جميع فصول : الفصل -الفصل 60

65 فصول

Love too late:恋するキモチ5

***「学生の自立心を、しっかりと養うためだ。必要以上に手は貸さん」(なんだかなぁ。こういうときだけ学生扱いって、マジで酷すぎる) ムカつきながら歩いているうちに、タケシ先生の家に到着。鍵を開ける見慣れた背中に続いて中に入ってから、自分のキモチをこめて、ぎゅっとタケシ先生に抱きついてやった。「俺がガキじゃないこと、教えてあげる――」 耳元で囁いて、タケシ先生の体を壁に強引に押し付け、逃げないようにしっかり両腕で囲ってから、キスしようと顔を近づける。俺が迫るよりも先に、タケシ先生の顔が突然、一気に近づいた。進んでやってくれた行動に、内心喜んだのもつかの間、額に激痛が走る――容赦のない頭突きをされたから。「いって~……」 「こんなトコでいきなり襲うなよ、バカ犬!」 こんなトコって、やっとふたりきりになれた空間なのに、どうしてタケシ先生には壁ドン、チューが成立しないんだよ。 壁にめり込ませるくらいの勢いで思いきりドンして、体を固定させなきゃダメなのか? 今まで他のヤツに、こんなふうに拒否られたことはないのに……。(これってタケシ先生の愛情を、疑ってしまう事態だぞ) 俺は無言でタケシ先生の脇を抜け、病院に向かって、スタスタと歩いて行った。「おいこら、どこに行くんだ!?」 その声を無視して真っ直ぐ診察室に入り、電気をつけて中の様子を確かめる。俺の描いた絵が、いつも使っている診察室の机の目の前の壁に、ちょこんと飾ってあった。 タケシ先生はどんなキモチで毎日、この絵を見ているんだろうか――一日の大半を、この場所で過ごしているからこそ、ここに飾ってくれたんだろうけど。「おまえに、聞きたかったことがあるんだ。一瞬の会話から、あの景色を選んで描いたんだろうけどさ。どんなことを考えながら、その絵を描いたのかなって」 診察室にあるベッドに、いつの間にか座って、こっちを見ながら質問してきたタケシ先生。「実はこの絵、ちょっとだけアレンジしてるんだ」 「アレンジ?」 「バックにある、紅葉と黄色い車の色のバランス。実際はもっと、赤の主張が多かったろ。それを控えめにして、車の窓ガラスに空の青を入れて、黄色をアピールしてみたんだ」 紅葉の色と、車の黄色に差し色を入れることによって、より色を引き立たせてみた。「そうだったのか。あのときのシチュエーションは、すっ
last updateآخر تحديث : 2026-08-11
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Love too late:募るキモチ

『秋雨前線の影響で、昨夜から断続的に雨が降り続き――』 テレビから流れる無機質なアナウンサーの声をぼんやりと聞きながら、ひとりで晩ごはんを食べていた。 ウチで働いてる、看護師の村上さんが愛情込めて作った手料理は、本当に美味しい。美味しいのだけれど、この旨さを分かち合う相手がいれば、もっと美味しいハズなんだ。 太郎がウチに来なくなって、ちょうど一週間が経つ――家庭教師のバイトをしたことのある桃瀬が、大学を休学したアイツの勉強を熱心に見てくれた結果、休学前よりもぐんと成績が上がったと、喜んで報告してくれたっけ。 復学して、すぐにおこなわれたレポートの提出後は学祭があって、準備で忙しくなるから逢えなくなると、太郎はすごく寂しそうな顔をして、抱きしめてきたんだ。『来年の就活前に、楽しめることのできる学祭になるんだから、思いっきりやってきたらいい。俺ことは気にするな』 なぁんて強がりを言って、太郎を送り出すべく、笑って玄関で佇むと。『……やっぱ寂しいからタケシ先生、アプリのメッセしてよ。そしたら、少しでも会話が――』 その言葉に、ムッとしながら眉根を寄せる。そんな暇があるなら顔を出せと、ワガママを言いそうな自分がいた。 心の内の言葉をぐっと飲み込んで、素早く違う言葉に変換する。『そんな面倒くさいこと、俺はやらない主義なんだ』 『じゃあ、電話くらいはいいだろ?』 『してくれてもタイミングが悪かったら、電話に出られる保障はどこにもないからな』 次々と出される、太郎の要求を呆気なく拒否ると、肩をガックリ落として、とぼとぼ帰らせた経緯があった。(寂しさを悟られまいと必死になりすぎて、アイツの気持ちを全然考えてやれなかったかも) 終わってしまったことを、今更蒸し返しても元には戻らないと理解しているけれど、好きなヤツを自分のワガママで深くキズつけたことに対し、後悔せずにはいられない。連絡が一切ないのは、嫌われちゃった証拠なのかな。 もしかして連絡があるかもと、肌身離さずに持ち歩いているスマホは、なんの反応もなく、それがまるで太郎の気持ちを、示しているかのように感じてしまった。 不器用なトコを必死に取り繕った結果なのに、こうしてウジウジするなんて、俺らしくないじゃないか。両想いなのに、上手くいかない。恋愛って、こんなに難しいものだったっけ。 こんな気分
last updateآخر تحديث : 2026-08-12
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Love too late:募るキモチ2

