เข้าสู่ระบบ翌朝。
綾香は朝食をとりながら、何度も理央のことを考えていた。
昨夜、理央は屋根裏部屋で何を探していたのだろう。
母の木箱。
隠されていた鍵。
中身だけなくなっていた封筒。
すべてが関係しているようにも思える。
けれど、今はまだ想像でしかない。
「綾香?」
父に呼ばれ、綾香は顔を上げた。
「どうした? ぼんやりして」
「ごめんなさい。少し寝不足なの」
「夜更かしでもしたのか?」
「ちょっと考え事をしてたら眠れなくなっちゃって」
嘘ではない。
父は心配そうに綾香を見る。
「今日は家でゆっくりしていなさい」
「ええ、そうするわ」
ちょうどいい。
今日は会社へ行くつもりもなかった。
理央がいないうちに、もう一度屋根裏部屋を調べたかった。
◇◆◇
父を見送
スマートフォンを手にしたところで、綾香は少し迷った。 杉浦から聞いたことを、そのまま遥臣に話すつもりはない。母や祖父が何を調べていたのか、理央や久世がそこへどう関わっているのか。それを説明するには、前の人生のことを抜きにしても話さなければならないことが多すぎた。 けれど、昨日約束したばかりだ。『何もなくても、怖いと思ったらかけてこい』 それなら、少しくらい頼ってもいいのかもしれない。『今日、少し出かけたいんだけど』 送ると、数分後に返信が来た。『どこに』『まだ決めてないの。調べたいことがあって』 少し間が空いた。『昨日は買い物だったよな』『今日は違うわ』『一人で行くのか』 綾香は画面を見つめた。『そのつもりだったけど、あなたが一人で動くなって言ったでしょう?』 送信してから、少しだけ恥ずかしくなる。 まるで、一緒に来てほしいと言っているようではないか。 だが遥臣から返ってきたのは、もっと直接的な言葉だった。『何時に出る』『午後からにしようと思ってるわ』『昼過ぎに行く』『仕事は?』『今日は午後空いてる』『でも』『行くって言ってるだろ』 綾香は思わず笑った。『じゃあ、お願いするわ』『分かった』 短い返事だった。 それなのに、胸の奥が少しだけ弾んだ。◇◆◇ 昼過ぎ、約束通り遥臣が迎えに来た。 助手席へ乗るなり、遥臣が尋ねる。「どこだ」「まだ決めてないの」「は?」「だから言ったでしょう? 調べたいことがあるって」「場所も決めずに出かけるつもりだったのか」「調べてから決めようと思ってたのよ」 遥臣は呆れたように息を吐いた。「で、何を調べる」「三年くらい前の会社のこと」「会社?」「ええ。もうなくなってるところ」「それで?」「そこにいた人たちを少し調べたいの」 遥臣はそれ以上聞かなかった。 綾香は少し意外に思う。「聞かないの?」「何を」「どうしてそんな会社を調べてるのか、とか」「言う気あるのか?」 問われ、綾香は黙った。「……今は、まだ」「なら聞いても仕方ないだろ」「本当にそういうところよね」「何が」「何でもないわ」 綾香は小さく笑った。 遥臣は事情を知らない。 それでも、知らないまま隣にいてくれる。 その距離が今は心地よかった。 二人はひとまず人の多い
スマートフォンを手にしたところで、綾香は少し迷った。 杉浦から聞いたことを、そのまま遥臣に話すつもりはない。母や祖父が何を調べていたのか、理央や久世がそこへどう関わっているのか。それを説明するには、前の人生のことを抜きにしても話さなければならないことが多すぎた。 けれど、昨日約束したばかりだ。『何もなくても、怖いと思ったらかけてこい』 それなら、少しくらい頼ってもいいのかもしれない。『今日、少し出かけたいんだけど』 送ると、数分後に返信が来た。『どこに』『まだ決めてないの。調べたいことがあって』 少し間が空いた。『昨日は買い物だったよな』『今日は違うわ』『一人で行くのか』 綾香は画面を見つめた。『そのつもりだったけど、九条先生が一人で動くなって言ったでしょう?』 送信してから、少しだけ恥ずかしくなる。 まるで、一緒に来てほしいと言っているようではないか。 だが遥臣から返ってきたのは、もっと直接的な言葉だった。『何時に出る』『午後からにしようと思ってるわ』『昼過ぎに行く』『仕事は?』『今日は午後空いてる』『でも』『行くって言ってるだろ』 綾香は思わず笑った。『じゃあ、お願いするわ』『分かった』 短い返事だった。 それなのに、胸の奥が少しだけ弾んだ。◇◆◇ 昼過ぎ、約束通り遥臣が迎えに来た。 助手席へ乗るなり、遥臣が尋ねる。「どこだ」「まだ決めてないの」「は?」「だから言ったでしょう? 調べたいことがあるって」「場所も決めずに出かけるつもりだったのか」「調べてから決めようと思ってたのよ」 遥臣は呆れたように息を吐いた。「で、何を調べる
