ログイングラディエーター・アリーナの決勝戦がついに幕を開けた。 アリーナ全体が異様な熱気に包まれ、観客席からは大歓声が湧き上がる。 僕はエリザベート、ジュリア、アイリーンと共に、特等席から試合を見守っていた。「いやぁ、ここまで来ると誰が優勝するか分からないね」 僕は目の前の広大なアリーナに視線を向けながら呟いた。それぞれの選手が入場してくるたびに、観客たちの声援がさらに大きくなる。「そうですわ。これだけの猛者たちが揃うと、どの試合も見応えがありますわね」 エリザベートが優雅に扇を揺らしながら答える。ジュリアは手を握りしめ、緊張した面持ちで選手たちの姿を見つめていた。「ご主人様……王子は強いのですか?」「王子? ロガン王子のことかな? うん、強いよ。でもね、決勝戦ともなると全員が全力を出すから、勝負は最後まで分からないさ。それに勝ち上がりのトーナメント方式だから、一回戦で当たる相手に消耗させられると、準決勝、決勝と勝ち進むうちに消耗してしまうからね」 僕はジュリアの肩を軽く叩いて微笑んだ。「さぁ、いよいよ第一試合の開始です! 最初の組み合わせは《獅子王》ロガン・ゴルドフェング選手対《蒼炎の魔剣士》セリーナ・シルヴァ選手! 王者の風格と精霊族の優雅さが激突する一戦です!」 実況ちゃんの声が響き渡り、観客たちが一斉に沸き立った。 第一試合:ロガン vs セリーナ アリーナ中央で対峙するロガンとセリーナ。 ロガンは獅子のような堂々とした姿勢で立ち、セリーナはその対角線上で剣を構え、冷静にロガンを見据えている。「一年次で優勝候補とは凄いのね。ロガン王子」「精霊族の戦士セリーナだな。本気で俺に勝つつもりか?」「当然よ。あなたが王子だろうと、ここでは全員平等ですもの」 セリーナが剣を振り上げると同時に、鮮やかな青い炎が剣先に宿る。その光景に観客席がどよめく。「きたな……ならば、全力で応じよう!」 ロガンが
もしも、誰かが悪いことをしようとするときには、常に後ろめたい感情がどこかで生まれてしまう。 僕はあまり人の感情を見ないようにしてきた。それは見ようとしても見えないものであり、それでいて見ようとすると間違うこともあるからです。 だけど、その気持ちを持たないように、たくさんの人たちの感情が介入して入り乱れ、わからないようにしているなら、逆にどんなものなのか見たくなってしまう。 その悪いと思う行動や感情が失われて、わからなくなってしまった答えを追い求める。 では、どうすれば、そのわからない感情を見つけることができるのか? そう考えたとき、一つ一つのピースを揃えて、パズルを組み上げるように、答えを見つけるしかない。 バクザンがもたらしてくれたリベルタス・オルビスという言葉、自分が知り得る小説の知識。そして、フィル爺さんの警戒する表と裏は同じだという思い。 それらのピースを合わせる作業が必要になる。 だから、久しぶりに地下迷宮を訪れました。 鼠人族の生活圏であるこの場所は、以前よりも活気づいているように見えます。 水脈が流れ、薄明るい光が迷宮全体を照らしている。フェスティバルの影響で、学園都市全体の人口が増えて、鼠人族たちが行き交い、仕事も忙しくなっています。 僕は、その中でミミを探しました。 彼女は実家に戻って、お仕事の手伝いをしているからです。 彼女は確かに僕のところに来て、外の世界を知るための努力をしています。ですが、それは迷宮を捨てたわけでも、迷宮の者たちを見捨てたわけでもない。 こうして、忙しいときには手伝いに来る。 そんな可愛らしいミミの姿を見つけるのに時間はかからなかった。「ミミ、ちょっと話があるんだけど、いいかな?」 僕が声をかけると、ミミは驚いたように耳をピクピクと動かしながら振り返った。「フライ様? どうしてこちらに……また、迷宮を見学したいのですか?」 彼女は少し戸惑いながらも微笑む。以前と同じ控えめな様子だが、その目