***「王領寺、執事喫茶の宣伝があるんだから、絶対に顔を出せよな。もちろん、途中でいなくなるのも禁止だぞ」 帰ろうとしていた矢先に、突然同期から声をかけられ、わかったと言いながら頷いて、行きたくない合コンに顔を出す。 ――今日でちょうど一週間……。「どうして、連絡を寄こさないんだ。タケシ先生」 そうボヤいたところで、自分のスマホを見ても、反応がないのは明らかなのに、見ずにはいられない。 宣伝を兼ねた合コンに、無理やり参加させられてる最中も、無駄なスマホの確認作業をしてしまった。「ねぇねぇ王領寺くんって、あの高台にある、大きなお屋敷みたいなところに住んでる人だったりするの?」 「……ああ。そうだけど」 傍にいる女のコに聞かれ渋々答えると、周りから歓声があがった。「うわぁ! ホントのお坊ちゃまだ、すごいすごい」 「あのぉ、執事みたいな人はいるんですか?」 「執事はいないけど、お手伝いさんは何人かいる」(ウザったい、ひとりにしてほしいのに) そんなことを考えながら、軽くため息をつく。それなのに自分の心情とは裏腹に、どんどん女のコに囲まれていった。人ごみに囲まれていると、なんだかタケシ先生との距離が、更に遠くに感じてしまう。 ――今頃タケシ先生は、なにをしてるんだろうな。 反応のないスマホを、右手でぎゅっと握りしめ、窓の外を見る。窓ガラスが泣いてるみたいな、激しい雨が降っていた。それはまるで、俺の心の中のよう。 意気消沈してる間に、合コンがお開きになり、店の外に出ると、さっきの女のコたちが困ったねぇと、口々に語り合っていた。「あのさ、傘、持ってないの? これ、返さなくていいから使って」 すぐ横にいた、女のコに押し付けるように傘を手渡して、持っていたカバンを頭に掲げ、一目散に外へと駆け出す。向かう先は、タケシ先生のところ。もちろん、文句を言うため。もう辛抱ならねぇからな!*** 横なぶりの雨に打たれ、体は結構冷え切っているけど、心の中は別な意味でたぎっている俺は、静かにタケシ先生の家の玄関前に佇んだ。 ため息ひとつついてから、ゆっくりとインターフォンを押す。しばらくしたら、のん気な声が耳に届いた。「お待たせしました~、どなた様ですか?」(――多分この妙なテンションは、お酒が入ってるに違いない……)「……俺」 タケシ先生のあ
last updateآخر تحديث : 2026-08-13
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Love too late:募るキモチ3