着信画面に表示された遥臣の名前を見て、綾香は一瞬だけ目を丸くした。 まさか、すぐに電話がかかってくるとは思わなかった。「……もしもし?」『どうした』 聞き慣れた低い声が耳に届く。 それだけで、先ほどまで張り詰めていたものが少し緩んだ。「メッセージでもよかったのに」『話したいって言ったのはお前だろ』「そうだけど」『何かあったか』 綾香はベッドの端へ腰を下ろし、理央から届いたメッセージをもう一度見た。「さっき、理央から連絡が来たの」『何て?』「今日、九条先生に送ってもらったことを知ってた」 電話の向こうで遥臣が黙る。『橘は今日、お前を見てたのか』「屋敷へ戻った時に玄関にいたわ。でも、橘が理央に話したとは限らないでしょう?」『ああ』 遥臣はあっさり同意した。『他に見てた奴がいた可能性もある』「……そうなのよね」 先日の車のことが頭をよぎる。 あれが本当に自分たちをつけていたのかは分からない。けれど、長谷川への警告や杉浦の家への侵入まで考えれば、楽観視する気にはなれなかった。『今日は他に何かあったか』「何もないわ。美月と偶然会ったくらい」『変な車は?』「気づかなかった」『なら、今考えても答えは出ないな』「……そうね」『家にいるんだろ』「いるわ」『戸締まり確認して寝ろ』 あまりにも遥臣らしい答えだった。 誰が理央へ伝えたのか推理するでもなく、根拠のない慰めを言うでもない。今できることだけを言う。 綾香は小さく笑った。『何だ』「何でもないわ」『なら切るぞ』「待って」 反射的に引き止めてから、自分でも驚いた。 用件はもう終わっている。 遥臣もそれが分かったのだろう。少し間を置いてから尋ねた。『まだ何かあるのか』「……ないけど」『じゃあ何だ』「もう少し話していたいだけ」 言ってから、綾香は固まった。(私、何を言ってるの……?) 慌てて取り消そうとしたが、その前に遥臣が答えた。『そうか』「……それだけ?」『じゃあ何て言えばいい』「知らないわよ」『俺も知らない』 あまりにも普段通りで、綾香は思わず吹き出した。「九条先生って、本当にこういう時に気の利いたこと言えないのね」『悪かったな』「別に嫌とは言ってないでしょう?」『そうか』「またそれ」 笑っているうちに、胸のざ
屋敷へ着くまで、綾香はできるだけ窓の外を見ていた。 遥臣は何度かこちらを見たようだったが、幸い「どうした」と追及してくることはない。そういうところも、綾香にとってはありがたかった。 やがて車が御影家の前に止まる。「ありがとう。今日は本当に迎えに来てもらうようなこと、何もなかったのに」「何もなかったならよかっただろ」「そうだけど……九条先生、仕事は?」「終わってた」「だったら、せっかく早く帰れる日だったんじゃない?」「だから?」「私を迎えに来たら遅くなるでしょう」 遥臣は一瞬、何を言われているのか分からないような顔をした。「さっき言っただろ。俺が来たかったんだ」「……もういいわ」 これ以上話していたら、また顔が熱くなりそうだった。 綾香は急いでシートベルトを外す。「おやすみなさい」「ああ」「九条先生もちゃんと休んでね」「お前に言われたくない」「失礼ね」 最後にそう返して車を降りた。 玄関へ向かいながら、一度だけ振り返る。遥臣の車はまだそこにあった。 綾香が屋敷の中へ入るのを確認してから、ゆっくりと走り出していく。 その姿を見送っていると、背後から声をかけられた。「お嬢様、お帰りなさいませ」「橘」 いつからそこにいたのだろう。 橘はいつもと変わらない穏やかな表情で立っていた。「ただいま。今日は美月とお茶していたの」「左様でございましたか」 橘はそれ以上尋ねなかった。 けれど、綾香はふと思い出す。 橘は理央の父だ。 昨日、理央は遥臣との関係を気にしていた。 橘が今の車を見たことも、いずれ理央へ伝わるかもしれない。(……気をつけないと) 橘が理央のしていることをどこまで知っているのかは、まだ分からない。 疑う材料がない以上、最初から共犯者と決めつけるつもりもなかった。だが、何気なく話したことが息子へ伝わる可能性はある。 綾香は「少し疲れたから部屋に戻るわ」とだけ告げ、階段を上った。◇◆◇ 自室へ戻って着替えを済ませると、スマートフォンに父から着信が入った。「もしもし、お父様?」『綾香か。今、大丈夫か?』「もちろんよ。どうしたの?」『いや、特に用はないんだがな。今日はずいぶん歩いたから、少し疲れた』 綾香の身体が反射的に強張った。「具合が悪いの?」『違う違う。ホテルの周りを散歩し
