朝食の後、二人はショッピングプラザへ出かけた。タクシーを降りると、蒼生は片腕を差し出した。麻奈はおずおずとその腕を取り、困ったように蒼生を見上げる。 「こうやって歩くの、嫌いじゃないの?」 「まあ……社員に見られたらよくないなとは思うよ」 蒼生は歩きながら笑った。腕に寄り添う麻奈の体温が心地いい。バルコニーで感じたあの温かさがもう一度欲しい。 「え? じゃあカッコつけだったのね」 声を立てて笑うと、麻奈は周りを見回した。観光客はほとんどおらず、買い物客も少ない。落ち着いた、というよりは少し寂れた雰囲気。 「人が少ないのね」 「観光客が減ったからね。店も少なくなったな」 立ち止まることなく、蒼生は歩いて行く。やがて金と銀、クリーム色で装飾された上品な佇まいのブティックの前で立ち止まった。 「ここで少し買い物しよう」 「でも私、もう洋服は……」 「いいから、何か買って。麻奈の好きなものを」 蒼生はかまわず店に入った。探す様子もなく、店の一角を指さして麻奈を見下ろす。 「あそこに服がある。そっちはベルトや靴、カバンかな」 「……この店、よく来るの?」 蒼生の体がぎくりと止まった。色とりどりのドレスを指差していた手を下ろし、麻奈の肩へと置く。 「……まあ、近いから。よく来てたよ」 麻奈をドレスの前へ押し出すと、蒼生は店の隅に立った。 実際グァムにはよく来ていた。一人で。ビーチ近くのプライベートヴィラに泊まり、黙って夕陽が沈むのを見ていた。 恐ろしいほどに大きなオレンジ色の太陽。照らされて影を作りながら流れる雲。闇に飲まれる直前の、断末魔のような赤と黒。陽が沈み、自分自身がすっぽりと闇に包まれるまで、ただそれを眺めていた。 ……だが最近は土日でもなかなか時間が取れないからな。久しぶりではある。 店の中を見回しながら、蒼生はふっと息を漏らし
最終更新日 : 2026-08-09 続きを読む