*** 家に辿り着き、冷えた体を温めるべく、熱いシャワーを浴びて、そのままふて寝してしまった。イライラしながら寝たせいだろうか、変な夢を見る。うす暗くて、なにもない空間の中に、ひとりきりの自分が佇む。だけど――。「ん? ネコ……」 棒立ちしている俺の足の甲に、ちょっとだけお尻を乗せたネコがいた。どうして微妙に、お尻を乗せてるんだか……。 子猫よりも大きいそのネコをよく見てやろうと、ゆっくりしゃがみ込んでみたら、バチッと視線が絡んだ。 全身が真っ白なのに、耳から右目部分だけ囲うような、薄茶色の毛並みをしている特徴のあるネコ。目が合った瞬間、何故だか眉間にシワを寄せる感じが、どこかタケシ先生にソックリで、ほほ笑まずにはいられない。 動物好きの俺は迷うことなく、ソイツの頭をガシガシ撫でてやる。「おまえ、かわいい顔してんのに迷子か? 首輪もしてないのな」 「…………」 緑色の大きな目で、じっと俺を見てから、頭を何度か振りかぶり、ゆっくりと歩いて離れていくのだが、至近距離で止まった。 ――もしかして、触られたのがイヤだったのかな? 首を傾げて近づいていき、腰を屈めて、素っ気ない背中をツンツン突いてみる。すぐさま俺の指に反応して、突いた場所をイライラしながら、ぺろぺろと舌で拭いはじめた。「そっか。触られるのがイヤなのな、悪かった」 ネコは俺の声に顔を上げ、キッと睨んだと思ったら前を向く。だけどそこから動こうとせずに、じっと佇んだままだった。「あーあ、おまえともうまくいかない。タケシ先生ともうまくいかない。俺はどうすればいいんだろ」 「にゃぁー……」 はじめて聞いた鳴き声はどこか、か細くて頼りなさげな感じに聞こえた。「おまえも一人ぼっちなのか? 俺もなんだよ」 「…………」 「返事がほしいときに限ってしてくれないトコ、まんまソックリ。タケシ先生みたいだな」 「にゃぁー、にゃん……」 なんだろ……なんとなくだけど、しょうがないヤツって言われた気がした。「タケシ先生――」 「にゃっ」 「タケシ」 俺の声をしっかり無視して、ネコは前足をぺろぺろ舐めはじめる。「タケシ先生っ!」 「んにゃっ」(コイツ……) 迷うことなく小さな体を抱き上げ、優しくそっと抱きしめた。途端にネコは、カーッと声をあげて怒り出す。「怒られようが爪で引っ掻
last updateآخر تحديث : 2026-08-14
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Love too late:揺らぐ境界線

――めちゃくちゃ面倒くさい。「なんなんだよ、いったい! いきなり現れたと思ったら、言いたいことだけ言って、バスタオルを俺の頭に巻きつけて、さっさと帰っちゃうとか、絶対にあり得ないっ!」(だけどこんなことでイライラしてしまう自分が、一番面倒くさい·····) 手に持っているバスタオルをぎゅっと握りしめてから、意味もなくそれを抱きしめた。「せっかく逢えたっていうのに、どうしてこんなことになったんだ。お互い想いあってるはずなのに、どうして……」 ままならない自分の気持ちが、本当に面倒くさい。今回のことに関しては、歩からの連絡を待ってばかりで、俺から行動を起こさなかった。総合的に、自分が悪いってわかってる。わかってるだけに――。「一方的に言うだけ言って、謝ったこっちの気持ちをキレイに無視して、怒って帰るアイツも悪いんだ、絶対にっ!」 俺だけが悪いと思いたくなくて、無理やりな理由をつけた。つけたところで、さっきの言い合いが、なくなるワケじゃないのに。 肩を落してとぼとぼ階段を上がり、そのままキッチンに行く。冷蔵庫から冷えたビールの缶を取り出してリングプルを開け、一気呑みした。お風呂上りに呑んだものよりも、苦く感じるのはどうしてだろう?(胸が締めつけられるように痛い……どうしていいか、わからないよ) 下唇を噛みしめてリビングにあるソファに座り、テーブルの上に置いてあった、スマホを手に取る。「……困ったときは、桃瀬にれんら――」 アドレス帳を開いて、そのままフリーズした。この選択は間違ってるって、アイツの声が聞こえたから。『どうして困ったときに、桃瀬に連絡すんだよ。親友だから、なんでも頼ればいいと思ってるんじゃねぇの。どうせ俺なんて、頼りにならない年下の男ですよ!』 以前、歩との問題を解決してくれた経緯があったゆえに、思わず頼ろうとしてしまった。(この場面は間違いなく、恋人に連絡すべきところだ) 自分を納得させるように考えてから、さくさくっと歩にコールしてみたのだが。『――お客様のおかけになった番号は、電波の届かない場所に……』 無情にもそれは繋がらず、俺の想いと一緒に届かなかった。さっき逢った歩の心みたいで、絶望にも似た感情が渦巻いていく。「歩……こんなに好きなのに、どうして――」 鼻をすすりながら次は、アプリのメッセージ画面を開いた
last updateآخر تحديث : 2026-08-15
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Love too late:揺らぐ境界線2

