目を覚ますと、ベッドの脇に蒼生が座っていた。麻奈は、慌てて体を起こそうと寝返りを打つ。「起きちゃだめだよ」 蒼生はそっと麻奈の肩を押さえた。いつのまにか麻奈の体には軽いブランケットがかけられている。「あ……」 体に何か違和感がある。手をやると、薄いタオルに包まれた小さな保冷剤が脇と首に当てられていた。頭の下には氷枕がある。「寒くはない?」 蒼生がそっと麻奈の額に手を置く。確かめるように少しうなずくと、リモコンを取り上げて空調を細かく調節する。「さっきまで少し発熱してた」「……うん……」「暑かったら外せばいいから。今は少しかけておくよ」 薄いブランケットで麻奈の肩を包む。麻奈と目が合うとにこっと笑った。「……あの……私……」 麻奈は自分を覗き込む蒼生を見上げた。「……蒼生……仕事は……?」「工藤から連絡があってね」 蒼生は優しい顔を見せる。「夕方からの予定は明日以降に振り替えた」 ベッドの傍らに置いた椅子に腰をかけると、蒼生は麻奈に小さく首を振ってみせた。「今日は暑かったからね。随分歩いたみたいだけど。……無茶したな」 それから安心させるように笑いかけると、サイドテーブルにある経口補水液を手に取った。「一口だけ、飲める?」「……あ、うん……」 麻奈が起きあがろうとすると、蒼生がその肩を抱いて抱き起こした。そっと抱きかかえて自分にもたれさせる。「一口、飲めばいいよ」 口元に差し出された経口補水液を、麻奈は口へ含む。こくんと飲み下すと、それを見ていた蒼生は、うなずいて麻奈をそっと寝かせた。「よかった。飲めたね。吐き気はない?」「……うん」「じゃあ、後でまた飲もう。一度にたくさん飲まなくていいからね」 蒼生は手にした経口補水液をサイドテーブルへ戻す。「……蒼生……」 部屋には柔らかな照明が落ちていた。窓にはカーテンが引かれ、その向こうに夜の気配がある。「……今……何時……?」「11時かな」 蒼生は左手のヴァシュロンを見た。それは柔らかな照明を
最終更新日 : 2026-09-04 続きを読む