『ならいい』 遥臣から届いた短い返信を見ながら、綾香はしばらくスマートフォンを手放せなかった。 理央に「いつか一緒になれたら」と言われた時には、警戒することしかできなかった。それなのに遥臣から届いたたった四文字には、どうしてこんなに心が揺れるのだろう。(……考えるのはやめよう) 今は恋愛のことなど考えている場合ではない。 久世について調べなければならないし、杉浦の家へ侵入した人物についても何も分かっていない。何より、理央はこちらの動きを探っている。 綾香はスマートフォンを置き、再びパソコンへ向かった。 久世が三年前に在籍していた投資会社。その会社が関わった案件を一つずつ確認していくと、御影との直接的な取引は見つからなかったものの、取引先や投資先まで広げれば、かなりの数の企業と繋がっている。 これを全部調べるのは現実的ではない。 それよりも気になったのは、久世が表舞台から姿を消した時期だった。 母が亡くなった翌年、久世の名前は役員一覧から消えている。その後の経歴については、公開されている情報がほとんどなかった。 ただ会社を辞めただけなのか。それとも、何か理由があったのか。 調べているうちに時間が過ぎ、窓の外が暗くなっていることに気づいた。「今日はここまでにしようかしら」 昨日の遥臣の言葉を思い出したわけではない。 そう自分に言い訳しながらパソコンを閉じると、スマートフォンが震えた。 今度も遥臣だった。『飯食ったか』「……何なの、今日は」 思わず笑ってしまう。『まだよ』 返信すると、すぐに電話がかかってきた。「もしもし?」『今何時だと思ってる』「まだそんなに遅くないでしょう?」『何してた』「ちょっと調べものを」『またか』「またって何よ」『昨日、今日は家にいるって言ってただろ』「家にはいたわよ」『家にいれば休んだことになるのか』 綾香は返事に詰まった。「九条先生、お医者様だからって口うるさすぎない?」『医者じゃなくても言う』「どうして?」 何気なく聞いたつもりだった。 けれど、電話の向こうで遥臣が少し黙った。『昨日のお前、ひどい顔してただろ』「そんなに?」『ああ』「……そう」『飯食って寝ろ』「またそれ?」『他に言うことないからな』 綾香は小さく笑った。 以前なら、誰かにこんなふう
その日の夜、遥臣に送られて屋敷へ戻った綾香は、玄関の前で車を降りた。「今日はありがとう」「ああ」「それだけ?」「他に何かいるのか」 昨日とまったく同じ返事に、綾香は思わず笑ってしまう。「本当に愛想がないわね」「今さらだろ」「そうだけど」 ドアを閉めようとしたところで、遥臣に呼び止められた。「綾香」「何?」「明日は?」「明日?」「出かける予定」 綾香は一瞬迷った。久世について調べたいことはあるが、まだ具体的に誰かと会う予定までは決めていない。「今のところはないわ」「ならいい」「何が?」「出るなら連絡しろ」「……本気で言ってたの?」「何が」「どこに行くか、あなたに知らせろって話」「本気じゃなきゃ言わない」 当然のように答えられてしまった。「でも、毎回あなたに報告するなんて変じゃない?」「嫌ならいい」「嫌とは言ってないけど……」「じゃあ連絡しろ」 結局そこへ戻るらしい。 綾香は呆れながらも「分かったわ」と答えた。「おやすみなさい」「ああ」 今夜も遥臣から「おやすみ」は返ってこなかった。 けれど昨日とは違い、それさえ少し可笑しく感じながら、綾香は屋敷へ入った。◇◆◇ 翌日の昼過ぎ、綾香は自室で久世について調べていた。 杉浦の家から資料がなくなった以上、祖父がどこまで調べていたのかをそのまま辿ることは難しい。だからまずは、久世が当時関わっていた会社について、公開されている情報を集めることにした。 会社の沿革や過去の役員、投資先。御影との直接的な関係がなかったかを一つずつ確認していく。 しかし、これとい







