جميع فصول : الفصل -الفصل 40

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Love too late:揺れる想い2

*** 慌しかった一日が、やっと終わる――桃瀬の乱入で一時はどうなることかと思ったけど、アイツの面倒見の良さを見事に発揮して、子どもたちとの和を再建。その保父さんぶりを、遠巻きからお母様たちが熱っぽい視線を送りながらじっと眺めるという、なんともいえない構図が待合室にできあがった。(結局、なんだかんだ言っても、桃瀬ってすごいんだよね。俺は絶対に真似できない) ありのままの自分をさらけ出した途端に、子どもたちに泣かれてしまうのが目に浮かぶ。『すおー先生、いつもと違うっ! 声が低くて男みたいな喋り方してるし、目つきがコワイ!』 そんな言葉が子どもたちから、たくさんと聞けそうな気がする。 パソコンの電源を落し、机の上で寝そべっていたら、村上さんがニコニコしながら、診察室に入ってきた。「お疲れ様でした、周防先生」 「村上さんこそ、今日はフォローありがとうございました」 労いの言葉をかけて、両腕を天井に向けて伸ばしてみる。「周防先生はみんなに優しいのに、どうして太郎ちゃんにだけ冷たいんでしょう?」 唐突に聞かれ、言葉に詰まってしまった。「そういうふうに……見えるのかな?」 「拒絶とまではいきませんが、他の人とは明らかに違います」 他人に指摘されるようじゃ、本当に駄目だな。しっかりと心を改めなくては――。「太郎ちゃんは年の離れたお兄さんができて、嬉しいんじゃないかしら。だから手を焼くことを、ワザとするのかもしれませんよ」 年の離れたお兄さんなら自分、文句を言わない自信がある。「ご自宅に戻ったら、きちんと労ってあげてくださいね。病は気からです」 確かに病気持ちの太郎に対して、飼い犬の躾とばかりに、つらくあたることしかしていなかったかも。「わかった、声をかけてみるよ」 「声をかける前に、深呼吸をしてからですよ。きっと驚きますから」 口元を押さえて、まじまじと俺の顔を見る視線は、どこか物言いたげだった。「村上さん、俺の家でなにかを見ているんでしょ?」 「夕飯を置きに行ったら、偶然見ちゃったんです。でも今日は、いらなかったみたいですね。桃瀬さんが作った、餃子もあるみたいだし」 「いつもすみません。食べ切れなかった分は、翌朝に回すので助かりますよ」 立ち上がって頭を下げると、村上さんは右手をワイパーのように、ぶんぶん左右に振りまくる。「
last updateآخر تحديث : 2026-07-22
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Love too late:揺れる想い3

「玉子焼きの味付けって、そんなにシンプルでいいもんなんだ」 「なにを入れたら、あんな味になるんだか。おまえ、料理をしたことがないだろ?」 「そりゃ、まぁ……作ってもらってばかりだと悪いから、頑張ってみたんだけど」 大きい躰を縮こませて、しょんぼりした太郎。昔飼っていた犬が、こんな表情をしていたっけ。 そんな太郎の顔に、思わず口角があがってしまう。まったく、手のかかる困ったヤツだな。「わからなければ、聞けばいいだろ」 「でも……」 口を尖らせてチラリと冷蔵庫を見やる視線で、瞬時に理解してしまった。「ああ、桃瀬に対抗したのか。そりゃ無理なことを」 「無理だってわかっていたさ! それでも挑むのが、男ってもんだろ!」 悔しそうな顔して、プイッとそっぽを向く頭を、ぐちゃぐちゃと乱暴に撫でてやる。「桃瀬と俺が出逢ったときには既に、アイツは家事全般をこなせていたからな、お姉さん仕込みでさ。普通の男なら、誰も太刀打ちはできないって」 「だけどっ……」 「嬉しかった。無駄だとわかっていながら、一生懸命に頑張ってくれたこと」 告げた瞬間、じわじわと頬に熱が集まるのが、すぐにわかってしまった。「タケシ先生――?」 それを隠すようにコンロの前に立って、卵焼き用のフライパンを火にかける。油を引き隅々まで行き渡らせると、溶いた卵を入れてクルクルと手早く巻いていった。「ほら、おまえもやってみろ。簡単だから……」 太郎に菜箸を押し付けるように手渡し、フライパンの前に立たせ、後ろから手を伸ばして、ところどころ補助してやりながら、卵を巻くことを覚えさせてやった。「すげっ、ちゃんと卵焼きの形になってる」 「ああ、良かったな」(――もっと、なにか言ってやりたいのに。それが言葉として出てこないなんて) 後ろから抱きしめた、太郎の体温をじわりと感じて、妙にどぎまぎしてる自分を自覚したら、急に恥ずかしくなってしまい、逃げるように体をぱっと離した。「とにかく、ここからひとりでやってみろ!」 顔を見られないように、さっさとキッチンから出る。(なんだこれ……動悸・息切れが、いつまで経っても治まらない)「どうしたの、タケシ先生?」 「あ、いや。先にシャワー浴びてくる」 まくし立てるように答えて、キッチンから身を翻した。とりあえず頭を冷やそう。考えるのはそれからだ
last updateآخر تحديث : 2026-07-23
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Love too late:揺れる想い4

