「野菜の種か。家庭菜園を庭でやりたいって前に言ってたやつ?」その夜、帰宅した大雅を迎えた花。……ソファの前のテーブルに、野菜の種が置きっぱなしだったことに気づいた。「そうです……早々に種を買っちゃって」「やってみたらいいよ」「はい……」すでに春希は寝室で眠っている時間。花は大雅の前に夕食を用意した。「あ、今日……春奈さんと圭一さんが来てくださいまして」「そうみたいだな。メッセージが来てた」「は……春くん大喜びで、もう、飛んだり跳ねたり大変で……あの、だから今日もいつもより早く寝ちゃって……」話さなければいけないことがいくつもあるのに、そんな話題を出せば、私たちの暮らしが変わってしまいそうで怖い。「春希は、本当にあの夫婦に懐いてるよな」「え?」言い方に違和感を感じて、つい聞き返してしまった。「実は少し前から2人に言われてるんだ。……春希の、幼稚園入園のこと」「あ、そういえば、そんな年齢ですよね」「そう言われて、少し考えているんだけど」花が用意した料理に手を付けながら、大雅は思い切ったように話し始める。「鈴里大雅っていう存在が、幼稚園や小学校に通うようになった春希に、相当な不便を強いるようになるんじゃないかって」押しも押されぬ国民的スターが保護者である子供を、近所の幼稚園に通わせるわけにはいかないということだ。「それじゃ、芸能人の子供が多く通うような幼稚園に?」そんなところがあるのかわからないけれど……そういう場所に通わせるとしたら、大雅さんは春くんと一緒に園内見学とか行くのだろうか。……そしたら、子供と一緒に暮らしていることが世間に知られるかもしれない。自分の子供ではないとしたら誰の子なのかと話題になって……亡くなった姉の子供だと暴かれたら、春くんもマスコミに狙われる?同時にもし……私との結婚が公になったら。その関係性は、センセーショナルに世間を賑わすだろう。そうなった場合、一番にダメージを負うのは誰?大雅さん……そして春くん……スキャンダルでドラマやCMを降板になったら、莫大な違約金を背負う可能性があると聞いた話を思い出した。「花……?まだ、決まったわけじゃないから」「え……あの、ごめんなさい。ちょっと考え事をしていて」いつの間にか大雅の話を聞き漏らしていたらしい。テーブルの向こうから花の手を取り、じ
Last Updated : 2026-08-29 Read more