LOGINもしも、誰かが悪いことをしようとするときには、常に後ろめたい感情がどこかで生まれてしまう。
僕はあまり人の感情を見ないようにしてきた。それは見ようとしても見えないものであり、それでいて見ようとすると間違うこともあるからです。
だけど、その気持ちを持たないように、たくさんの人たちの感情が介入して入り乱れ、わからないようにしているなら、逆にどんなものなのか見たくなってしまう。
その悪いと思う行動や感情が失われて、わからなくなってしまった答えを追い求める。
では、どうすれば、そのわからない感情を見つけることができるのか? そう考えたとき、一つ一つのピースを揃えて、パズルを組み上げるように、答えを見つけるしかない。
バクザンがもたらしてくれたリベルタス・オルビスという言葉、自分が知り得る小説の知識。そして、フィル爺さんの警戒する表と裏は同じだという思い。
それらのピースを合わせる作業が必要になる。
だから、久しぶりに地下迷宮を訪れました。
鼠
アリーナでは試合が進むにつれ、熱気と興奮が最高潮に達していた。それぞれの戦いが繰り広げられる中、観客たちは次に訪れる試合の行方に息を呑む。 準決勝:ロガン vs ドラガ「次の試合は、獣人王国の《獅子王》ロガン・ゴルドフェング選手と、《鉄の竜槍》ドラガ・ヴォルケン選手の対決です! どちらも力と技を兼ね備えた猛者! 一瞬たりとも目が離せませんよ~!」 実況ちゃんの元気な声が響く。 ロガンとドラガがアリーナ中央で対峙した瞬間、観客席からどよめきが起こる。 ロガンは相変わらずの堂々たる姿勢で、ドラガはその豪槍を構えながら闘志をみなぎらせている。「おい、竜人族の兄ちゃん。お前も王族の血筋か?」「いや、ただの戦士だ。だが、勝利のために戦うのは俺たちの誇りだ!」 ドラガが槍を振りかざし、ロガンへと突撃する。その槍さばきは鋭く、獅子王ロガンの素早い動きを封じるような連続攻撃を繰り出した。「ドラガ選手、攻めて攻めて攻めまくる! ロガン選手、どう出るのか!?」「すごい! ドラガ選手、本当に強いっチュ!」 ミミが思わず声を上げる中、ロガンは槍をかわしながら距離を詰める。そして、一瞬の隙を突いてドラガの槍を掴み、全力で振り払った。 僕たちはアリーナの中を下へ下へと降りていた。アリーナの内部では、奥に入らない限りは試合の観戦ができてしまう。「これで終わりだ!」 ロガンの拳が炸裂し、ドラガは地面に叩きつけられる。観客席からは歓声が沸き起こった。「勝者、ロガン・ゴルドフェング選手!」「ロガン王子だな! 力も技も圧倒的だ」 僕は素直に勝利に感心した。 準決勝:ノクス vs バクザン「続いての試合は、《無名の剣士》ノクス選手と、《雷鳴の豪拳》バクザン選手。鬼人族の若き戦士で、豪快な拳闘スタイルを持つ、剣と拳の対決に注目です!」 ノクスは剣を構え、静かにバクザンを見つめる。一方でバクザンは余裕の笑みを浮かべながら、拳を打ちつけた。「小僧、鬼人族と戦うのは初めてか?」「ああ、だけど負けない」「くくく、いいねぇ、その目にそそられる。だが、兄貴からの依頼だ。お前に負けるわけにはいかないんだよ」 バクザンが放った拳がアリーナ会場の床を割る。だが、ノクスは冷静に一つ一つの拳を見極めて、その全てを紙一重でかわしていく。接近戦で繰り広げられる二人の戦いは、準決
グラディエーター・アリーナの決勝戦がついに幕を開けた。 アリーナ全体が異様な熱気に包まれ、観客席からは大歓声が湧き上がる。 僕はエリザベート、ジュリア、アイリーンと共に、特等席から試合を見守っていた。「いやぁ、ここまで来ると誰が優勝するか分からないね」 僕は目の前の広大なアリーナに視線を向けながら呟いた。それぞれの選手が入場してくるたびに、観客たちの声援がさらに大きくなる。「そうですわ。これだけの猛者たちが揃うと、どの試合も見応えがありますわね」 エリザベートが優雅に扇を揺らしながら答える。ジュリアは手を握りしめ、緊張した面持ちで選手たちの姿を見つめていた。「ご主人様……王子は強いのですか?」「王子? ロガン王子のことかな? うん、強いよ。でもね、決勝戦ともなると全員が全力を出すから、勝負は最後まで分からないさ。それに勝ち上がりのトーナメント方式だから、一回戦で当たる相手に消耗させられると、準決勝、決勝と勝ち進むうちに消耗してしまうからね」 僕はジュリアの肩を軽く叩いて微笑んだ。「さぁ、いよいよ第一試合の開始です! 最初の組み合わせは《獅子王》ロガン・ゴルドフェング選手対《蒼炎の魔剣士》セリーナ・シルヴァ選手! 王者の風格と精霊族の優雅さが激突する一戦です!」 実況ちゃんの声が響き渡り、観客たちが一斉に沸き立った。 第一試合:ロガン vs セリーナ アリーナ中央で対峙するロガンとセリーナ。 ロガンは獅子のような堂々とした姿勢で立ち、セリーナはその対角線上で剣を構え、冷静にロガンを見据えている。「一年次で優勝候補とは凄いのね。ロガン王子」「精霊族の戦士セリーナだな。本気で俺に勝つつもりか?」「当然よ。あなたが王子だろうと、ここでは全員平等ですもの」 セリーナが剣を振り上げると同時に、鮮やかな青い炎が剣先に宿る。その光景に観客席がどよめく。「きたな……ならば、全力で応じよう!」 ロガンが