*** 決意も新たにリビングに戻り、桃瀬が作ってくれたスタミナ餃子を焼いて、テーブルにセッティングし、夕飯がはじまった。「タケシ先生、その変な卵焼き、食べないでください……」 「なんでだよ、勿体無いじゃないか」(いかーん! いつものクセが出て、つい不機嫌モードで喋ってしまった)「でも俺の作ったのは、すっげぇ美味しくないし」 「まぁな。美味しくないのは承知の上だけど、おまえが一生懸命作ってくれたんだし、あり難く戴くよ」 パクパクと口に運び、ご飯を突っ込んで味がわからないようにする。(とにかく、もっと甘い雰囲気にせねば。むーっ、太郎が喜びそうなネタ、なにかないかな?)「太郎あのさ……」 「どうしたの、タケシ先生?」 「おまえ、絵を描くのが上手いんだな」 今日あった出来事を走馬灯のように思い出し、やっと見つけることに成功! 褒められた太郎は、頬を少しだけ赤くした。「妹の面倒を見るのに、よく絵を描いていたから。リクエストを受けて描いたおかげで、模写が得意なんだ」 「そうなのか。俺は絵心がないから、羨ましいと思う……」 ――会話が続かない。いつもなら別の意味で、もっと盛り上がるのに。「なぁ……さっきから、どうしたのさ?」 「な、なにが?」 太郎は猜疑心を含んだ目で、俺をじっと見つめる。「俺のこと、ムダに持ち上げようとしてる。まるで、やましいことでも隠そうとしてるみたい」(ギクッ!)「おまえに隠し事するって、なにをだよ。がっ、頑張ってる姿を見て、褒めないほうがおかしいだ、ろ?」 口が回らなくて、言葉が変に上滑りする。焦ってるせいか不味い卵焼きに、さくさく箸が進んだ。味なんて全然わかりゃしない。「だけど、さ」 「本当におまえは、すごいって思ったんだ……俺が無理だとはっきり言ってるのに、臆することなく押しの一手で、一生懸命に迫ってきて」 「タケシ先生……」 どうしよう、顔が熱くなっていく。そんなにじっと見ないでほしい。「う……はじめは、すっごく迷惑だって思ったけど、途中からいろいろ持て余しちゃって、どうしていいか本当にわからなくて、冷たい態度ばかりとっていたよな」 甘い雰囲気にすべく、台詞を用意していたワケではない。今は零れるように、次々と言葉が出てくる。「まぁ結構、グサッとしたけど」 「それは、悪かったと思ってる。おま
last updateآخر تحديث : 2026-07-24
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Love too late:揺れる想い5

