放課後のグラウンドに、練習終了を告げるホイッスルが響いた。 人工芝の上に、部員たちの荒い呼吸と、スパイクの音が残る。蓮はユニフォームの裾で額の汗を拭い、大きく息を吐いた。 フェンスの外では、椿がノートを閉じていた。 さっきまでペンを走らせていた手が止まり、彼女は蓮が何かを言うより先に、くるりと背を向ける。「……一言もなしか」 蓮は小さく呟いたが、声はかけなかった。 周囲には、まだダウンを続ける部員たちがいる。グラウンドの外にも、見学していた生徒が何人か残っている。昨日、取引を結んだばかりの相手と、練習後にフェンス越しで話し込む必要はない。 椿は一度も振り返らず、校門の方へ向かっていく。 ただ、去り際に自分のバッグを一度だけ、軽く叩いた。 それだけで、蓮には意味が分かった。 買い物に行く。 夕飯の材料を買う。 たぶん、そういうことだ。 蓮は左膝に氷を当て、言われていた通りにケアを済ませた。昨日なら少し急いでいたかもしれない。けれど、今日の夕飯は、今の練習を見た椿が考える。 それなら、こちらが勝手に雑なことをする理由はない。 部室へ戻る途中、同じ一年の部員が声をかけてきた。「天根、今日キレてたな」「そうか?」「後半も落ちなかったじゃん。すげえな」 蓮は少し考えてから答えた。「最近、食事を変えた」「ああ、昼の弁当。あれ、すごかったな」「そうだな」 蓮は頷いた。 弁当は、確かに違った。 味だけではない。練習に入った時の身体の重さがなく、途中で妙な空腹に引っ張られることもなかった。 それがすべて食事の影響だとは言わない。 けれど、少なくとも無関係ではないことは確かだった。 十五分後、蓮は駅前のスーパーにいた。 夕飯時が近い店内は、買い物かごを持った客で混み合っている。青果コーナーの照明の下を進むと、奥
最後更新 : 2026-08-11 閱讀更多