日曜日、美術館の前で待っていた遥臣は、綾香の姿を見つけると軽く手を上げた。「待たせたかしら?」「いや。今来たところだ」「本当?」「五分くらい前だな」「それなら、待たせているじゃない」 綾香が笑うと、遥臣も小さく笑った。 美術館では、ちょうど印象派の特別展が開催されていた。 綾香は花や庭園を描いた作品の前で、何度も足を止めた。「こういう絵、好きなのか?」「ええ。母も花が好きだったから、昔からよく一緒に眺めていたの」「そうか」 遥臣は隣に立ち、同じ絵を見つめた。「今度、花屋に行くんだったな」「覚えていてくれたの?」「約束しただろ」 綾香は嬉しくなって、そっと遥臣の手を握った。◇◆◇ 美術館を出たあと、二人は近くのカフェへ入った。 注文を済ませたところで、綾香のスマートフォンが震えた。 美月からだった。『今日は楽しんでる? 美術館とか行ってそう!』 綾香は画面を見つめた。 先日、花屋で美月が口にした言葉と同じだった。 もちろん、美月が遥臣の好みを想像しただけかもしれない。 けれど、実際に美術館へ来ている日に、わざわざその話題を送ってくることが気になった。「どうした?」 遥臣が尋ねた。「美月からよ。今日も出かけているかって」「よく連絡してくるんだな」「最近、特にね」 綾香はスマートフォンを伏せた。「遥臣、一つお願いしてもいい?」「何だ?」「もし美月から私の予定を聞かれても、答えないでほしいの」 遥臣は少し意外そうな顔をした。「俺に連絡してくるのか?」「まだ分からないわ。でも、念のため」「分かった」 理由を詳しく尋ねられなかったことに、綾香は少し安堵した。
ปรับปรุงล่าสุด : 2026-10-03 อ่านเพิ่มเติม