珠莉視点帰り道のあいだじゅう、私は陽菜の話に耳を傾けていた。粘土で作った馬のこと。大翔くんのこと。それから、新しいお弁当箱を買ってもらったのに、おかずが昨日の残り物ばかりなのは納得できないと、ママに抗議するつもりらしい結衣ちゃんのこと。私は一言一言に耳を傾けようとした。40分の道のりのあいだ、あの会議室の記憶に引きずり込まれないように、精いっぱい。たいていは失敗した。でも、努力はした。その夜、私は夕食を終え、お風呂を済ませ、今読んでいる本を2章分読み聞かせ、寝る前に水を何杯飲んでいいかでひと悶着あった。そのすべてが終わり、陽菜がようやく静かになって、呼吸がゆっくりと規則正しくなった頃、私はキッチンのテーブルへ向かった。紙とペンを取り、いちばん上にこう書いた。【必要なもの】そして、それをじっと見つめたまま座っていた。まず、弁護士が必要だ。それは明らかだった。和也がすでに弁護士へ相談しているなら、私だって専門家の助けもなく、法的な知識もないまま、これから起こることに立ち向かうわけにはいかない。駅前に、法テラスの無料法律相談窓口がある。何十回もその前を通り過ぎたことがあるけれど、一度も利用したことはなかった。必要がなかったから。これまでは、法律の助けなど借りずに済むように生きてきた。だが、そのやり方はもう通用しない。その下に、私は書いた。【弁護士費用】しばらく、じっとその文字を見つめた。私の口座には、2万1400円ほどしかない。今朝、確認したとおりだ。今週、ホテルでもう2回シフトに入れば、家賃の不足分は埋められるかもしれない。けれど、余分なお金なんてない。もうずっと、なかった。私は書いた。【誰かに相談する】そこでペンを止め、その一行を食い入るように見つめた。誰かに相談する。でも、いったい誰に?昔の生活は、もう消えてしまった。7年前、ほかのすべてと一緒に、荷物とともに置き去りにしてきた。父は、私がどこにいるか知らないし、兄も知らない。同僚たちは親切で、授業のことや、手のかかる保護者のこと、近所のおいしいカフェのことなら話せる。でも、19歳のとき、なぜ家を出て、名前を変え、7年間も身を隠してきたのか。その複雑で、口にするのもつらい過去には、決して触れさせなかった。隣
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