グラディエーター・アリーナの決勝戦を控えた熱気の中、僕はどうしても気になることがあって席を外しました。 控え室に向かうと、そこで待っていたのは鬼人族のバクザンです。彼は鬼人族が纏うという覇気を発して拳を握りしめ、準備運動をしています。「これはフライの兄貴! 激励に来てくれたのですか?」「ああ、それに気になることがあってね」「はは、さすがですね!」「やっぱり何かあるのかい?」 バクザンの明るい声ながらも、グラディエーター・アリーナに参加したことには、何か意味があるようです。「いや、君が決勝戦に出るなんて知らなかったからね。ちょっと挨拶に来ただけだよ。でも、期待してるよ、バクザン」「はは、嬉しいぜ。フライの兄貴が見てくれるなら、全力で戦うしかねぇな」 そう言いながらも、彼の表情にはどこか緊張が見えた。それが気になった僕は、一歩近づいて問いかけた。「それで、何か心配事でもあるのかい?」 バクザンは一瞬だけ視線を逸らし、周囲を確認するように見渡した後、僕に小声で話しかけてきた。「フライの兄貴、ここだけの話なんだが……」 僕は彼の真剣な様子に驚き、自然と耳を傾けた。「実は、今回のフェスティバル、ただの競技じゃねぇらしいんだ」「どういう意味だい?」 僕は彼の言葉に首をかしげた。バクザンはさらに声を潜めて続けた。「フライの兄貴は知らねぇかもしれねぇが、裏で動いてる連中がいるって話です。学園都市を利用して、何かデカいことを企んでる奴らがな」「裏で動いてる連中? 顔役さんたちが何かしているのかい?」「いえ、俺たちではありません。リベルタス・オルビスって名前を聞いたことはないですか?」 僕はその名前を聞いて、小説の中に何度も登場するその名前を忘れるはずがない。 狂王ブライド・スレイヤー・ハーケンスが悪の覇王だとするなら、リベルタス・オルビスは、自由を訴えながらも世界を掻き回す裏の存在。 世界の影と言ってもいい。
学園都市で最大の盛り上がりを見せる《グラディエーター・アリーナ》の決勝戦の日がやってきた。 アリーナは異様な熱気に包まれ、観客たちは開幕を待ちきれない様子だった。 僕もエリザベート、ジュリア、アイリーンと共に、特等席から決勝戦を見守ることにした。それぞれの王族や貴族に与えられた席の一角。「いやぁ、やっぱり決勝ともなると雰囲気が違うね。この熱気、観客の声援、もう本当にすごいよ」 僕は席に座りながら、興奮気味に周囲を見渡す。エリザベートは扇を片手に、優雅に笑いながら頷いた。「当然ですわ。これまで勝ち上がってきた者たちの頂点が競い合う場ですもの。注目を浴びるのも無理はありませんわ」「フライ様、誰が優勝すると思いますか?」 ジュリアが興味津々に聞いてくる。僕は肩をすくめた。「うーん、まだ何とも言えないけど、どの選手もそれぞれ強い個性があるからね。誰が勝つにしても面白い試合になるだろうね」「私は少し裏を調べたけど、どの選手も実力派揃いよ。それに少しだけ怪しい空気も感じるのよね」 アイリーンが意味深な笑みを浮かべながら言った。 アリーナの中央に設置された巨大なスクリーンが点灯し、観客たちの歓声が一段と高まった。いよいよ、決勝戦の幕が上がる。 スクリーンに映し出されたのは、実況を務める少女、ジョウ・キョウだ。「さぁ、お待たせしました! いよいよ《グラディエーター・アリーナ》決勝戦の開幕です! みんなが大好き実況ちゃんですよ〜」 彼女の元気な声がアリーナ全体に響き渡る。「決勝戦に進出したのは、予選を勝ち抜いた八人の猛者たち! それでは、早速選手たちを紹介しましょう!」 実況ちゃんの声に合わせて、次々と選手たちがスクリーンに映し出される。そのたびに観客席から大きな歓声が上がった。 決勝進出者の紹介 「一人目は、最速で勝ち上がってこられました獣人王国の獅子王ロガン・ゴルドフェング選手。獣人王国の王子で、圧倒的な筋力と闘志を誇る。金色のたてがみを揺らしながら、堂々とアリーナに立つその姿は、まさに王者の風格です!」「ロガン様ー! がんばれー!」 観客席からは、ひときわ大きな声援が飛ぶ。一年次にして、優勝候補筆頭は伊達ではないね。 「二人目は《蒼炎の魔剣士》セリーナ・シルヴァ選手。精霊族の優雅な戦士で、魔法と剣術を融合させた独自の戦闘スタ