もしも、誰かが悪いことをしようとするときには、常に後ろめたい感情がどこかで生まれてしまう。 僕はあまり人の感情を見ないようにしてきた。それは見ようとしても見えないものであり、それでいて見ようとすると間違うこともあるからです。 だけど、その気持ちを持たないように、たくさんの人たちの感情が介入して入り乱れ、わからないようにしているなら、逆にどんなものなのか見たくなってしまう。 その悪いと思う行動や感情が失われて、わからなくなってしまった答えを追い求める。 では、どうすれば、そのわからない感情を見つけることができるのか? そう考えたとき、一つ一つのピースを揃えて、パズルを組み上げるように、答えを見つけるしかない。 バクザンがもたらしてくれたリベルタス・オルビスという言葉、自分が知り得る小説の知識。そして、フィル爺さんの警戒する表と裏は同じだという思い。 それらのピースを合わせる作業が必要になる。 だから、久しぶりに地下迷宮を訪れました。 鼠人族の生活圏であるこの場所は、以前よりも活気づいているように見えます。 水脈が流れ、薄明るい光が迷宮全体を照らしている。フェスティバルの影響で、学園都市全体の人口が増えて、鼠人族たちが行き交い、仕事も忙しくなっています。 僕は、その中でミミを探しました。 彼女は実家に戻って、お仕事の手伝いをしているからです。 彼女は確かに僕のところに来て、外の世界を知るための努力をしています。ですが、それは迷宮を捨てたわけでも、迷宮の者たちを見捨てたわけでもない。 こうして、忙しいときには手伝いに来る。 そんな可愛らしいミミの姿を見つけるのに時間はかからなかった。「ミミ、ちょっと話があるんだけど、いいかな?」 僕が声をかけると、ミミは驚いたように耳をピクピクと動かしながら振り返った。「フライ様? どうしてこちらに……また、迷宮を見学したいのですか?」 彼女は少し戸惑いながらも微笑む。以前と同じ控えめな様子だが、その目
グラディエーター・アリーナの決勝戦を控えた熱気の中、僕はどうしても気になることがあって席を外しました。 控え室に向かうと、そこで待っていたのは鬼人族のバクザンです。彼は鬼人族が纏うという覇気を発して拳を握りしめ、準備運動をしています。「これはフライの兄貴! 激励に来てくれたのですか?」「ああ、それに気になることがあってね」「はは、さすがですね!」「やっぱり何かあるのかい?」 バクザンの明るい声ながらも、グラディエーター・アリーナに参加したことには、何か意味があるようです。「いや、君が決勝戦に出るなんて知らなかったからね。ちょっと挨拶に来ただけだよ。でも、期待してるよ、バクザン」「はは、嬉しいぜ。フライの兄貴が見てくれるなら、全力で戦うしかねぇな」 そう言いながらも、彼の表情にはどこか緊張が見えた。それが気になった僕は、一歩近づいて問いかけた。「それで、何か心配事でもあるのかい?」 バクザンは一瞬だけ視線を逸らし、周囲を確認するように見渡した後、僕に小声で話しかけてきた。「フライの兄貴、ここだけの話なんだが……」 僕は彼の真剣な様子に驚き、自然と耳を傾けた。「実は、今回のフェスティバル、ただの競技じゃねぇらしいんだ」「どういう意味だい?」 僕は彼の言葉に首をかしげた。バクザンはさらに声を潜めて続けた。「フライの兄貴は知らねぇかもしれねぇが、裏で動いてる連中がいるって話です。学園都市を利用して、何かデカいことを企んでる奴らがな」「裏で動いてる連中? 顔役さんたちが何かしているのかい?」「いえ、俺たちではありません。リベルタス・オルビスって名前を聞いたことはないですか?」 僕はその名前を聞いて、小説の中に何度も登場するその名前を忘れるはずがない。 狂王ブライド・スレイヤー・ハーケンスが悪の覇王だとするなら、リベルタス・オルビスは、自由を訴えながらも世界を掻き回す裏の存在。 世界の影と言ってもいい。