いつもバレないように心の奥底に想いを隠し、自分を偽って本音が言えないでいた。だけど太郎にははじめから、素の自分でいられた。これまた不思議なんだけど。 ――出会い頭、ここにキスをされて。 病院前で出逢ったときのことをぼんやりと思い出しながら、そっと右目尻に触れてみる。『ああ、そうだよ重病人だわ。アンタに恋をした、一目惚れだから』 偉そうな顔して堂々と告げられた告白に、驚きを隠せなかった。こんな俺の、どこがいいんだよって。 そう思った途端に呆れ果てて、素の自分で対応してしまった。 そして太郎に翻弄されまくり、いつしか抱きしめられるそのぬくもりを、心地良いと感じた。 いつも誰かが自分の横にいる――それが日常で当たり前だと、今は思ってるところがある。はじめは、不快しか感じられなかったのに。 掛け布団をぎゅっと握りしめたとき、ギギッと扉が開く音が聞こえたあとに、息を殺しながらソイツは布団の中に、ゆっくりともぐり込んでくる。寄り添うように横になり、寝たふりをした俺の右目尻に、そっと唇を押しつけた。「好きだよタケシ先生。今日はすっげぇ嬉しかった」 ベッドの中で横になっているのに何故だか、酷く頭がクラクラする。一気に心臓が全速力でバクバクと駆け出して、激しく脈を刻み始めた。 あんな子供騙しみたいな言葉に、まんまと踊らされやがって――やっぱり、まだまだガキなんだな。「いつも通り顔は怒っていたけど、あんなにほっぺたを真っ赤にして言われたら、俺のことを好きだって勘違いするぞ?」 「ブッ!?」 あり得ない言葉に思わず吹いてしまい、口元を押さえたが既に遅し……。「やっぱ起きてたんだ。ここにキスしたとき、まぶたが微妙にヒクついてたから、もしかしてって思ったんだ」 太郎は笑いながら、右目尻を人差し指でツンツンと突っついた。「で、さっきのはいったい、なにを考えて言ってくれたワケ?」 わざわざ俺の耳元で喋り、艶っぽく笑ってる様子が、声色で伝わってくる。「……さっきのって、なんだ?」 「おまえに好かれて嬉しいって、言ってくれたじゃん。あれって、本心なのかなって」 心の中にいるもうひとりの自分が「大変だ、どうしよう」と右往左往し、慌てふためいてる様が見え隠れしていた。 恋と分類するにはまだ早いような――微妙すぎる心のせいで、見事に言葉が詰まった。苦手だった
last updateآخر تحديث : 2026-07-25
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Love too late:揺れる想い6

さっきまで空を照らしていた三日月が、かくれんぼするように雲の間に隠れて、室内を深い闇に落とす。「なぁ、タケシ先生からキスしてよ」 俺の決意を確かめる言葉に、ゴクリと喉を鳴らしてしまった。(もう逃げられない。コイツのために、思いきってやるしかないだろう)「……どうなっても知らないからな」 「なにそれ。すごい技でも、披露してくれんの?」 鼻で笑ってバカにしてきたので、太郎の細い首に両腕を絡ませながら、無理やり引き寄せてやる。「どれだけ俺がおまえを想っているか、これでわからせてやる……」 文句を言わせないよう太郎の唇にそっと、自分の唇を重ねた。 ほんのちょっとの好きを、どうやって表現すればいいのか。正直なところ、わからなかった。だけど唇の中に忍んでいった舌を、待っていましたとばかりに素早く絡み捕られ、体に回されていた腕に、更に力を込めて抱きしめてくる。 仕掛けたのは俺なのに、何だかわざわざ捕まった気分。太郎の想いが、これでもかと伝わって――その想いがどんどん体に流れ込んできて、三日月だった俺の気持ちを、満月へ形をゆっくり変えていく。 満たされた想いが、コイツを好きだと自分で感じているのが不思議だった。全然好みのタイプじゃなかったはずなのに、太郎の宣言通り俺ってば洗脳されたのか? それとも――。「太郎……好きだ。もっと――」 自然に出てきた言葉で、気持ちを伝える俺へ応えるように、離れた唇が角度を変えて、ふたたび激しく重ねられた。そして、ベッドに投げ出される。ぎゅっと抱きしめられ、深く愛される悦びに満ち震えてしまった。 その内に、どんどん熱くなって――。「はぁ……あぁあ、んっ……」 それが甘い声となって、思わず出てしまった。 自分の声が恥ずかしくてぎゅっと手を噛むと、面白くなさそうな顔をした太郎に、それを外される。「もっとタケシ先生の声、聞かせてよ。そんなにガマンしないでさ」 こんな鼻にかかった甘ったるい声、聞かせたくないし言いたくもない。 俺が首を横に振ると、太郎は苦笑いしながら両手を腰の辺りで固定させるべく握られてしまい、しっかりとホールドされてしまった。「くっ……いきなりぃ、っ……んんっ……貪りすぎ、だっ」 敏感な部分に与えられる、直接的な快感に思わず腰が何度も浮いてしまい、シーツを引っかくように、無駄に足をバタつかせてし
last updateآخر تحديث : 2026-07-26
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Love too late:揺れる想い7

