残業で企画書の修正に追われていると、同じ会社で働く親友の林香澄(はやし かすみ)と、恋人の久世研吾(くぜ けんご)が楽しげに話しながら、前後して私のデスク脇を通り過ぎようとした。私は手を止め、顔を上げて二人を呼び止める。「研吾、香澄。二人でどこへ行くの?」香澄は、ほんのわずかに眉をひそめた。「一日中働いたんだし、二人で煙草を吸って息抜きしてくるの。あんたは煙の匂いが苦手なんだから、自分の仕事を片づけてて」研吾も同調するように頷いた。「非常階段で一服してくるだけだよ。煙草を吸わないいい子ちゃんに、悪い癖をつけさせたくないしな。そうだ。手が空いたら、ついでに香澄の分もやっておいて。こいつ、呆れるくらい要領が悪いから」私が何か言うより先に、二人はいつものように肩を並べてオフィスを出ると、非常階段へ消えていった。胸の奥が、かすかに震える。私が香澄をこの会社に紹介してから、今年で三年目になる。そして、彼女が私の恋人と二人きりで煙草を吸いに行くのは、これで799回目だった。爪が掌に食い込んだ。社員が数百人もいる会社だ。男女合わせて、煙草を吸う人間も数十人はいる。それなのに、「煙草を吸って息抜きする」と言って出ていくのは、いつもあの二人だけだった。初めのうちは、普通の休憩時間なのだと思い、特に気にしていなかった。けれど、同僚たちが私たちを見る目は、次第に奇妙なものへと変わっていった。そしてついに、面と向かって口にする人が現れた。「晴香、香澄がいつも研吾と二人きりで煙草を吸いに行ってるの、気づいてないの?一度出ていったら30分は戻ってこないじゃない。いったいどこの銘柄なら、そんなに長く吸えるの?それに、香澄はあなたの親友なんでしょう?少しくらい誤解されないように気をつけてもいいんじゃない?」同僚は二人きりと言うことを、ことさら強調していた。私は話題をそらし、それ以上の詮索をやんわりと拒んだ。まさか、その喫煙が三年も続くとは思っていなかった。最初は気にならなかったとしても、これほど長く続けば、小さな棘のように胸に刺さる。じっとしていれば痛くない。けれど少しでも触れれば、奥深くまで食い込んでくる。画面いっぱいに並ぶ数字が、突然ぼやけて見えた。私は勢いよく席を立つと、そのままオフィ
อ่านเพิ่มเติม