ガーデンショップを出たあと、綾香と遥臣は近くのカフェに入った。 窓際の席に座り、綾香は買ったばかりの小さな鉢植えをテーブルの端へ置く。「今日はこれだけにしたのか」「増やしすぎても、お世話できなくなるでしょう?」「意外と冷静だな」「どういう意味?」「もっと買うと思ってた」「失礼ね」 綾香が笑うと、遥臣もわずかに笑った。 さっき美月と会った時には少し乱された気持ちも、いつの間にか落ち着いていた。「そういえば」 綾香は紅茶のカップを置いた。「さっきのことだけど、美月に何か言われても気にしないでね」「何を?」「私が嫌がったとか、怒ったとか」「ああ」 遥臣はあまり興味がなさそうだった。「君から聞いてるから分かってる」「ならいいの」「それより」「なに?」「嫌なら嫌だって言っていいんじゃないか」 綾香は少し目を瞬いた。「言ったわよ。少し嫌だったって」「なら十分だ」 簡単な答えだった。 綾香は思わず笑う。「遥臣って、そういうところは単純ね」「複雑にする必要あるか?」「ないのかもしれないわね」 少なくとも、遥臣との間では。◇◆◇ 夜になって、美月からメッセージが届いた。『今日はびっくりしたわ。偶然会うなんて』『そうね』『せっかく二人でいたのに、ごめんなさい』『別にいいわ』 少しして、また届く。『でも、九条先生に余計なことまで言っちゃったね』『そうね。あれは言わなくてもよかったと思うわ』 今度は返事が来るまで少し時間があった。『ごめんなさい』『私、綾香に嫌な思いをさせたことをちゃんと謝っておきたかっただけなの』
Last Updated : 2026-10-06 Read more