***「周防、おまえってば暗い顔しまくってんな。コーヒー淹れるから、そこにかけてろよ」 俺の顔を見て肩を竦めながら、家に入れてくれた桃瀬。こんな顔をして、訪問したくはなかったのに。「あ、周防さんいらっしゃい。こちらへどうぞ」 優しくほほ笑む涼一くんが、ソファへと誘ってくれた。彼に合わせるように愛想笑いを浮かべて、どうもと呟きながら静かに座る。 やがて室内に、甘い香りが漂ってきた。(桃瀬のヤツ、コーヒーを淹れるって言ってたはずなのに、なにかお菓子でも作っているんだろうか?) 甘い香りを訝しむ俺の目の前に、淹れたてのコーヒーが、そっと置かれたのだが――向かい側に座る、桃瀬に鋭い視線を飛ばす。「ももちん、俺、甘いの苦手だって知っていて、ワザとこんなの淹れたんでしょ?」 出されたカップに、しっかり指を差しながら、苦情を言ってやった。コーヒーから漂ってくる香りが、どう嗅いだって、普通のものじゃなかった。表現するなら、キャラメルのような甘いお菓子の感じ。「それ、フレーバーコーヒーっていうんだ。豆をローストするときに、香料を入れて豆に直接、香りをつけたコーヒーなんだぜ。騙されたと思って飲んでみろよ」 「う~~っ……」 出されたものを飲まないのも悪いので、覚悟を決めて一口飲んでみる。「……あれ!?」 香りはものすごく甘そうなキャラメルなのに、味は酸味とコクが絶妙なバランスの、上品な感じのコーヒーだった。しかも甘さのカケラが、ひとつもない。「……な? 美味いだろ」 口元に、してやったりな笑みを浮かべた桃瀬に、驚いた顔して頷く。「僕はキャラメルよりも、バニラマカダミアがお気に入りなんです。執筆のときによく飲むんですけど、大さじ一杯の砂糖を入れてから飲むと、いい内容がめきめきっと閃いちゃうんですよ」 「涼一、俺のチョイスを考えてみろよ。どうしてキャラメルにしたか」 桃瀬は隣にいる涼一くんに肘で突きながら、意味深な流し目をする。なんだか、ふたりのお邪魔をしている気分だった。「あ――」 なぜか涼一くんは、俺を指差す。「郁也さんっ、すごいや。尊敬するよ!」 「だろだろ。俺もついに、恋愛体質になりつつあるってか!」 「……もう帰る」 話が見えなくて、蚊帳の外にいる状態では、ここにいるのも辛い。ロンリーな自分を、改めて思い知らされてしまう。「悪
last updateآخر تحديث : 2026-08-16
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Love too late:すれ違う想い

