あるいは、ジュリアスの袖を軽く引いて、別の表現に誘導していただろう。 しかし、ここにクラリスはいない。 ミレーヌは泣きそうに震えるだけ。 マルタは主催者ではないため、王太子の言葉を直接覆せない。 周囲の夫人たちは、扇の陰でこの失態を記憶している。 セルゲイは席を立った。 大使夫人エリナも、静かに立ち上がる。 「本日は、アルヴィア王宮のお考えをよく理解いたしました」 「待て、大使」 ジュリアスの声に、セルゲイは振り返った。 「条約文に敬意を払う国は、菓子にも花にも席にも敬意を払います」 その言葉は、静かに落ちた。 「菓子一つに敬意を込められぬ国が、条約文に
Last Updated : 2026-08-10 Read more