All Chapters of スターの冷たいプロポーズ〜今さら愛してると言われても……: Chapter 11 - Chapter 20

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11.歪な結婚生活

「君のことは公表しない」 「はぁ。やっぱり日陰の身ってことですね」 「君のためだ。俺の妻だなんて知られたら、外も自由に歩けなくなるからな」 遠慮なくため息をつかせてもらう。 ……そんなこと、婚姻届を出す前からわかりきっていたこと。 そして私自身、予想していなければいけないことだった。 「幸いこの家は、事務所の社長と権堂しか知らない」 ……奈津が知っていると言いかけて、彼女なら秘密を守るだろうと思い直す。 「都内に事務所が借りているマンションがある。今まで、家に帰れない時はそこに寝泊まりしていた。……だから大多数の人間はそこが俺の住まいだと認識している」 「それじゃこれからも、大雅さんはここへはあまり帰ってこないということですね」 「……たいがーっ!これみてっ!」 2人で話していると、庭で遊んでいた春希が、大雅の背中に突っ込んできた。 お昼寝から目覚めた彼が、大雅の姿を見て喜んだのは言うまでもない…… そんな春希の手に、何やらうごめくものが乗せられていることに気づいた。 うぎゃっ、と小さく叫んで離れる花。 「おぉ?!これはウスバカマキリっていう珍しいカマキリだぞ?……どこで見つけた?」 興味を示した大雅に、春希はとても嬉しそうな笑顔を見せながら……大きな手に小さな手を絡ませる。 2人で広い庭の草むらをのぞき込み、そのうち遊びはじめた。花はそんな姿を微笑ましく思う。 ……できたら毎日帰ってきて、夕飯とお風呂だけでも一緒にできたらいいのに。 「でもさすがに……それは難しいのかな」 大雅が帰らない夜、何気なくつけたリビングの大きなテレビに、彼のこれまでの活動が勝手に映し出された。 それは華々しい活躍ぶりで…… 花は映像に吸い込まれるように見入って時間を忘れた。 ……特にVÉLOURSのボーカルとしての歌唱力、表現力には感動して涙が出るほど。 ダンスも歌も、これまで目にしてきたアイドルのそれとは格の違う完成度に魅了され、思わずライブに行けないものかと考えてしまう。 「あのぉ……VÉLOURSというグループの活動はもうなさらないんですか?」 「……は?」 珍しいというカマキリは、なんと鈴里家の庭にはもう2匹生息していたようで、両手にカマキリを捕獲して家に入ってきた大雅に思い切って質問した。 間が悪かったのか、そのままの
last updateLast Updated : 2026-07-15
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12.子供の他にも……?!

「花さん、お待たせしました……!」「おはようございます、権堂さん。……それではタッチ交代ということでよろしいですか?」「はい!大丈夫です。駅まで送れたら良かったのですが」翌朝、大雅の言葉通り権堂がやってきた。リビングのドアを開けた途端、喜び勇んで駆けつけた春希。早速大きな体によじ登っているところを見ると、相当懐いているのだろう。「いえ、歩けるので大丈夫です!それでは行ってまいります」春希を置いていく罪悪感も薄れ、昨夜丁寧に書いた退職願いを持って家を出た。駅までの道を歩きながら、花は昨夜のとんでもないハプニングを思い出す。バッチリ裸体を見られてしまった……「とんでもなく恥ずかしいけど、驚かせたお詫びで謝ったのにな……」昨夜、ハラリと落ちたバスタオルを慌てて巻き直し、逃げるように寝室を出たものの、どこで寝たらいいか聞き忘れてまたリビングのソファで寝た。翌朝起きてきた大雅に気づいて、すぐに昨夜のことを謝った。「あの、昨夜は変なものを晒してしまい、すみませんでした」悪夢は見ませんでしたか?……と、ちょっとジョークを入れつつ笑いにくるんで忘れて欲しかったのに。「俺は何も見ていない」ハッキリと不機嫌な声、そして表情が、声をかけられた不快を表していた。朝は機嫌が悪い、という人は一定数存在する。……大雅もそういうタイプか。芸能人だし激務だろうしプライベートないし、朝の機嫌が悪いのは仕方がない。「だからぁ、急にこんなものを持ってきて辞めさせてくれって……話が通らないだろ?」「はい。……そこで、私の代わりに入社してくれるスタッフを手配をしました。必要であれば今すぐ紹介しますが」急な退職で社長にごねられたらそう言うように伝えてくれたのは権堂だ。……ということは、きっと大雅さんの指示。「私とまったく同じ条件で働けるスタッフですが、どうしますか?」迅速な対応策を持ってきた花に、文句をつけられなくなって、社長は黙り込む。「……いらないよ花ちゃん。社長はゴネたいだけだから!」苦虫を噛み潰したような表情で拳を握る社長を見かねて、ベテラン社員が口を挟んだ。「そうよ!花ちゃんが抜けても私たちだけで十分回るわ。……先代も少し人件費を見直せってこの前言ってたしね?」「え、父さんが?……そうなの?」「やだ!……社長に言わないで私たちに言うなんて、樹木也
last updateLast Updated : 2026-07-16
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13.入ってはいけない部屋

