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聞かない約束

ผู้เขียน: 影畑凛星
last update วันที่เผยแพร่: 2026-10-05 15:54:12

 それから数日、美月から遥臣について尋ねられることはなかった。

 届くメッセージも、最近買った洋服や食事の話ばかりだった。

『昨日、理央とディナー行ってきたよ』

 料理の写真と一緒に送られてきたメッセージを見て、綾香は小さく息を吐いた。

『素敵なお店ね』

『でしょ? 理央が予約してくれたの』

 以前と同じだ。

 理央との親密さを見せつけるような言葉にも、綾香は淡々と返した。

 すると美月から、

『今度、綾香とも行きたいな』

 と返ってきた。

『機会があればね』

 それで会話は終わった。

 遥臣の名前は、一度も出なかった。

◇◆◇

 週末、綾香は一人で買い物に出かけていた。

 化粧品を見たあと、上の階へ移動しようとエスカレーターへ向かう。

「綾香!」

 振り返ると、美月がいた。

「あら、美月」

「また会ったね」

 美月は嬉しそうに駆け寄ってくる。

「今日は一人?」

「ええ」

「私も。よかったらお茶しない?」

「少しだけなら」

 二人は同じ百貨店のカフェへ入った。

 美月は最近行ったレストランの話や、欲しいバッグの話を楽しそうに続けていた。

「そういえば、この前はごめんね」

 不意に美月
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     それから数日、美月から遥臣について尋ねられることはなかった。 届くメッセージも、最近買った洋服や食事の話ばかりだった。『昨日、理央とディナー行ってきたよ』 料理の写真と一緒に送られてきたメッセージを見て、綾香は小さく息を吐いた。『素敵なお店ね』『でしょ? 理央が予約してくれたの』 以前と同じだ。 理央との親密さを見せつけるような言葉にも、綾香は淡々と返した。 すると美月から、『今度、綾香とも行きたいな』 と返ってきた。『機会があればね』 それで会話は終わった。 遥臣の名前は、一度も出なかった。◇◆◇ 週末、綾香は一人で買い物に出かけていた。 化粧品を見たあと、上の階へ移動しようとエスカレーターへ向かう。「綾香!」 振り返ると、美月がいた。「あら、美月」「また会ったね」 美月は嬉しそうに駆け寄ってくる。「今日は一人?」「ええ」「私も。よかったらお茶しない?」「少しだけなら」 二人は同じ百貨店のカフェへ入った。 美月は最近行ったレストランの話や、欲しいバッグの話を楽しそうに続けていた。「そういえば、この前はごめんね」 不意に美月が言った。「何が?」「九条先生のこと。私、ちょっと聞きすぎちゃったでしょう?」「そうね」「綾香が嫌がってるって気づいてなかったの」 美月は申し訳なさそうに笑った。「だから、もう聞かないって決めたの」「ありがとう」「親友でも、何でも話さなきゃいけないわけじゃないもんね」 綾香は美月を見た。 その言葉だけを聞けば、何もおかしくなかった。「分かってくれたならいいの」「うん」 美月は笑顔で頷き、紅茶を飲んだ。 しばらくして、スマートフォンを取り出す。「あ、そうだ。見て」 差し出された画面には、一枚の写真が表示されていた。 先日、美月が理央と行ったというレストランだった。「ここ、本当に綺麗だったの。夜景もすごくて」「そうなのね」「理央がね、次はもっと景色のいいところに連れていってくれるって」「楽しみね」「うん!」 美月は嬉しそうに笑った。 そして何気ない調子で続けた。「綾香もこういうところ好きでしょう? 今度デートで行ってみたら?」「そうね」「九条先生も――」 そこで、美月が口を閉じた。「あ、ごめん」 照れたように笑う。「もう聞かない

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     翌日の夕方、美月から電話がかかってきた。「もしもし?」『綾香、昨日は心配してくれてありがとう。もう熱っぽくないよ』「それならよかったわ」『うん。病院まで行ったのに診てもらえなかったのは残念だったけど』「発熱があるなら仕方ないでしょう」『そうだよね』 美月は明るく笑った。『でも、九条先生に会えたからよかった』 綾香は黙った。『あ、変な意味じゃないよ? せっかく行ったのに何もなく帰るのも寂しいなって思ってただけ』「そう」『九条先生、本当に綾香といる時と全然違うんだね』「どういうこと?」『この前はもっと優しそうに見えたから。昨日はすごくそっけなかった』 少し拗ねたような声だった。『私の名前も覚えてなかったし』「一度会っただけだもの」『そうなんだけどね』 美月が小さく笑う。『でも、ああいう人に特別扱いされるのって嬉しいでしょう?』「ええ」 綾香は素直に答えた。「嬉しいわ」『……そっか』 ほんの一瞬、美月の声が止まった。 けれど、すぐにいつもの調子に戻る。『いいなあ。私も理央には大切にしてもらってるけど、九条先生みたいなタイプも素敵だよね』「そうね。美月は理央ともずいぶん親しくしているのに、遥臣のことも随分気になるのね」『え?』 美月の声がわずかに上ずった。「最近、ずっと遥臣のことを聞いてくるでしょう? 連絡先も知りたがっていたし、昨日は病院まで行ったから」『病院は、本当に具合が悪かったからだよ』「そうなのね」 綾香はそれ以上追及しなかった。 ただ、静かに続ける。「理央とのことをあれだけ楽しそうに話していたから、少し不思議に思っただけよ」『もう、綾香ったら』