土曜の午前中は病院を開けなきゃならないので、学祭最終日の日曜に行くことに決めた。「……どんな恰好をして行けばいいんだろ」 数日前に最悪な別れ方をしてしまったけれど、アイツに逢えると思うと変にテンションが上がってしまい、コントロールが全然できなかった。その結果が学祭当日の朝、いつもより早起きして、クローゼットからありったけの服を、これでもかと引っ張り出し、ひとりファッションショー状態になる。「今更、どんなものを着たって変わんないのに、なにをやってるんだ……」 頭では理解しているのに、キモチがどうしようもなく高鳴っていて自重できない。「歩が通ってる大学に行くんだから、失礼のないようにしないと」 なぁんてひとりでブツブツ言いながら、キレイ目カジュアルに決めた。 洋服選びに時間をとられたせいで、大学に着いたのは午後十二時過ぎになってしまった。ちょうどお昼時なので、外で販売している食べ物系の屋台は、大変混雑している。「医大以外の大学って、思ったより綺麗なものなんだな」 校庭から玄関に向かい靴を履き替えて、大学構内をキョロキョロと見回す。「女のコをおびき寄せるオオカミくんが、たくさんいそうだな」 苦笑しながら玄関で貰ったパンフレットを開いて、出し物をチェックしてみる。ゲームセンターに執事喫茶、お化け屋敷などバリエーションが豊かだった。(――さて歩は、どの出し物にいるんだろうか) 顎に手を当ててぼんやり考えながら、まずは2階の出し物を目指し、ゆっくりと階段を上った。 ひとつため息をついて、あちこちの出し物を見るべく、廊下を行きかう人に紛れて、こっそりと歩を捜す。 勝手に心拍が上がって、すごく緊張してしまった。この教室のどこかにいると考えただけで、胸が痛いくらいにドキドキして、握りしめている手のひらに変な汗が滲んできた。(しかも俺ってば今、おかしな顔をしているかもしれない。歩に逢えると思ったら、嬉しさが滲み出ちゃって、自然とニヤけてしまう)「いかん、いかんっ。もっと気を引き締めなければ!」 こんなの絶対、アイツに見せられない。どんなツッコミをされるか、わかったもんじゃないからな。 首を左右にブンブン振りまくり、パッと顔を上げたときに気がついてしまった。「どこだよ、ここは――」 俯きながら自分自身と格闘している間に、行き止まりのところま
last updateآخر تحديث : 2026-08-17
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Love too late:すれ違う想い2

悲壮感漂う俺と不機嫌満載の歩。これ以上の最悪な再会の仕方はないだろう。 信じられないという表情を浮かべて、なにかを口にしようとした歩を見、俺は眉間に深いシワを寄せてみせる。「……おまえ、なにをやってんだっ?」 「は――?」 「俺が仕事をしてるとき、どんなに疲れていても不機嫌な対応してるところを、おまえは見たことがあるのか?」 言いながらつい、いつものクセで頭を叩いてしまった。だけど威力は半減してやる。「痛っ! あの……どんなときでもタケシ先生は、ちゃんと患者さんに笑顔で向き合ってる」 「だろう? わざわざここを選んで来てくれたお客に対して、ありがとうございますの意味を込めて、きちんと接客しなきゃならないんだよ。たとえどんなに疲れていてもだ! おまえ一番人気だからって、天狗になってんじゃないのか?」 胸の中に渦巻くイライラのせいで、言わなくてもいいことまで告げてしまい、思わず口元を押さえた。そんな俺の様子に、歩はいつものへらっとした笑みを浮かべて、じっと見下ろす。「タケシ先生、もしかしてわざわざ来てくれたのって、俺の人気ぶりを見に来たの?」 「っ……ああ、そうだよ。すごいじゃないか、呆れちゃうくらいに人気者だな。ほら、早く行ってやれって。もちろん、笑顔を忘れるなよ! バカ犬がっ!」 無理やり笑顔を作り、大きな背中を押して店の中に入れてやると、女のコたちが歓声を上げた。それに対して歩は、俺の言ったとおりにきちんと笑顔を振りまきながら、ひとりひとりに声をかける。「ゴメン、待たせちゃって。今、順番にオーダーを取っていくから」 「歩くん、うちらが先だよ! コッチから!」 「ちょっと、こっちが先だってば」 「一緒に写真撮ってー!」 歩に強請られる、たくさんの言葉を振り切るように、背を向けて立ち去った。 素直になるって決めたのに――イライラした気持ちをぶつけてしまうなんて、なにをやってんだよ俺……。
last updateآخر تحديث : 2026-08-18
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Love too late:すれ違う想い3

