ネクタイピンではない。沙綾がまる一ヶ月かけて丁寧に作り上げたものは、俺への贈り物ではなかったのか?時彦は眉間をわずかに寄せ、丸められた白い書類を冷めた目で見つめた。特に興味を惹かれた様子もない。洋一も意外そうに口を開いた。「社長、奥様の贈り物はいつも斬新ですから、何か特別なものかもしれません」時彦は素っ気なく頷いた。「お前はもう帰れ」洋一が部屋を出た後、時彦の長い指が、白い書類に巻かれたピンクのリボンに触れた。その時、洋一が閉めていったドアが押し開けられた。「時彦」朱里はほんのりと頬を染め、ふらつく足取りで近づいてくると、そのまま勢いよく時彦の胸に倒れ込んだ。その拍子に無造作に動かした手が机の上の書類をなぎ払い、ギフトボックスもろとも床へ落としてしまう。ピンクのリボンで丸められた離婚協議書が箱の中から転がり出て、部屋の隅へと落ちた。朱里は時彦の膝の上に腰を下ろし、柔らかな両腕をその首に絡ませ、甘い吐息を漏らした。「時彦、頭がすごく痛いの」「誰かに酔い覚ましのドリンクを持ってこさせよう」時彦の声は穏やかだった。霞む視界の中で、時彦の端正な顔立ちが珍しく優しげに見え、朱里は胸を高鳴らせた。「酔い覚ましのドリンクは苦いから、時彦が飲ませて」「分かった」静寂に包まれた深夜の書斎に響く、時彦の低く甘やかな声は、ひどく魅力的だった。朱里は、27日後には時彦が離婚し、自分と籍を入れてくれること、そうすれば二人は永遠に結ばれるのだということを思い出し、満足げに口角を上げた。そして、時彦に柔らかく寄りかかりながら、階下へと向かった。……沙綾と同僚たちがチャリティーオークションの後片付けを終えた頃には、すでに深夜になっており、クリーニング店はとうに閉まっていた。仕方なくトレンチコートを手洗いして乾燥機にかけ、明日の朝、企画書と一緒に氷室グループへ届けることにした。シャワーを浴びた後、乾燥機からコートを取り出してアイロンをかける。以前の沙綾は、こんな家事などまったくできなかった。時彦に嫁いでからというもの、少しでも彼の力になりたいと、恵子に教わりながら少しずつ身につけてきたのだ。眠りにつく前、紀行から電話がかかってきた。「先輩、片付いた」「そうか」紀行は話題を変えた。「研究
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