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     花屋で美月たちと会ってから三日後。 綾香が昼食を終えて自室へ戻ると、美月からメッセージが届いていた。『この前はびっくりしたね! まさか会えると思わなかった』 あの日にも似たようなメッセージは届いていた。 綾香は『そうね』とだけ返した。『九条先生、すごく素敵な人だった!』『綾香が好きになるの分かる気がする』 続けて届いた言葉に、綾香の指が止まる。『ありがとう』『もっと怖い人かと思ってた。お医者さんだし、近寄りがたいのかなって』『そんなことないわ』『ねえ、九条先生って好きな食べ物とか何?』 綾香は画面を見つめた。 まただ。『どうして?』『今度会うことがあったら、話題になるかなと思って』 美月らしい、もっともらしい理由だった。『遥臣のことなら、本人に聞いた方がいいんじゃない?』『それもそうだね!』 笑顔のスタンプが届く。 これで終わるかと思ったが、すぐにまたメッセージが表示された。『でも、連絡先知らないや』『綾香、九条先生の連絡先教えてくれる?』 綾香は迷わなかった。『それは本人に聞いて』『やっぱり勝手に教えるのはダメだよね。ごめん!』 美月はすぐに謝った。 あまりに素直で、何も知らない人なら、ただ少し距離感を間違えただけだと思うだろう。 綾香も、それ以上は何も言わなかった。◇◆◇ その日の夕方。 庭へ出ると、父がベンチに腰かけていた。「お父様、休憩?」「ああ。少し風に当たりたくてね」 綾香も隣に座る。「この前の花、部屋に飾ったのか?」「ええ。窓辺に置いたわ」「九条君が選んでくれたんだったね」「そうなの。私の部屋に似合うと思ったんですって」「それは嬉し

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    「これ、最後の一つみたいね」 美月は白い花の鉢植えを覗き込み、残念そうに笑った。「綾香、いいもの見つけたね」「遥臣が選んでくれたのよ」「そうなんだ。九条先生、センスがいいんですね」 美月が遥臣に微笑みかける。「私もこういうお花、大好きなんです。今度おすすめを教えてくださいね」「いや、花には詳しくないんです」「えっ、そうなんですか?」「綾香の部屋に合うと思っただけなので」 美月は一瞬だけ黙った。「……素敵ですね。綾香のこと、ちゃんと考えて選んでくれたんだ」 すぐに笑顔を取り戻すと、今度は理央を振り返った。「理央も、私に何か選んでくれない?」「いいよ。どんな花が好き?」「理央が選んでくれたものなら、何でも嬉しいな」 美月は楽しそうに笑った。 綾香は二人のやり取りを眺めながら、鉢植えを店員に預けた。 理央が美月のために花を選ぶことなど、どうでもよかった。 ただ、美月が遥臣の選んだものを欲しがったことは、気にかかっていた。◇◆◇ 会計を済ませると、美月が声をかけてきた。「ねえ、このあと予定ある?」「ええ」「そっか。私たち、近くでお茶しようと思ってたんだけど」 美月は遥臣に視線を向けた。「よかったら、ご一緒しませんか? せっかくお会いできたんですし」 遥臣が答えるより先に、綾香が口を開いた。「ごめんなさい。今日は二人で過ごしたいの」「あ、そうだよね」 美月は申し訳なさそうに笑った。「私ったら、また邪魔しちゃうところだった」「そんなことないわ。また別の機会にね」 綾香も微笑んだ。 美月が本当に偶然ここへ来たのかどうか、確かめる方法はない。 だから、責めるつもりもなかった。 ただ、これ以上一緒に過ごす理由もない。「それじゃあ、私たちは行くわね」「うん。また連絡する!」 美月が手を振る。 理央も穏やかな笑みを浮かべた。「九条先生、またお会いしましょう」「ああ」 遥臣は短く答え、綾香と店を出た。 しばらく歩いたところで、遥臣が口を開いた。「あの二人、仲がいいんだな」「ええ。最近はよく一緒に出かけているみたい」「そうか」 遥臣はそれ以上、二人について尋ねなかった。 綾香は腕に抱えた紙袋を見下ろした。「ねえ、遥臣」「何だ?」「さっきのお花、本当に私の部屋に合うと思ったの?」「ああ」

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