*** タケシ先生に一喝されてから、気持ちを入れ替えて、きちんと笑顔で接客に臨むことができた。「悪かったな王領寺。今から休憩、入っていいから」 店長をしている同期の喜多川が、キッチンという名の作業台から、大きな声をかけてくれる。朝からずっと働きづめで足腰がガタガタ状態。俺ってば情けねー。「そういう喜多川も、休憩をとったらどうだ?」 「ん? 実は俺、合間を縫ってこっそりと休憩とっているからね。大丈夫だから、お気遣いなく」 隙のない笑顔でほほ笑まれ、それ以上突っ込むことができず、そうかと呟いてから暖簾をくぐって、その場から退散することにした。 無駄に体のでかい俺がいると、キッチンでは邪魔になりそうなので、逃げるようにあとにしたのだが。「……王領寺いろいろ悪かったな、周防先生に叱られちゃったろ、おまえ」 そんな俺の背中に、戸口から顔を出し、わざわざ声をかけてきた喜多川。その言葉に、体がピキンと固まる。喜多川の口から、周防という名が出てくるとは思ってもいなかったから。(そういや喜多川の幼馴染って、タケシ先生と付き合う前に、一瞬だけ付き合ったヤツだったっけ。その繋がりで、知っているのか――)「タケシ先生に叱られるのは、いつものことだし、別にどうってことない……」 「我校随一のオオカミと称されているおまえが、バカ犬呼ばわりされた挙句に、殴られていた姿は、大変貴重だったけどね」 なぁんて酷いことを、ずけずけと言う。「うわぁ、あれを見ていたのかよ。俺ってば、格好悪ぅー」 喜多川だけじゃなく、他のヤツにも見られていたかもしれない。超最悪だな。「おまえが叱られたのは、俺の読みの甘さからきたものだからね。まさかここまで、王領寺のネームバリューがすごいなんて、想像つかずにシフトを組んだ店長の俺のミスだ。ちゃんとした休憩をとらせられなくて、本当に悪かったな」 「別に、そんなのいいから」 「イライラしていた原因、忙しかったからだけじゃなかったんだろう?」 頭が切れる同期の喜多川は、黒縁メガネの奥の瞳を鋭く光らせながら、俺の顔を仰ぎ見る。これだけ優秀だっていうのに、年下の幼馴染にはまったく頭が上がらないっていうのが、正直ナゾなんだよな。「いや。普段女のコと接していないから、気疲れしたというか……」 「ウソをつくなって。どんな相手でも手玉に取れるって評判
last updateآخر تحديث : 2026-08-19
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Love too late:すれ違う想い4

*** 喜多川から貰った食券を使って、あちこちにある屋台から、たくさん食べ物を買い漁り、周防小児科医院に向けて一目散に走った。 俺が一方的に怒鳴りつけてしまった前回と今回の再会は、マジで最悪としか表現できないからこそ、なんとかして穴埋めをしなきゃならないと、キモチがすごく焦るのに、病院に近づくにつれ、得も言われぬモノが胸の中を支配していった。(――言っちゃいけないことを言って、またキズつけてしまうかもしれない……) 急ぎ足がだんだんと歩幅が小さくなって、最終的にはトボトボといった感じの歩き方になってしまう。「……タケシ先生、今どんなキモチでいるんだろ」 たかが一週間、連絡がなかっただけで不安に苛まれて、八つ当たりしてしまった俺なんか、心底嫌いになったかもしれない。「別れたいって言われたら、どうしよう……」 この言葉は、いつも自分が使っていたもので、相手から言われたことなどなかった。ゆえにどうしていいか、マジでわかんねぇ。 重い足を引きずりながら病院に辿りつき、外から家の様子を窺ってみると、窓の明かりが点いていなかった。「もしかして、帰ってきてないのか?」 俺が来ると予想して、わざと自宅に戻っていない可能性もある。『相手にその真面目さがきちんと伝わっていたら、信頼されてるかもよ? それこそバカ犬って呼んでる、おまえの帰巣本能を試してるのかもしれないね』 不意に喜多川が言った言葉が、頭の中に流れてきた。 タケシ先生が行きそうな場所……俺だけがわかるところに、あの人は絶対にいるはずなんだ。だって――。 目をつぶると線の細い背中が、まぶたの裏に映し出された。その背中からは明らかに、寂しいという感情がにじみ出ている。だから俺は迷うことなく後ろから抱きついて、寂しくないよ、俺が傍にいるからっていうキモチを込めて、ぎゅっと抱きしめてあげる。 今もきっと、どこかでその想いと闘っているに違いない。早く駆けつけて、安心させてあげなければ。(バカ犬の帰巣本能、ここぞとばかりに使ってやろうじゃん!) タケシ先生のことを考えたら、さっきまで抱えていた自分の不安が、あっという間に消え去って、代わりに燃え盛るメラメラしたものが体を包み込む。「タケシ先生……どこにいるんだ?」 夜空に浮かぶ白っぽい半月に問いかけたら、傍にある雲が風で流されて、その月を覆い隠
last updateآخر تحديث : 2026-08-20
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