「はなちゃ〜ん!おうまさんのほんよんでぇ」「あ……わかったよ!」週刊誌の表紙にギリギリまで目をやり、笑顔の2人を脳裏に焼き付ける。女性の方が誰なのかわからない……今日からテレビをつけて、少し情報を入れないとダメだわ。私、何も知らなすぎる……子供に絵本を読み聞かせるスペースには、春希と同じくらいの子供とお母さんらしき人が何組かいた。自分も母親に見えるかな、なんて、妙にくすぐったい気持ちを抱えながら春希を膝に乗せる。「……お馬さんのお母さんは『ヒヒィ〜ン』と笑って、赤ちゃん馬を背中に乗せ、パッカパッカと歩き出した」続きを読もうとして、ふと春希を見ると、いつの間にかウトウトしている。昨夜は早めに大雅さんと横になってぐっすり眠ったと思ったのに、まだ眠いのか……「おうまさん、おわっちゃった?」しばらくユラユラしながら寝かせていたが、ハッとして起き出す春希。「昨日春くん眠れなかったの?たいがー、寝相悪かった?」いたずらっぽく聞いてみれば、春希は意外なことを言う。「たいがーずうっとモゾモゾしてたの」よくよく聞いてみれば、何度も寝返りを打っていた、ということらしい。ふと、さっき見てしまった週刊誌が思い浮かんだ。……女優との密会を撮られ、揉み消せなくて事務所に責められたとか。芸能人はスキャンダルが原因でCM契約を打ち切られたり、下手をすれば違約金が発生すると、以前瑠璃に聞いた事がある。「私との結婚だって、もしもバレたら……」世間に公表しないのは私のためなんて言っていたけど、やっぱりどう考えても困るのは大雅の方だ。春希は花の膝から降りて、読み聞かせ用の絵本を自分で開いて覗き込んでいる。その姿を見守りながら、花の思考はまた、さっき目にした週刊誌に戻ってしまう。密会する恋人がいるのに結婚なんかして……大雅さんはいったい何を考えているんだろう。「春希くんのこと、恋人さんは知ってるのかしら」というより、春希のことを公表していないなんて、まるで存在を否定されてるみたいで。「鬼ムカつく……」近いうち意見してやろう。そう心に決めたところで、ハッと思い出した。「そういえば権堂さん、どこにいるんだろう」こういうとき携帯を持っていない不便さを思い知る……大きなショッピングモールの中、権堂さんを見つけるのは大変そうだ。ところが権堂は、車のトラン
last updateLast Updated : 2026-07-17
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14.結婚の理由 Side.大雅

