって、肉だとは到底思えない。噛んだときの質感が、全然違うからな。 ウッと思いながら、隣にいるタケシ先生を見ると、焼けている野菜にしっかりとタレを滲みこませるべく、お皿の中で用意して、食べさせる気が満々だった。 「太郎くん、みんなが君を思ってしていることだからね。いい機会だから、野菜の好き嫌い、なくしてみたら?」 小田桐さんにまで最終宣告され、涙を浮かべながら、タケシ先生に箸を運んでもらって食べさせてもらった。 泣きながら食べたけど、ラッキーな収穫もあった。 俺に野菜を食べさせつつも、桃瀬のヤツがタケシ先生に、ビールをどんどん呑ませ続け、例の質問を投げかけてくれたんだ。「あ~? 太郎のどこが好きかって? そうだな、変なウソをつかないトコ」 いい感じにでき上がったタケシ先生は、赤い顔をしな
last updateآخر تحديث : 2026-08-09
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Love too late:恋するキモチ4

***(ホント、すっごく恥ずかしいこと、臆することなく言ってくれたなコイツ――) 店の前で苦笑いをした桃瀬たちと別れ、いつものように並んで自宅に帰る。心底呆れながら、右斜め後方にある顔を見上げてみると、窺うような視線とバッチリぶつかった。「太郎、なんだよ、その顔は?」 まるでご主人に叱られて、しゅんと落ち込んでる飼い犬みたいに見える。「タケシ先生、すっげぇ怒ってるでしょ? その……ちょろっと願望が、口から出ちゃったみたいな」 「怒るよりも呆れ果てたよ。涼一くんの愛の告白が、とてもかわいく思えたね」 「だってしょうがないだろ。ずっと、お預けをくらったままなんだからさ」 軽井沢の病院で、自分の気持ちを思いきって告げ、晴れて両想いになった俺たち。抱き合って見つめ合ったまま、胸に秘めた言葉を口にする。『早く病気を治して戻って来い。首を長くして待っててやるから』 『わかった、約束する! タケシ先生を、最後の恋人にするために頑張るから……』 そして引き寄せられるように、ゆっくりと唇を重ねて、今まで離れていた寂しさを埋めるべく、互いを貪りあった。 太郎が――いや、歩が生きて俺を抱きしめている。それだけで心の底から、嬉しくて堪らなかった。 涙を必死に堪えていると、いつものように右目尻に優しくキスをされた。「タケシ先生、そんな辛そうな顔すんなって。俺はこうして、ちゃんと傍にいるから」 ――そんなのわかってる……そう、口に出したかったのに、それすらも胸が絞られる痛みのせいで、まったく言葉が出てこない。素直なセリフを言えないことが悔しくて、下唇を噛みしめながら歩に抱きつくと、そのままベッドに押し倒されてしまった。「俺が生きてる証拠、教えてやるよ。タケシ先生……」 耳元で甘く囁かれる言葉に、ぶわっと頬に熱を持つ。「だからってそんなに下半身、押しつけてくるな。もう充分にわかったから」 「物欲しそうな顔しながら、そんなこと言っちゃって。俺自身を直接感じられて、すっげぇ嬉しいでしょ?」  少し掠れた声で優しく告げるなり、耳朶を甘噛みする。「……っ、やめっ……病室なんてリスキーな場所で、そんなこと……できるワケがないだろ」 「だからヤるんだよ、ワクワクするし」 ヤル気満々の歩が、シャツに手をかけたタイミングで病室の扉がノックされ、慌てふためいた俺は、
last updateآخر تحديث : 2026-08-10
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