駅が近づいても、遥臣は手を離さなかった。 綾香も、離そうとはしなかった。 前回は人混みのせいにできた。けれど今日は、そんな理由はどこにもない。 それでも二人は手を繋いでいる。「ねえ、遥臣」「何だ」「こういうの、誰にでもするの?」 聞いた瞬間、少し後悔した。 あまりにも分かりやすい質問だ。 遥臣が足を止める。「すると思うか?」「分からないから聞いてるの」「しない」 即答だった。 綾香の心臓が大きく跳ねる。「……そう」「何だ」「何でもない」「聞いといてそれか」「答えが分かったからいいの」 再び歩き始める。 繋いだ手が、さっきよりも気になって仕方がない。 誰にでもするわけではない。 それなら、自分は遥臣にとって少しくらい特別なのだろうか。 そう期待してもいいのかもしれない。◇◆◇ 改札の前まで来ると、さすがに二人の手は離れた。「じゃあ、またね」「ああ」 綾香が改札へ向かおうとすると、遥臣に呼び止められた。「綾香」「何?」「温泉」 一瞬、何の話か分からなかった。「ああ、本屋で話してた?」「今度行くか」「日帰りでしょうね?」「まだ言うのか」「だって遥臣が急に言うから」「日帰りだ」「なら行きたい」 答えると、遥臣が頷いた。「予定見とく」「またすぐ決めるつもり?」「駄目か」「駄目じゃないけど」 綾香は笑った。「遥臣、最近ずっと私と出かけてるわよ」「そうだな」「ほかに予定ないの
Last Updated : 2026-09-15 Read more