「……はい、カーットっ!」助監督の声でハッと我に返った。胸ぐらをつかんだ状態で、ヒロイン役の花園ミミを見下ろす。「大雅さん、迫真の演技で素晴らしいんだけど……ミミちゃんが振り回されてるから、少し力を抜いてやって」「あ、すみません」演技に集中できないと、つい力が入ってしまうのは俺の悪い癖だ……胸ぐらを離し、助監督とミミ、両方に向けて謝罪した。「権堂さんに聞いたよ?……探してた人、見つかったんだって?」「本人じゃない。……その娘」「おびき寄せる道具にするつもりでしょ。うまく引っかかるといいけどね」撮影の合間、わずかな休憩時間にミミに話しかけられた。彼女は、2年前の事故を知る数少ないうちの1人。……詳しい事情までを知るのは、彼女と権堂の2人だけだ。「おびき寄せるのは、無理そうだな。今どき携帯を持ってないんだから」2年前、信じられない知らせを受けたのは、こんな風に撮影の合間で休憩をしている時だった。それは後に俺の代表作となる日韓合同映画「境界線のレクイエム」の撮影で海外ロケをしていた時のこと。「……大雅さん、携帯が何度も鳴っています。確認しますか?」権堂が手渡した携帯に表示されたのは、知らない番号からの着信。「……もしもし」「町蔵警察署の松本と申します。鈴里大雅さんの携帯で間違いありませんか?」はい……と返事をすると、信じられない情報が耳に流れてきて言葉を失った。「鈴里歩美さんが運転する車が事故を起こしまして、本人と同乗者2名が救急搬送されました」鈴里歩美は、5歳年上の姉……早くに両親を亡くした俺にとって唯一の家族だ。携帯を取り落とし、呆然とする俺の代わりに権堂が細かい事情を聞き、一旦撮影を離れることになった。たくさんの人間が関わる撮影に穴をあけるなんて、後にも先にもこの時だけ。少々の怪我や体調の異変くらいなら、歯を食いしばってステージをこなし、撮影に挑んできた。だがこの時だけは、ダメだった……「大雅……ごめんね、大事な時に、」病院に到着した時、姉は痛々しく包帯を巻かれた姿で……それは油断ならない状態だと一目でわかった。「子供が、いるの。はるきって、いうの。……好きな人と、結婚の……約束を、」「姉さん、母親になってたのか?なんで教えてくれなかったんだよ、バカだな……」「幸せに、なりたかったよ……」まさに、虫の息…
last updateLast Updated : 2026-07-18
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15.結婚の理由2 Side.大雅

「俺、家庭があるんですよ。……それなのに歩美、子供を産んじゃったわけで、」「自分に責任はないと?」「そうは言いませんけど、事故で怪我をしたことについては咎めませんから……その、」子供を引き取る気はない、ということ……昨夜、姉の部屋で見つけた婚姻届を見たことが脳裏をよぎり、拳をギュッと固めた。「俺には可愛い子供がいるんです。……もう大きくなっちゃったけど、娘はいまだに可愛くて、」和成は知っていたようなことを言うが、姉は既婚者であることを知らなかったのだろう。だからこそ子供を産み、婚姻届に自分の名前を書いて、そっと保管していた……怒りが溢れ返って言葉が出ない。それでも何か言ってやろうと口を開いた瞬間、病室に看護師と医師が入ってきた。……結局その日はもう面会を許されず、怒りは矛先を失って俺の中にくすぶり続けた。そして翌日、再び病室を訪ねると、ベッドが片付けられているという状況に唖然とする。「……前日に入院費を精算して、夜のうちに病室を抜け出したらしいです」治す気のない患者を追う義務もないわけで……病院には、はるきという子供だけが残った。「俺が連れて帰る」未成年後見人の手続きを取り、春希と一緒に暮らすことになった。母子手帳によると、春希は1歳。すくすくと育つ姿に目を細めながら、認知もせずに逃げ出した香坂和成という男を、俺は許せずにいた。探し出してその責任を取らせ、社会的に抹殺する……そんな思いを抱きながらその行方を追っていたのだ。「……香坂、花?」「和成の娘です。20代で、小さな出版社に勤めていることはわかりましたが……」娘か……和成が可愛いと漏らしていた言葉を思い出した。「ちょっと調べてほしい。俺とつながる何か、ないかな……」「大雅さん、それは……」「話してみたいだけだよ。父親の行方とか知ってるかもしれないしさ」心配そうな権堂に、この時俺は、本心を言わなかった。20代の娘なら、俺を確実に知っている。あのVÉLOURSのボーカルである俺に会ったら、平常心でいられないだろう。「和成が可愛いがっている娘に子供を作って、同じように捨ててやるとか……」姉と同じ目に合わせる。それとも……「結婚して逃げられないようにして、春希に会わせる。……それが父親の子供だと知ったら、さすがに居場所を吐くだろう」胸に渦巻く黒い感情で、あの
last updateLast Updated : 2026-07-19
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16.久しぶりに会話とパンツ一丁