*** 窓に雨が当たる音で、ふと目が覚める。ぼんやりとしながら、目の前を見てみると、いつもは背を向けて寝ているタケシ先生が、俺の胸の中であどけない表情で寝ていた。 間近で顔を拝めるのは、とてもあり難いけど、俺の好きな泣きボクロが、枕でしっかりと隠れて見られないのは、えらく残念だった。 寝乱れている髪を整えるように、そっと撫でてやると、気持ちよさそうな顔をしてくれる。「ホントはもっと、べったりしたいけど、それすると、すっげぇ怒るもんなぁ。起きない今のうちに、ベタベタ触っちまえ」 タケシ先生の柔らかくて、しなやかな茶色い髪を梳くように撫でているだけで、もう超絶幸せ。幸せはそれだけでなく、念願だったエッチもできたし――。「イかせようとして、イかされちゃった俺って、ホントかなり情けないよな」 初めてでつらいだろうからと、ゆっくりナカをかき混ぜるように責めていたら、突然みずから腰を激しく動かしてきて、すっげぇギョッとした。そして泣きボクロを、滲んできた涙で濡らしながら、言ってくれたんだ。『太郎……太郎っ、おまえが好きだ……俺の横で、ずっと笑って……いてほしい』 それを聞いた瞬間、すげぇ嬉しすぎて、つい先にイってしまったけれど、満足感とか充実感で満たされた体を使って、なんとかタケシ先生をイかせてから、ぎゅっと抱きしめ合った。「……俺も、タケシ先生の横で笑っていたいよ。アンタに怒られながら、バカにされて笑われながら、それでも一緒にいられたら、それだけで――」 心の底から愛しいと思える、この人の傍に、ずっといられるだけで――。「生きたい、生きなきゃならない……」 タケシ先生は医者だから、俺を生かそうとウソをついて、自分の体をエサにしたのかもしれない。それでも嬉しかった。アンタが言ってくれた言葉が、じわりと胸に沁みこんだよ。 俺はずっと罪を重ねるように、愛の言葉と言いながら偽りの言葉を、いろんなヤツに囁いていた。だけどそれはこの人のために、真実の愛の言葉を告げるためだったのかもしれない。そう思うだけで、胸が絞られるように、キリキリと痛くなる。「タケシ先生、すっげぇ愛してる。今までありがと……」 ――今度はちゃんと、起きてるときに言ってやりたい。「今までワガママ言って、いろいろ無理させて、ごめんなさ、ぃ……」 謝った言葉が泣き声に変わり、掠れな
last updateآخر تحديث : 2026-07-27
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Love too late:揺れる想い8

*** 布団の中にいるのに、肌寒くて目が覚めた。いつもなら背中にあたたかい、太郎のぬくもりを感じるはずなのに。 ぼんやりしながら、首を動かして横を見ると、そこには誰もいなかった。「太郎!?」 慌てて起き上がると、腰に激痛が走る。「ううっ!? なんだぁ?」 途中から記憶がないので、自分がどんなことをしたのか。そしてどんな感じだったのかすら、皆目見当がつかない状態。しかしこれだけ、痛みが走るということは――。「相当頑張ったっていう証拠、なんだろうな」 苦笑いを浮かべながら、改めて自分を見てみる。身なりがきちんと整えられているのは、太郎が後始末をしてくれた証だろう。「ヤるだけヤって寝こけるなんて、太郎のことをバカにできないじゃないか」 朝起きて、太郎が傍にいなかったことがなかったので、今の状態がかなり違和感だらけだった。昨日あんなことをした後だし、寂しさも手伝って、ウロウロと家中を捜して歩く。「太郎、おーい返事しろよ」 下に降りて、病院の中も捜索したけど、どこにもいなかった。「いない……もしかして――」 俺が手に入り、満足したからって出て行くような、不真面目なヤツじゃないのは、すぐにわかったのだけれど。「……一言くらい、俺に声をかけるなり、手紙を置いてくなりして、出て行けっていうんだ!」 ひとりでプンスカ怒りまくり、足音を立てて階段を上がった。喉が渇いたので、そのままキッチンに向かう。「これじゃあまるで、ポイ捨てされたみたいに感じるじゃないか!」 苛立ちながら独り言を呟いたとき、シンクの上に置いてある、それが目に留まった。「太郎のスケッチブック。もしかしてなにか、メモが残されているのか?」 慌てて手に取り、パラパラと捲った先にあったものは――。「これ、は……」 そこにあったのは、高台へ続く階段と、駐車場の風景画があった。他人が見たら、へぇって終わるような、なんてことのない景色なんだけど。「あのときのことを、絵に描いていたなんて」 それはふたりで、朝焼けを見た帰り道。先に下りる太郎の背中を追いながら、ムスッと思いきりふてくされて、のろのろと後ろを歩く俺。頑として治療を受けないと言い張った太郎が、すっごく憎くて堪らなかった。 怒りに満ち震えながら、高台の階段を下りると、駐車場に停めてある、黄色の軽自動車が、ポツンと停まって
last updateآخر تحديث : 2026-07-28
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Love too late:大切なぬくもり

