*** 慌しかった一日が、やっと終わる――桃瀬の乱入で一時はどうなることかと思ったけど、アイツの面倒見の良さを見事に発揮して、子どもたちとの和を再建。その保父さんぶりを、遠巻きからお母様たちが熱っぽい視線を送りながらじっと眺めるという、なんともいえない構図が待合室にできあがった。(結局、なんだかんだ言っても、桃瀬ってすごいんだよね。俺は絶対に真似できない) ありのままの自分をさらけ出した途端に、子どもたちに泣かれてしまうのが目に浮かぶ。『すおー先生、いつもと違うっ! 声が低くて男みたいな喋り方してるし、目つきがコワイ!』 そんな言葉が子どもたちから、たくさんと聞けそうな気がする。 パソコンの電源を落し、机の上で寝そべっていたら、村上さんがニコニコしながら、診察室に入ってきた。「お疲れ様でした、周防先生」 「村上さんこそ、今日はフォローありがとうございました」 労いの言葉をかけて、両腕を天井に向けて伸ばしてみる。「周防先生はみんなに優しいのに、どうして太郎ちゃんにだけ冷たいんでしょう?」 唐突に聞かれ、言葉に詰まってしまった。「そういうふうに……見えるのかな?」 「拒絶とまではいきませんが、他の人とは明らかに違います」 他人に指摘されるようじゃ、本当に駄目だな。しっかりと心を改めなくては――。「太郎ちゃんは年の離れたお兄さんができて、嬉しいんじゃないかしら。だから手を焼くことを、ワザとするのかもしれませんよ」 年の離れたお兄さんなら自分、文句を言わない自信がある。「ご自宅に戻ったら、きちんと労ってあげてくださいね。病は気からです」 確かに病気持ちの太郎に対して、飼い犬の躾とばかりに、つらくあたることしかしていなかったかも。「わかった、声をかけてみるよ」 「声をかける前に、深呼吸をしてからですよ。きっと驚きますから」 口元を押さえて、まじまじと俺の顔を見る視線は、どこか物言いたげだった。「村上さん、俺の家でなにかを見ているんでしょ?」 「夕飯を置きに行ったら、偶然見ちゃったんです。でも今日は、いらなかったみたいですね。桃瀬さんが作った、餃子もあるみたいだし」 「いつもすみません。食べ切れなかった分は、翌朝に回すので助かりますよ」 立ち上がって頭を下げると、村上さんは右手をワイパーのように、ぶんぶん左右に振りまくる。「
آخر تحديث : 2026-07-22 اقرأ المزيد