《sideフライ・エルトール》 改めて、僕はフィル爺さんから呼び出しを受けた。今回は従者を連れることなく、二人で飲もうと声をかけられた。 場所は、前にフィル爺さんが連れて行ってくれたボートレース場の奥にある地下闘技場だった。 地下闘技場は、学園都市の昼間の賑やかさとは異なる、静かで冷たい熱気に包まれていた。 広大な空間の中央に設けられた闘技場では、闘士たちが剣や槍を手に、互いの技と力をぶつけ合っている。 観客席には様々な種族の人々が集まり、それぞれが応援する闘士に声援を送る。 フィル爺さんと僕は、地下闘技場を見下ろせる個室に座っていた。 特等席で、お酒を注いでくれる美しい女性や、専用の給仕担当までいるVIPルームのような場所だった。 普段ならこういう場所に座るのは気が引けるけれど、今日はフィル爺さんに誘われてここにいる。「フライよ、どうじゃ? これが地下闘技場の醍醐味じゃ」 フィル爺さんが楽しそうに笑う。その目は、闘技場で剣を交える剣闘士たちを楽しそうに見つめている。「いや、爺さんがこんなに真剣な顔で闘技を見てるのも珍しいね。戦いって、そんなに面白いの? 僕はあまり戦うのは好きじゃないんだよ」「くくく、あれほどのことをしておいて、好きではないか。おぬしは本当に面白いのぅ」 フィル爺さんは僕の言葉の一つ一つを肯定してくれている。本当に祖父がいれば、このような感じなのだろうか? 少しくすぐったい気持ちにさせられて、フィル爺さんのことを好きになっていく自分がいる。「じゃがのう、戦いには生き様が詰まっておる。どんなに口が巧い者でも、戦いの場では嘘はつけん。剣を振るう者のすべてが、その一撃に込められるのじゃ」 爺さんの言葉に、僕は再び闘技場へ視線を向けた。 今、剣を交えているのは獣人の男と人間の男だ。獣人の男は圧倒的な体格と力を誇り、人間の男はそれに対して、身のこなしと剣捌きで応じている。 激しい攻防の中、剣が弾かれ、砂塵が舞い上がる。その中で、二人の眼差しだけが燃え盛る炎のように輝いている。「確かに、なんというか……生きてるなって感じがするよ」「そうじゃ。おぬしも知っておるように、こうやって血湧き肉躍る舞台には、表には出せぬ生き様がある。じゃが、裏でこそ生きられる者たちがおり、世界を動かす力を持っておる。こうした闘技場もその一環よ
《sideノクス》 学園都市に来てから、毎日が新鮮だった。 広大な敷地に異種族たちが行き交い、それぞれが自分の目標に向かって努力を重ねている。 貴族もいれば平民もいる。強い者も弱い者もいる。 しかし、平民出身の俺にとって、この場所は平等なようでそうではなかった。 貴族たちの集う華やかな社交場には近寄ることすらできず、彼らが見下すような視線を向けてくることも珍しくない。 だが、それでも俺はここに来たことを後悔していない。 俺は「自分の力」を証明するために、学園都市に来たのだから。 《グラディエーター・アリーナ》 それは、そんな俺にとって絶好の機会だった。 学園都市全体を巻き込むこの競技で、俺は自分の剣術と努力が通用するのか、試してみたかった。 初戦、相手は筋骨隆々の獣人だった。 彼は身体能力に絶対の自信を持ち、俺を一瞬でねじ伏せるつもりだったのだろう。 だが、俺は速さで勝負した。 相手の動きの癖を見抜き、わずかな隙を突いて剣を振るう。何度か相手の攻撃をかわし、反撃を加えた結果、獣人の剣を弾き飛ばし、勝利を収めた。「勝者、ノクス!」 審判の声が響くと、観客席からは少しばかりの拍手が聞こえた。 しかし、俺にとってその拍手は何よりも大きく聞こえた。戦いの中でなら俺は胸を張っていられる。あまり頭が良い方ではない。だけど、自由を求める気持ちは変わらない。 二戦目の相手は、魔法使いだった。 派手な呪文を使う魔法使いが相手。遠距離から俺を攻撃してくるのに対して、どうやって距離を詰めるのか。 魔法使いの相手は初めてではなかったが、やはり剣士にとっては不利な相手だと思う。だけど、それを承知で受けた戦いだから、乗り越えたい。 何よりも、俺は負けるつもりはない。「足元がお留守だぞ!」 障害物を使って魔法を避けながら、なんとか距離を詰めた。 魔法使いは魔力量に限りがあるから、無駄に魔法を撃たせれば、隙が狙える。 障害物と魔法の消費によって接近戦に持ち込むことができたので、剣を振るって、魔法を放つ触媒を破壊することで勝利を手にした。「勝者、ノクス!」 この試合の後、俺の名前は少しずつ観客たちの間で話題になり始めた。 無敗で二勝した者は、俺を含めて数名だけ。そこに自分の名前があることが誇らしい。 そして迎えた三戦目、相手は三年次のレ