なにも考えたくない。正直、この家にいることも苦痛に感じてしまう。部屋のあちこちに太郎の存在があって、どんな会話を交わしたのかを、鮮明に思い出してしまうから。 些細な内容や、怒ってばかりいた俺の言葉に反抗する感じで、バカにするような態度をとり、口答えをしていたアイツ。(――なんでこんなに、胸が押しつぶされそうなくらいに、すごくつらいんだよ。そこまで好きじゃ、なかったはずなのに)「桃瀬に比べたら、太郎に対する好きなんて、そんな――」 ちょっと待て。ちょっとの好きが、どうしてこんなに、色濃くなっているんだ? 桃瀬の好きと比べたからこそ、その理由がいとも簡単にわかってしまった。まるで俺の心に烙印を押すかのような、それは鮮やかな――。「信じられない。こんなことになるなんて……」 いなくなってからも、こんなに翻弄されるとは、思ってもみなかった。 重たい体を引きずり、近くのコンビニまで歩く。そして、大量の酒を購入して自宅に引きこもり、真昼間から煽るように、ガブガブと呑みまくった。 どれくらい時間が経ったのだろう。いつもなら、下の病院で働いてる時間なので、不真面目な今の行動では、時間感覚が麻痺していた。 ピンポンと自宅のインターフォンが鳴ったけど、誰にも逢いたくなかったので、無視を貫かせてもらう。誰とも話をしたくないし、関わりたくなかった。 この痛みも三日後には、少しマシになっているのだろうか? まるで病人状態の今の自分。立ち直れる気力が、まったく感じられない。「勝手にお邪魔するぞ、周防いるか?」 聞き慣れた声が、いきなり聞こえたかと思ったら、桃瀬が恋人を引き連れて、颯爽とリビングに登場する。(落ち込みすぎて、鍵をかけ忘れてしまったのか。こんな情けないトコ、桃瀬に見られたくなかったのに、タイミングが悪い) 内心イラッとしながら、ソファの上からふたりを見つめてやる。「なにしに来たの? せっかくのお休みを使って、昼間から呑んだくれてさ、ひとりで楽しんでいたのに」「呑んだくれてって、おまえ、それはどう見たって呑み過ぎだろ。こんなに散らかして」 持ち前のオカン機能を、ここぞとばかりに発揮した桃瀬が、そこら辺に落ちてる空き缶を、手早く片付けていく。「あの周防さん、こんばんは。お邪魔してます」 てきぱきと動く桃瀬の傍で、小さくなりながら、気遣うように
last updateآخر تحديث : 2026-07-29
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Love too late:大切なぬくもり2

