か細い女子の声だった。三つ編みのおさげを両肩にぶら下げて、黒縁の眼鏡を掛けている。「えっと……俺は小鳥遊成海です。二年生で、忘れ物をしちゃって」 俺は警戒を解かないまま、パッと思いついた嘘を吐いた。我ながら苦し紛れだと思う。 しかし女子生徒はホッとしたように胸を撫で下ろし、自分を『西山 恵』と名乗った。そして三年生だとも。「私も忘れ物をしたの。暗くて怖かったから……人がいてくれて良かった。あんな事故もあった後だし」 ——嘘だ。これは直感だが、彼女も嘘を吐いていると確信をした。というか、直前で晴己が化け物に連れて行かれたのを目の当たりにしている。それなら、俺が取るべき行動は決まっていた。この嘘吐きの正体を暴くことだ。「俺はもう回収したんで、良かったら先輩のあとを着いていきますよ」「本当? それなら、お言葉に甘えようかな」 花子さんは何も言わない。だが、今も俺の隣にいる。だが西山は花子さんについて何も触れない。その視線が向けられることもない。幽霊が視えているわけじゃないのか。「……気を付けて。彼女、すっごい『穢れ』よ」「穢れ……?」 先輩に聞こえないよう、声を落として聞き返す。「簡単に言うと、負のオーラを溜め過ぎている状態ね」「溜め過ぎるとどうなるんですか?」「死ぬわ。極論だけどね」「……!」 それは、かなりやばい奴なのでは。俺にはその『穢れ』とやらがどんなものかは分からないが、西山の周りは確かにドス黒いモヤが纏わりついている。 ただ確かに西山のはモヤが多い印象だが、それ自体は普通の人でもよく見られるものだ。モヤが多い人ほど疲れているような印象だったから、勝手にストレスの具現化なんだと思っていた。 いつも見ている疲れ切ったサラリーマンのモヤが『薄汚れた綿』だとしたら、彼女の纏っているそれは、まるで『底なしの沼の泥』だ。光を一切反射せず、彼女自身の輪郭をじわじわと侵食しているように見える。「彼女、あたしが視えてないみたい。このまま着いていきましょう」「了解」 俺たちは、西山の少し後ろを着いて歩くようにした。 結局図書室には辿り着けないまま、逆方向へと進んで行く。そういえば隠神は全く姿を見ないが、今どこで何をしているんだろう。あいつの仕事は俺らのお守りじゃなかったのかよ。職務怠慢もいいところだ。「そういえば」 ふと、西山が
Last Updated : 2026-08-30 Read more