学園都市で最大の盛り上がりを見せる《グラディエーター・アリーナ》の決勝戦の日がやってきた。 アリーナは異様な熱気に包まれ、観客たちは開幕を待ちきれない様子だった。 僕もエリザベート、ジュリア、アイリーンと共に、特等席から決勝戦を見守ることにした。それぞれの王族や貴族に与えられた席の一角。「いやぁ、やっぱり決勝ともなると雰囲気が違うね。この熱気、観客の声援、もう本当にすごいよ」 僕は席に座りながら、興奮気味に周囲を見渡す。エリザベートは扇を片手に、優雅に笑いながら頷いた。「当然ですわ。これまで勝ち上がってきた者たちの頂点が競い合う場ですもの。注目を浴びるのも無理はありませんわ」「フライ様、誰が優勝すると思いますか?」 ジュリアが興味津々に聞いてくる。僕は肩をすくめた。「うーん、まだ何とも言えないけど、どの選手もそれぞれ強い個性があるからね。誰が勝つにしても面白い試合になるだろうね」「私は少し裏を調べたけど、どの選手も実力派揃いよ。それに少しだけ怪しい空気も感じるのよね」 アイリーンが意味深な笑みを浮かべながら言った。 アリーナの中央に設置された巨大なスクリーンが点灯し、観客たちの歓声が一段と高まった。いよいよ、決勝戦の幕が上がる。 スクリーンに映し出されたのは、実況を務める少女、ジョウ・キョウだ。「さぁ、お待たせしました! いよいよ《グラディエーター・アリーナ》決勝戦の開幕です! みんなが大好き実況ちゃんですよ〜」 彼女の元気な声がアリーナ全体に響き渡る。「決勝戦に進出したのは、予選を勝ち抜いた八人の猛者たち! それでは、早速選手たちを紹介しましょう!」 実況ちゃんの声に合わせて、次々と選手たちがスクリーンに映し出される。そのたびに観客席から大きな歓声が上がった。 決勝進出者の紹介 「一人目は、最速で勝ち上がってこられました獣人王国の獅子王ロガン・ゴルドフェング選手。獣人王国の王子で、圧倒的な筋力と闘志を誇る。金色のたてがみを揺らしながら、堂々とアリーナに立つその姿は、まさに王者の風格です!」「ロガン様ー! がんばれー!」 観客席からは、ひときわ大きな声援が飛ぶ。一年次にして、優勝候補筆頭は伊達ではないね。 「二人目は《蒼炎の魔剣士》セリーナ・シルヴァ選手。精霊族の優雅な戦士で、魔法と剣術を融合させた独自の戦闘スタ
《sideフライ・エルトール》 改めて、僕はフィル爺さんから呼び出しを受けた。今回は従者を連れることなく、二人で飲もうと声をかけられた。 場所は、前にフィル爺さんが連れて行ってくれたボートレース場の奥にある地下闘技場だった。 地下闘技場は、学園都市の昼間の賑やかさとは異なる、静かで冷たい熱気に包まれていた。 広大な空間の中央に設けられた闘技場では、闘士たちが剣や槍を手に、互いの技と力をぶつけ合っている。 観客席には様々な種族の人々が集まり、それぞれが応援する闘士に声援を送る。 フィル爺さんと僕は、地下闘技場を見下ろせる個室に座っていた。 特等席で、お酒を注いでくれる美しい女性や、専用の給仕担当までいるVIPルームのような場所だった。 普段ならこういう場所に座るのは気が引けるけれど、今日はフィル爺さんに誘われてここにいる。「フライよ、どうじゃ? これが地下闘技場の醍醐味じゃ」 フィル爺さんが楽しそうに笑う。その目は、闘技場で剣を交える剣闘士たちを楽しそうに見つめている。「いや、爺さんがこんなに真剣な顔で闘技を見てるのも珍しいね。戦いって、そんなに面白いの? 僕はあまり戦うのは好きじゃないんだよ」「くくく、あれほどのことをしておいて、好きではないか。おぬしは本当に面白いのぅ」 フィル爺さんは僕の言葉の一つ一つを肯定してくれている。本当に祖父がいれば、このような感じなのだろうか? 少しくすぐったい気持ちにさせられて、フィル爺さんのことを好きになっていく自分がいる。「じゃがのう、戦いには生き様が詰まっておる。どんなに口が巧い者でも、戦いの場では嘘はつけん。剣を振るう者のすべてが、その一撃に込められるのじゃ」 爺さんの言葉に、僕は再び闘技場へ視線を向けた。 今、剣を交えているのは獣人の男と人間の男だ。獣人の男は圧倒的な体格と力を誇り、人間の男はそれに対して、身のこなしと剣捌きで応じている。 激しい攻防の中、剣が弾かれ、砂塵が舞い上がる。その中で、二人の眼差しだけが燃え盛る炎のように輝いている。「確かに、なんというか……生きてるなって感じがするよ」「そうじゃ。おぬしも知っておるように、こうやって血湧き肉躍る舞台には、表には出せぬ生き様がある。じゃが、裏でこそ生きられる者たちがおり、世界を動かす力を持っておる。こうした闘技場もその一環よ







