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奪われていたもの

Author: 影畑凛星
last update publish date: 2026-09-01 22:03:51

「次は君たち自身の罪について、詳しく聞かせてもらおう」

 エドワード公爵様の言葉に、マルコとベアトリスは揃って青ざめた。

「ま、待ってください!」

 先に声を上げたのはベアトリスだった。

「確かに、寄付された品を売ったことは認めます!」

「ですが、すべて私たちが使ったわけではございません!」

「では、何に使った?」

「孤児院の維持費です!」

 必死に訴える。

「建物の修繕にもお金が必要ですし、薪も買わなければなりません。子どもが三十六人もいれば、いくらあっても足りないのです!」

 私は思わず黙り込んだ。

 それだけを聞けば、少しだけ分かる気もする。

 孤児院を維持するのにお金が必要なのは当然だ。

 でも――。

「ならば」

 ヴィクター殿下が口を開く。

「なぜ寄付金の額を書き換えた?」

「……っ」

 ベアトリスが言葉を失う。

「必要な支出なら、帳簿に記せばいい」

「隠す必要はない」

「それは……」

 何も答えられない。

 エドワード公爵様は騎士へ視線を向けられた。

「引き続き帳簿を調べろ。孤児院の職員からも一人ずつ話を聞きなさい」

「はっ」

「売却先の商人についてもだ」

 騎士が一礼す
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    「次は君たち自身の罪について、詳しく聞かせてもらおう」 エドワード公爵様の言葉に、マルコとベアトリスは揃って青ざめた。「ま、待ってください!」 先に声を上げたのはベアトリスだった。「確かに、寄付された品を売ったことは認めます!」「ですが、すべて私たちが使ったわけではございません!」「では、何に使った?」「孤児院の維持費です!」 必死に訴える。「建物の修繕にもお金が必要ですし、薪も買わなければなりません。子どもが三十六人もいれば、いくらあっても足りないのです!」 私は思わず黙り込んだ。 それだけを聞けば、少しだけ分かる気もする。 孤児院を維持するのにお金が必要なのは当然だ。 でも――。「ならば」 ヴィクター殿下が口を開く。「なぜ寄付金の額を書き換えた?」「……っ」 ベアトリスが言葉を失う。「必要な支出なら、帳簿に記せばいい」「隠す必要はない」「それは……」 何も答えられない。 エドワード公爵様は騎士へ視線を向けられた。「引き続き帳簿を調べろ。孤児院の職員からも一人ずつ話を聞きなさい」「はっ」「売却先の商人についてもだ」 騎士が一礼する。 これで終わりではない。 むしろ、ここからが本当の調査なのだろう。 私たちが今日一日見ただけでは、何年も続いていたことのすべてなんて分かるはずがない。◇◇◇「それから」 エドワード公爵様がベアトリスへ向き直る。「子どもたちは、当面こちらで保護する」「えっ?」 ベアトリスが顔を上げる。「そんな! この孤児院はどうなるのです!」「それを今、君が心配する必要はない」 きっぱりとした言葉だった。「少なくとも、調査が終わるまで君たちに子どもを預けることはできない」 ベアトリスは何か言おうとしたけれど、騎士に促されて黙り込んだ。 私は食堂へ目を向けた。 子どもたちはまだ、温かい食事を少しずつ口にしている。 事情なんて何も分かっていないのだろう。 ただ、今日はご飯がある。 それだけで嬉しそうにしている子もいる。 その姿を見ていると、また胸が苦しくなった。「……シェリル」 隣から声がする。 メイナードだった。「大丈夫?」「うん」 私は頷いた。「ちょっと、悲しくなっただけ」 するとメイナードはしばらく私を見つめたあと、小さく呟いた。「シェリル

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     本当に裁かれるべきなのは、ミアだったのだろうか。 その答えは、もう分かっている気がした。「ヴィクター皇太子殿下」 私は隣に立つヴィクター殿下を見上げる。「昨日のお話を、覚えていらっしゃいますか?」「ああ」 ヴィクター殿下は短く答えた。「盗みの罰についてだろう」「はい」 私は頷く。 昨日、ヴィクター殿下はおっしゃった。 厳しい罰があるからこそ、人は罪を思いとどまるのだと。 その考え方が間違っているとは、今でも思わない。 でも。「ミアは、罰が怖くなかったのでしょうか」「……何?」「盗みをすれば、手を切り落とされる」「きっと、ミアも知っていたと思います」 家庭教師から教わるような難しい法律を知らなくても、大人たちが何度も口にする罰なら、子どもだって知っているだろう。「それでも、ミアは薬草園へ来ました」 ヴィクター殿下が黙り込む。「厳しい罰があっても、命令された子どもには盗みをやめることができなかった」 私はマルコを見る。 男は俯いたままだ。「だったら……」 少しだけ迷ってから、言葉を続ける。「罰を重くするだけでは、こういう盗みはなくならないのではないでしょうか」 部屋が静まり返った。◇◇◇ ヴィクター殿下はすぐには答えなかった。 十歳の少年とは思えないほど真剣な表情で、何かを考えている。 やがて、マルコへ視線を向けた。「お前は、自分で盗みに行かなかった」「……はい」「なぜだ」 マルコは答えない。「捕まれば、自分の手を失うからか」「……」 沈黙。

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