あの部屋は……いったいなんの部屋なんだろう。掃除をしながら、大雅さんが切ない瞳で女性の写真を見つめていた秘密の部屋に視線を向ける。「もしかしたら大雅さんには好きな人がいて、立場的にその人と別れなきゃならなくなって……それでも忘れられなくて、たまに思い出に浸る……部屋?」……あら?でも、週刊誌にすっぱ抜かれた恋人がいるんじゃないかしら?「あの人は『花園ミミ』って、有名な女優さんらしいわ!」昼過ぎのワイドショーや過去のドラマを観まくって、芸能界というところにはかなり詳しくなった。それによると花園ミミは押しも押されぬトップ女優。そして……「わが家主の大雅さんも、超人気俳優よ〜!」その場でくるりと一回転。覚えたてのVÉLOURSのヒット曲を口ずさみながら、振り付けをまねてステップを踏んでみる。……そこへ、ガチャっと玄関ドアが開き、仏頂面の大雅さんが入ってきた。「あ、」腰をクイッと捻ったポーズをどうしたらいいか迷いながら……「おかえりなさい。お早いお帰りで……」とりあえず声をかけてみたものの、呆れたような視線とため息だけが返ってきた。そうだった……昨夜、権堂さんが来て教えてくれた。大雅さんは撮影が長引き、帰宅は翌日の午前中になると。「あの、大雅さん……今日はもう、お仕事はおしまいで?」開けっ放しだったので、つい寝室を覗いてしまった。するとシャツを脱ぎ、上裸になった大雅が、スラックスも下ろそうとしている場面……チラっと目が合って、とりあえず後ろを向いた。立ち去らないのは返事を待っていたから……「夕方、友人夫婦が春希に会いにくるから。……何か作ってくれ」「……はっ!」ひと言だけしか返ってこない会話が長く続いたので、普通に句読点のある言葉に感動して振り向いてしまった。「……っ?!」大雅さんは黒いピッタリしたパンツ一丁……あ、パンツというのはボトムスのことではなく、下着という意味だ。ムキッとした上裸と共に、そこに立つ姿は美しい……美しいがエロい。仕事としてこんな格好になったなら、いったいいくら稼げるのかしら。「なにジロジロ見てるの?」大雅さんからクエスチョン付きの言葉をかけられるなんて久しぶりで、感動して両手を口元に当て、思わず前に2〜3歩進んでしまった。……いや、いけない。寝室✖裸体✖男女体の付き合い、体のぶつけ合
last updateLast Updated : 2026-07-20
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17.大雅の友人夫婦

「……ハムと卵が、落ちちゃってます」 持ってきたスプーンで掬い、何気なくそれを大雅の口元に持っていく。 すると眉間にシワを寄せ、少し顔を背けてスプーンを取られてしまった。 ……別に食べさせてあげようとしたわけではない。結果的にそうなってしまっただけだ。 拒否されたような気分になり、花は落書きの裏に書いた料理メモに目を通した。 「パンはこれから焼きます。デザートも、」 「いや、いい」 遮るように言われて、少し悲しくなった。 「パンもデザートも俺が買ってくる」 「え、でも……」 駅前にそれらの店はあるが、それなりに買い物客でにぎわう場所だ。……もし鈴里大雅だと知れたら、大騒ぎになるんじゃ…… 「春希、一緒に行くか?」 「んっ!……いく!」 声をかけられ、喜んだ春希は手に持ったサンドイッチを慌てて口に詰め込んだ。 「あ、それじゃ春くん、水筒を持っていって」 麦茶が入っている小さな水筒はすでに冷蔵庫に入っていて、春希が斜めがけにして持ち歩けるよう、小さなバッグに入れてやる。 「はなちゃん!いってきまぁす!」 素直に水筒を持って、大雅の手を引いて玄関に向かう春希は、満面の笑顔でとても嬉しそうだ。 ……複雑な表情で私を見つめる大雅に、少しは見習ってほしい。 彼は、どうして私には冷たいのか。何か悪いことをしたのだろうか…… 「スターとは、わがままで気分屋なものだと思っておこう」 塞ぎそうな気持ちを奮い立たせ、紅はキッチンに戻り、早速料理の下ごしらえに取りかかった。 夕方になり、大雅の友人夫婦は約束の時間通りにやってきた。 「わぁ〜…春希くん、大きくなったねぇ?!」 「うん!あのね、さんになったの」 左手で右手の指を押さえ、3本指を作る春希。 その姿を柔らかい笑顔で見つめ、友人夫婦は春希の頭を愛おしそうに撫でていた。 「まさか大雅が結婚したなんてね?!」 茶色くて長い髪をひとつに結んだ女性は『春奈』と名乗り、夫だという男性は堂々とした様子で花の前に立つ。 「本当だよ!……こんなに可愛らしい人と付き合ってたのか?!」 「まぁな」 と少し離れたところで、大雅の声が聞こえた。 「はじめまして。大雅の友人で安西圭一と言います」 「……妻の花だ」 少し遅れて
last updateLast Updated : 2026-07-21
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18.冷たい宣言