「うっ、ひっ……つらさを認めたら、楽になれるの?」 涼一くんは、泣きじゃくる俺を胸元に抱き直し、優しく背中を擦ってくれる。何度も何度も。「楽にはならないけど、寄り添うことならできます。だけど、こんなことしかできなくて、ごめんなさい……」 あんなに酷いことを言ったのに、優しさで返す涼一くんのセリフは、困ってしまうほど居心地が良い。「……っ、うっく……ごめんね、俺っ……」 太郎のこと、自分の気持ちのこと、今まであったこと全部、すべて喋ってしまいたいのに、涙が次々と溢れまくって、それをさせてくれない。 そんな俺を桃瀬はなにも言わず、ただ黙って見つめていた。「――涼一くんの言うとおり、あんなヤツでもいなくなったら、寂しく思うものなんだね」 ひとしきり泣いて、落ち着いてから手で涙を拭って、やっと言葉を口にする。「ずっと傍にいたなら、尚更じゃないでしょうか」 「アイツが勝手に、くっついていただけなのに。ウザイって、いつも思っていたのに……」 傍らに置いてあったティッシュの箱を引き寄せ、溢れてくる涙を拭ってから、やっと顔を上げた。 桃瀬と涼一くんが心配そうに俺を見ていて、無言でかけられる優しさのお蔭で、心にふんわりとした安心感が芽生える。「……太郎が出て行ったのは、病気を治すためなんだ。ここでは治せない病を、アイツは抱えていたから」 安心したら、胸の中に抱えているもの全部を、吐き出したくなった。今まであった出来事を、ふたりはどんな顔して聞いてくれるだろうか。「ふたりとも聞いてよ。アイツ酷いんだ。俺が病気を見つけて、他所で治療しろって言った俺に向かって、付き合ってくれたら治療してやるなんて交換条件を、偉そうな顔して、堂々と出しやがってさ」 呆れながら言い放つと、桃瀬が驚いた声をあげる。「ちょっ、それって周防が付き合いを断り続けたら、病気が治らないじゃないか」 「そうだよ。治療しなかったらアイツ、死んじゃうのにね」 「それって太郎くんは命がけで、周防さんに迫ったってことになるんですね」 俺の言葉に、大きな目を更に見開いて、ビックリしたような声をあげる涼一くん。「……そう、呆れるだろ?」 俺が肩を竦めると涼一くんは、ぶんぶん首を横に振る。「呆れるよりも、すごいなって思いました」 「すごいって、どこがだ?」 桃瀬が涼一くんの横に座り込み
last updateآخر تحديث : 2026-07-30
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Love too late:大切なぬくもり3

「らしくないぞ周防。おまえもっと、ガッツのあるヤツだったろ」 「しょうがないでしょ。恋は誰だって、臆病になるものだよ」 苦笑いして言うと、桃瀬が振りかぶって俺の背中を叩いた。「いたっ!」 「なんのための親友なんだよ俺は! おまえが病気の俺を助けてくれたように、俺だっておまえを助けたいんだ!」 「桃瀬……」 そんな俺たちのやり取りを、ふわりとほほ笑みながら見てる涼一くんの視線が、何気に照れくさく感じる。「あのね、太郎くんのこと、わかる範囲でいいから、詳しく教えてほしいです」 言いながらスマホを取り出し、メモの準備をする姿に、俺は眉根を寄せた。「もしかして、捜してくれようとしてる? だけど本当に、アイツの情報がないんだ」 手がかりになりそうなものなんて考えても、ほとんど無いに等しい。「この若さで死にそうな病気って、すごく手がかりになりそうな気がするんですけど、教えてもらっちゃダメでしょうか?」 ――確かにそうだ。甲状腺癌はあまり男性がかかることのない病気だし、手がかりになるといったら、そうなのだけれど。「まあ……俺から教えてあげてもいいけど。それを知ったところで、個人情報になるからね。簡単に、他所の病院が教えるワケ、ないと思うよ」 「とある人に頼んで、調べてもらったら、きっと全部調べつくして教えてくれると思うんです」 にっこり笑って、涼一くんは桃瀬の袖をグイグイ引っ張ると、うへぇとあからさまに顔を歪めて、すっごくイヤそうな表情を浮かべた。「あー、アイツに頼むのか。それは間違いなく、捜し当てるだろうな」 「僕らの知り合いに、捜すのが上手な人がいるんです。だから教えてください」 「でも……」 やはり言い淀んでしまう。「郁也さんも僕も周防さんの恋を、手遅れなんかにしたくないって思っているんです」 涼一くんの言葉に、桃瀬はそうだと言いながら、首を縦に振って同意する。「それじゃあ臆病な周防に、追いかける理由を俺からつけてやるよ」 「なにそれ?」 「太郎は、おまえの患者だったんだ。その後、病気がどうなったのか。医者として知りたくないか?」 「確かに、気になるけど」 「それなら確認するために、太郎を追いかけたことにすればいい。あとはお互い想い合っていれば、なるようになるんだよな?」 なぜか俺に言わず、涼一くんに向かって言うと、そ
last updateآخر تحديث : 2026-07-31
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