翌朝、千紘が目を覚ますと、匿名の相手からメッセージが届いていた。『昨日、彰人さんと何を話したの?』 送信時刻は午前一時過ぎだった。 昨夜、彰人との電話を終えたあとにもスマートフォンは確認したが、そのときにはまだ届いていなかった。おそらく芹奈は、彰人から何か言われるのではないかと待ち続けていたのだろう。 千紘はベッドの上で身体を起こし、しばらく画面を眺めた。『相沢さんから連絡が来ているか聞かれました』 少し考えたあと、そのまま事実を返す。 数分もしないうちに既読がついた。『何て答えたの?』『少しだけ連絡があったと答えました』『言ったの?』『全部ではありませんよ』 次の返事はなかなか来なかった。 怒っているのか、焦っているのか。それとも、彰人にどこまで知られたのかを考えているのか。 千紘はスマートフォンを置いて支度を始めた。もう芹奈の機嫌を取る必要はない。むしろ今は、自分が二人のどちらにも完全には味方していないと思わせた方がいい。 朝食を済ませた頃、ようやく返信が届いた。『どこまで話したの?』『あなたが榊原さんについて何度か聞いてきたことだけです。事故や奥様について話したことは言っていません』 今度はすぐに返事が来た。『絶対に言わないで』『どうしてですか?』『お願いだから』 相変わらず理由は説明しない。 けれど、それでいい。 説明できないということ自体が、芹奈にとってその話題が危険だという証拠になる。『分かりました。今のところは言いません』 千紘はそう返し、最後に一言だけ付け加えた。『でも、私も何も分からないまま秘密を守り続けることはできませんよ』 既読がついたものの、返事はなかった。 ◇ その日の午前中、榊原コーポレーションとのオンラインミーティングが入っていた。
Dernière mise à jour : 2026-09-08 Read More