「結婚式はどこでするの?」食事をしながら歓談していると、春奈が突然NGワードを向けてきて、思わずむせてしまう花。「大丈夫……?ごめんなさい、変なこと聞いたかしら?」「いえ、ずっと春くんの話だったので、突然で驚いちゃって」「もしかして式はもう済ませたとか?……あ、事務所に結婚を反対されて、それどころじゃないのか?」圭一、春奈夫妻の突っ込みに困って、不気味な笑顔を浮かべる花に、やっと大雅が助け船を出した。「そういうわけじゃない。……花が、結婚式を嫌がるから」……むせた喉を潤そうと水を飲んでいる間に私のせいにされた。もちろん、話は合わせなければならない。「そう、なんです。なんというか恥ずかしいし、大雅さんの横に立っても引き立て役にしかならないし……」「それは、その通りだな」いつものことなのだろう。圭一と春奈は大雅の俺さま発言に驚きもせず笑っている。「それじゃ、写真だけでも撮ったら?それなら2人だけでできるし思い出になるわ」春菜は私の顔を見て言うが、決定権は私にはない……「写真はあったほうがいいわよ?……この先子供が生まれたら、見せてあげたいでしょ?」「そう、ですね!い、1枚くらい撮っておくのは悪くないかなぁ……」別に本心ではないが、肯定しなければ変に思われる。とっさにそう思ってそ言ったことだったが……「写真は撮らないから」圭一、春奈夫婦を見送ったあと、冷たく言われてしまった。「それは、わかってます……空気を読んで言っただけなので、それでいいです」そう答えた花に、視線は向かない。目を伏せたままの大雅は、追い打ちをかけるような言葉を続ける。「今後も、こうして生活は続くが……俺が君を愛することはない」口を開きかけた時、散々はしゃいだ春希が疲れてぐずり始めた。その様子を見て大雅がお風呂に誘ったので、花は何か言う機会を失ってしまった。……なぜか、冷たい風が心の中を吹き抜けた気がした。お風呂から出た春希の世話をして、寝室に行く大雅にその後を託し、花はリビングのソファにぐったりと座る。傍らに枕代わりのクッション、そしてタオルケット。寝室として一部屋を与えられた花だったが、布団もベッドもなく、大雅は新たに購入しようとした。それを止めたのは花だった。「私はソファで寝ますから」「そう……」どこで寝ようが興味などないのだろう。以来
last updateLast Updated : 2026-07-22
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19.期間を決めた契約結婚として

ゆっくり振り返る大雅。花は正面からその視線を受けとめた。「……天野不動産と契約を結んだばかりだ。それに、結人くんの今後の学費も一括で支払ったよね?」「はい。確かに約束を守っていただきました」「じゃあどうして?結婚して日も浅いのに、俺に恥をかかせる気?」てっきり、当然のように離婚までのカウントダウンが始まると思った。自分が叶えた事に対する報酬を約束させて……「だって、この結婚に愛はないんですよね?……愛される可能性も、ないんですよね?」言うつもりはなかったのに、泣き言が飛び出してしまう。ジッとこちらを見つめる大雅……口を開く気配はない。「幸い、この結婚はマスコミに知られてません。だったら、知られる前に解消したほうがいいと思うんです」「たとえバレたとして、それが理由で仕事がなくなってもいいと思ってる。俺に失うものなんてない。君との結婚は、それほど意味のあるものなんだよ」ますますわからない……まるでこの結婚に価値を見出しているとも取れる言い方。もしかしたら、「結婚すること」自体に意味があった?相手は、私じゃなくてもよかった?そう聞いてみようと思うそばから、花の脇を通り過ぎる大雅。いつも目覚めにシャワーを浴びることを思い出して焦った。今を逃したらまた聞けなくなってしまう!「大雅さん、それではこの結婚は、契約結婚だと思うことにします」バスルームに向かう大雅の足元がとまった。「大雅さんが思うこの結婚の価値を、半年以内に回収してください。そしたら私は、ここを出ていきます」「できなかったら……」「できます。私も協力しますので……」可能性は低いけれど、たとえば体が目的だとしたら。この際だから、ほんの僅かな経験を頼りに満足してもらえるよう頑張る気持ちさえあった。けれど、それじゃあまるで娼婦?いや、少なくとも私には気持ちがある。大雅の過去の活躍を目の当たりにして、惚れない女子など存在しない……花はそう思っていた。大雅も覚悟を決めた花の気持ちに気づいたようだ。徐々に口角を上げ、強い視線を向ける。花には、諦めのような微笑に見えたが……「あとで携帯を権堂に持たせる。受け取ったら、主要なSNSに本名と自分の写真でアカウントを作って」「本名と、写真……?」「そう。協力してくれるんだろ?」頷くしかない。大雅はそのままバスルームに消
last updateLast Updated : 2026-07-23
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20.春希の不穏

「姉ちゃん!やっと携帯を持つ気になったかぁ……良かったなぁ!」「うん、まぁね。……で、結人の方はどう?何か困ってない?」「こっちでの暮らし?……まったく問題なしっ!成績もそれなりにイイ線いってるし、バイトも始めたから!」大雅からの携帯を、権堂に手伝ってもらって設定し……久しぶりに携帯を持つことになった花。留学中の弟、結人に連絡し、驚かれたところだ。「ところでSNS、本名と自分の顔さらしてるみたいだけど、大丈夫なのかよ」「……別に、投稿する気ないし。だいたいやり方わからないし」「そうなの?せっかくならやってみたら?あとでフォローするから」留学先で楽しくやっている様子の弟に、思わず笑みがこぼれる。「じゃあまた連絡するよ。くれぐれも体に気をつけて」「わかった!大雅さんによろしくね!」弟は、国民的スターである鈴里大雅に見初められて結婚したという話を素直に信じた。それは、自分の姉に対する偏った贔屓だと思うが……『姉ちゃんみたいな人に惹かれるなら間違いなくちゃんとした人だ!』と言って、結婚を喜んでくれた。「……本当は、前途多難だよ」彼に惹かれたのは本当だ。今も家の中で会えばドキドキする。……けれど愛することはないと冷たく言われ、半年の期限を決めて契約結婚を突きつけた。週刊誌を賑わせる、同じスターである女優とのスクープ……開かずの間で見つめる女性の写真。私には想像もできない世界にいる、スター大雅の本当の姿。「理解しようとしてはいけないんだ」なぜか可愛らしい携帯ケースを用意してくれたみたいだけど、それだってきっと、誰かにあげようとした残りか、誰かにもらったどうでもいいものに違いない。それでも……半年と期限がついたことは、少し花の気持ちを軽くしていた。この結婚の謎すぎる目的を、大雅さんが早く果たせるといいと思う。本当は、春希の母親が誰なのか……今どこにいるのかも気になっているけれど……その問題に首を突っ込めるほど、私は図々しくなれない。願うのは、1日も早く春希を公表できるように。「私は家政婦。そして子守り係……」そう心に決め、何とか自分を納得させた。しばらくして、寝室から春希が出てきた。右手におサルのぬいぐるみを引きずって……昼寝から目覚めたらしい。「はなちゃん……」トトッと駆け寄る春希を抱きとめ、そのまま抱き上げる花。「
last updateLast Updated : 2026-07-24
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